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業務委託契約を締結する機会の多い人の中には、電子契約で行いたいと考えている人もいるでしょう。紙で業務委託契約書を作成してやり取りするのは、時間と手間がかかりますから、ここはできるだけ時間と手間のかからない方法を選びたいところです。特に最近では、ペーパーレス化が進んでおり、電子契約を導入する企業も増加傾向にあります。電子化は、時代の流れともいえる状況にあるのです。
ただ、業務委託契約書を電子化するにあたって、どのような準備が必要なのかよくわからないケースもあるでしょう。そもそも、業務委託契約書は電子契約にできるのかどうかも気になるところです。本記事では、業務委託契約書の電子化の可否や電子化するために必要な準備などについて解説します。
最初に、業務委託契約とはどのような契約のことを指すのか見ていきましょう。
業務委託契約は、自社の業務の一部を相手に依頼する内容の契約です。法律上は、請負契約と委任契約、準委任契約の3種類に分けられます。
請負契約(うけおいけいやく)とは、依頼者が業務を委託し、受託者がその業務の成果物を完成させることを契約上の義務とする契約形態を指します。業務を遂行したとしても、成果物を完成させられなければ、契約上の義務を果たしたとはみなされません。この契約形態は、主に建設業やIT業界などで広く利用されています。
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
出典:民法 | e-Gov法令検索
委任契約(いにんけいやく)は、依頼する業務が法律行為の場合に交わされる契約です。主に弁護士や司法書士などの法律専門家に業務を依頼する際に委任契約を締結します。請負契約とは異なり、成果物の完成は契約上の義務ではありません。業務を遂行すれば、結果にかかわらず法律上の義務を果たしたものとして扱われます。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
出典:民法 | e-Gov法令検索
準委任契約(準委任契約)も成果物の完成は契約上の義務には含まれません。委任契約と同様に、業務を遂行すれば、契約上の義務を果たしたものとして扱われます。委任契約との違いは、依頼する業務内容が法律行為以外のものという点です。ただし、準委任契約に関しては2020年4月1日に改正民法が施行されたことにより、成果物の完成に対して報酬を支払う「成果完成型」の契約形態が追加されました。
成果完成型ではない従来の準委任契約を「履行割合型」と呼びます。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
出典:民法 | e-Gov法令検索
成果物に対して報酬を支払う点で、準委任契約の成果完成型と請負契約は同じものではないのか?という疑問が生まれるかもしれませんが、その違いは成果の達成に対して義務を負っているかどうかです。
成果完成型の場合、成果物の達成がされなかったとしても、受注側が善管注意義務を果たす形で仕事を行っている限り問題はありません。一方、請負契約の場合、成果の達成に対して義務を負っているため、仮に成果を達成できなかった場合、債務不履行責任を負うことになります。
なお、請負契約も成果達成型の準委任契約も、報酬の支払いは成果(仕事の目的物)の引き渡しと同時とされています。
(報酬の支払時期)
第六百三十三条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
第六百三十四条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
出典:民法 | e-Gov法令検索
(成果等に対する報酬)
第六百四十八条の二 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2 第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
出典:民法 | e-Gov法令検索
雇用契約と業務委託契約の大きな違いは、使用者が労働者に対する指揮命令権を持っているかどうかという点です。
雇用契約の場合には使用者は労働者に対して業務の進め方を細かく指示でき、労働者は使用者に従わなければなりません。その代わりに、労働基準法などの法律による労働者の権利が手厚く保護されています。
一方、業務委託契約では、委託者と受託者は対等な関係で、委託者に指揮命令権はありません。受託者は自分の裁量で業務を行えます。その代わりに、労働者のような法律上の手厚い保護はありません。
業務委託契約書の電子化に関して、法律上特に問題はありません。多くの企業で業務委託契約書の電子化が行われています。
法律上電子契約が認められていない契約もいくつかあります。しかし、電子契約が認められていない契約は、公正証書が必要な契約など一部のみです。
業務委託契約書は、公正証書は不要で書面の作成も義務づける法律上の規定もありません。
そもそも業務委託契約を締結する際に、契約書の作成は必須ではありません。口頭で済ませることも可能です。
ただし、口頭での業務委託契約の締結はおすすめできません。後々に言った言わないのトラブルに発展してしまうおそれがあります。トラブル回避のため、必須でなくても契約書を作成するのが無難です。
業務委託契約書を電子契約で交わす際には、主に次のような方法があります。
PDFファイルで業務委託契約書を作成する方法があります。WordやExcelで業務委託契約書を作成してから、PDF形式で保存するだけで作成できるためかんたんです。
紙で作成した業務委託契約書に署名捺印を行い、スキャナで読み取ることでPDFファイルを作成できます。ただし、この場合電子化された業務委託契約書は原本としてみなされないため、法的効力としては弱くなる点がデメリットです。なお、スキャナで読み取りPDF化したものに電子署名やタイムスタンプを付与すれば、法的有効性を担保した電子契約書として使用できます。
印刷したりスキャナで読み取ったりする点が手間となるため、あまりおすすめはできません。
電子契約システムを利用することで、安全かつ効率的に業務委託契約書の電子化が可能です。締結済みの業務委託契約書は、クラウド上に保存されていつでもどこからでも内容の確認ができます。電子契約システムを提供するサービスの多くは、電子署名と認定タイムスタンプを提供しているため、本人性の担保や改ざん防止の点でも安心できるでしょう。サービスによっては、ファイルにアクセスできる権限の付与の設定やアクセスログの保存もできるため、セキュリティも担保されています。
なお、電子署名には立会人型電子署名と当事者型電子署名があり、電子契約システムによって対応状況はさまざまです。両方に対応している電子契約システムもあれば、どちらか一方にしか対応していない電子契約システムもあります。
立会人型電子署名とは、第三者であるサービス提供事業者が当事者からの指示に基づき電子署名を付与するのが特徴です。主にメール認証によって本人確認が行われます。
立会人型は契約締結手続きをスムーズに行える点がメリットです。契約金額が比較的少額の業務委託契約書を多く締結する必要がある場合には、立会人型を利用するのもひとつの方法として検討してみてください。
これに対して当事者型電子署名は、契約を行う本人が認証局からオンライン上の本人確認書類である電子証明書を発行してもらい、それに基づく形で電子署名を付与することで本人性を担保するのが特徴です。立会人型よりも厳格な手続きのため、重要性の高い内容の契約で用いられます。業務委託契約書を締結する際にも、契約金額が高額の場合には、当事者型を利用するのがいいでしょう。
業務委託契約書を電子化する際には、どのような準備をすればいいのか見ていきましょう。
自社で業務委託契約を締結する際に、どのような業務フローで行っているのか確認しておきましょう。自社の業務フローと照らしあわせて、業務委託契約書を電子契約にしても問題ないかどうか検討します。
また、締結済みの契約書類の管理方法に関しても、どこに保管しているのか、誰が閲覧できるのか確認しておきましょう。
電子契約システムは、それぞれ特徴があり、備わっている機能なども異なります。自社の契約関係の業務フローを踏まえた上で、最適な電子契約システムを探しましょう。
また、サポート体制や料金なども電子契約システムによる違いが大きいです。手厚いサポート体制を整えているところもあれば、ごくかんたんなサポートしか行っていないところもあるでしょう。料金に関しては、毎月固定でかかるケースや契約数に応じて金額に変動があるケースもあります。高いか安いかだけでなく、料金体系の仕組みもチェックした上で選ぶことが重要です。
電子契約システムを初めて使用する場合には、なかなかスムーズには使いこなせないことも多いです。そのため、普段の業務の中で実際に電子契約システムを使用する社員に対して、研修を実施する必要があります。
セキュリティに関する研修も必要です。社員がセキュリティ意識を高めて、正しい知識を身につけることで情報漏洩などのリスクの防止につながります。
電子契約の専任担当者なども決めておくといいでしょう。専任担当者が電子契約に関して詳しい知識を備えておけば、小さな困りごとは社内で解決できます。業務が滞ることなく、スムーズに進められるでしょう。
これまでの業務フローをベースにして、業務フローを変更しましょう。業務委託契約書を含め契約書類全般の電子化に伴って、不要になる業務を除外し、新たに必要になる業務を加えます。
ただ、最初の時点ではどのように業務を進めるのが効率的なのかよくわからない面も多いことが予測されます。策定した業務フローに従って業務を進めていくうちに、改善点が見えてくることもあるでしょう。そのため、定期的に社員からの意見聴取などを行い改善を重ねていくのが望ましいです。
実際に電子契約で業務委託契約書を交わす際の手順について見ていきましょう。
電子契約の方法で契約を締結する際には、あらかじめ相手と契約内容とは別に電子契約に関する合意が必要です。相手が電子契約の利用に合意しなければ、電子契約での契約締結はできません。
もし、相手が電子契約に関して不安に感じているような様子があれば、詳しく説明をして納得してもらう必要があります。
なお、GMOサインの立会人型電子署名(※)であれば、相手方(取引先)はGMOサインへの加入が不要です。電子契約の利用に対する了承を得やすいサービスですので、ぜひご利用ください。
※GMOサインが提供する当事者型電子署名と立会人型電子署名を兼ね備えたハイブリッド署名の場合についても、相手方に対しては立会人型電子署名で依頼するため、相手はGMOサインに加入していなくても締結が可能です。
契約内容に関する合意が必要な点は、紙の契約書を交わす場合と基本的には変わりません。業務委託契約書であれば、委託内容や報酬金額、支払条件、納期などが特に重要ですので、しっかりと確認しましょう。
契約書が完成したら、電子契約システムにアップロードして、電子署名とタイムスタンプを付与して、相手方にメールなどで送付します。メールを受け取った相手方は、契約書の内容を確認し、署名欄に氏名を入力することで契約が成立します。
業務委託契約書を電子契約で交わした後に、変更の必要性が生じることもあるでしょう。しかし、電子契約書の内容を後から変更することはできません。そのため、変更がある場合には、覚書を作成する必要があります。
覚書も電子契約書での締結が可能です。覚書には元の業務委託契約書の内容のうち、変更が必要な箇所についてのみ記載するようにしましょう。合意が必要な点や締結の方法などに関しては、通常の契約書と同じです。
業務委託契約は、自社の業務の一部を相手に委託する際に締結する契約です。社員として雇用するわけではないため指揮命令権はなく、労働者のような法律上の手厚い保護もありません。内容によって請負契約と委任契約、準委任契約の3種類に分かれています。
業務委託契約書は電子契約での締結が可能です。PDFファイルなどで作成して行うこともできますが、電子契約システムを利用する方法が一般的です。電子契約システムにもさまざまなものがあるため、自社の業態に合ったところを選びましょう。
業務委託契約書を電子契約で行うことで、紙の契約書を作成するよりも手間を減らせるので業務効率化につながります。業務委託契約書を交わす機会の多ければ、電子契約の導入を検討してみてください。
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