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今後会社の重役を目指したいのであれば、自分がどの役員を目指すか決定することが必要となります。そのためには、まずそれぞれの役員の責務を把握しておくことが必要です。
取締役会が設置されている企業では、一部の例外を除き監査役が設置されています。しかし、具体的にどのような仕事をしているかご存じない方も多いのではないでしょうか?当記事では、株式会社において重要な役割を果たす監査役について、その定義や責務について詳しく解説していきます。
取締役会の設置を要する企業では、監査役を設置することが基本です。監査役は、設置された会社や子会社の事業や財産を調査し、監督・監査を行います。
つまり監査役は、取締役が不正を行っていないか監査し、問題があれば是正を行う役員を指します。近年注目されているコンプライアンスに関する調査や是正も監査役が担っています。
監査役の任期は、会社法第336条第1項により原則4年以内と定められています。ただし、公開会社でない場合、定款で定めれば最長10年の延長が可能です。任期満了後の再任では、再度登記をする必要があります。
(監査役の任期)
第三百三十六条 監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
3 第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
4 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
一 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
二 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
四 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
監査役には主に2つの種類があります。
社内監査役とは、社内から監査役に就任した役員を指します。常勤であることが多く、在籍している会社内の監査が主な仕事です。出勤日数は特に定められていませんが、週3回以上の勤務が一般的だといわれています。
社外監査役は、文字通り外部から監査役に就任した役員を指します。監査役として専任ではなく、税理士や弁護士が就任することも多くなっています。ほとんどは非常勤で、取締役会が開催される日のみ出社することが通常です。
会社法には、監査役の権限が以下の通り明記されています。
第七節 監査役
(監査役の権限)
第三百八十一条 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。
2 監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
4 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。
(取締役への報告義務)
第三百八十二条 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければならない。
(取締役会への出席義務等)
第三百八十三条 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。
2 監査役は、前条に規定する場合において、必要があると認めるときは、取締役(第三百六十六条第一項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、取締役会の招集を請求することができる。
3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監査役は、取締役会を招集することができる。
4 前二項の規定は、第三百七十三条第二項の取締役会については、適用しない。
(株主総会に対する報告義務)
第三百八十四条 監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならない。この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない。
(監査役による取締役の行為の差止め)
第三百八十五条 監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
2 前項の場合において、裁判所が仮処分をもって同項の取締役に対し、その行為をやめることを命ずるときは、担保を立てさせないものとする。
(監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等)
第三百八十六条 第三百四十九条第四項、第三百五十三条及び第三百六十四条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合には、当該各号の訴えについては、監査役が監査役設置会社を代表する。
一 監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合
二 株式交換等完全親会社(第八百四十九条第二項第一号に規定する株式交換等完全親会社をいう。次項第三号において同じ。)である監査役設置会社がその株式交換等完全子会社(第八百四十七条の二第一項に規定する株式交換等完全子会社をいう。次項第三号において同じ。)の取締役、執行役(執行役であった者を含む。以下この条において同じ。)又は清算人(清算人であった者を含む。以下この条において同じ。)の責任(第八百四十七条の二第一項各号に掲げる行為の効力が生じた時までにその原因となった事実が生じたものに限る。)を追及する訴えを提起する場合
三 最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。次項第四号において同じ。)である監査役設置会社がその完全子会社等(同条第二項第二号に規定する完全子会社等をいい、同条第三項の規定により当該完全子会社等とみなされるものを含む。次項第四号において同じ。)である株式会社の取締役、執行役又は清算人に対して特定責任追及の訴え(同条第一項に規定する特定責任追及の訴えをいう。)を提起する場合
2 第三百四十九条第四項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、監査役が監査役設置会社を代表する。
一 監査役設置会社が第八百四十七条第一項、第八百四十七条の二第一項若しくは第三項(同条第四項及び第五項において準用する場合を含む。)又は第八百四十七条の三第一項の規定による請求(取締役の責任を追及する訴えの提起の請求に限る。)を受ける場合
二 監査役設置会社が第八百四十九条第四項の訴訟告知(取締役の責任を追及する訴えに係るものに限る。)並びに第八百五十条第二項の規定による通知及び催告(取締役の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解に関するものに限る。)を受ける場合
三 株式交換等完全親会社である監査役設置会社が第八百四十七条第一項の規定による請求(前項第二号に規定する訴えの提起の請求に限る。)をする場合又は第八百四十九条第六項の規定による通知(その株式交換等完全子会社の取締役、執行役又は清算人の責任を追及する訴えに係るものに限る。)を受ける場合
四 最終完全親会社等である監査役設置会社が第八百四十七条第一項の規定による請求(前項第三号に規定する特定責任追及の訴えの提起の請求に限る。)をする場合又は第八百四十九条第七項の規定による通知(その完全子会社等である株式会社の取締役、執行役又は清算人の責任を追及する訴えに係るものに限る。)を受ける場合
どれも重要な権限ですが、特に①②④は不正行為の是正や、会社に損失を出さないために重要なものです。会社の定款によっては、監査役の権限を会計監査のみに限定することもできます。
取締役会における監査役の役割は主に3つあります。
2 監査役は、前条に規定する場合において、必要があると認めるときは、取締役(第三百六十六条第一項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、取締役会の招集を請求することができる。
監査役は必要があると認めるときは、取締役に対して取締役会の招集を請求できます。もし取締役が請求の日から5日以内、請求の日から2週間以内の日程で取締役会を開催しない場合には、監査役が取締役会の招集をすることも可能です。
監査役には、取締役会への参加義務が存在します。しかし、仮に欠席しても罰則はありません。ただ、欠席した場合には、会社から任務懈怠で訴えられる可能性があります。また、定款において権限を会計監査に限定されている監査役であれば、取締役会への参加義務はありません。
取締役会の決議において、監査役は議決権を有せず定足数にも算入されません。しかし、取締役会に監査役を招集しなかった場合には招集手続きに瑕疵があるとして、取締役会における決議が無効になるケースもあります。
第三百八十三条 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。
監査役は取締役会において、必要があれば意見を述べなくてはなりません。取締役会の審議活性化のため、社外役員が積極的に意見を述べられる体制が整っているかなどを監査しています。
社内役員だけで会議を進めようとしていたり、会議資料が社内特有の表現ばかりであったりする場合には監査役の助言や勧告が行われることがあります。また、不当な決議がされることの防止や、法令や定款に則しているか判断するために、監査役は全ての取締役会に出席する義務があります。
(取締役への報告義務)
第三百八十二条 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければならない。
監査役には、取締役が独断的な判断をしないように監査する役割がありますが。調査の過程で、取締役の不正を発見した場合には取締役会で報告しなくてはなりません。報告後、是正されなかった場合でも株主総会において、その不正行為や法令違反に関する調査結果の報告を行うことが求められています。
取締役の違反行為によって、会社に多大なる損害が与えられる懸念がある場合には、取締役会にその行為の差し止めを要求することも監査役の権限の1つです。そのほか、監査資料にもなる議事録のチェックやコンプライアンスチェックなど、取締役会と監査役には深い関わりがあります。
監査役の設置が義務付けられている取締役設置会社や、会計監査人設置会社以外は、基本的に監査役の設置は強制されていません。ただ、全国展開しているような大規模な企業や社会的知名度の高い企業は、信用性確保のために監査役を置いていることが多い傾向にあります。
監査役の設置は、実効性のある監査を行っており、不正行為が行われにくいことの証明につながります。また、不正防止に努めていることは、コンプライアンス意識の高い企業であるとの印象を持たれ、金融機関からの融資を受けやすくなるメリットもあります。
将来的に事業拡大を狙う企業にとっては、信頼できる企業というイメージが最も重要になります。そのため、監査役設置会社となるのも1つの手だといえるでしょう。
また、取締役として経験の浅い経営者が、会計やビジネスに関する知識を専門家からアドバイスしてもらえることも魅力的な点といえます。同族企業では、取締役に就任して間もない息子や娘のために前経営者である親が監査役になるケースも少なくありません。
また、起業して間もないベンチャー企業にとっても、監査役は頼れる存在になります。どんなに市場価値が高く、業績が好調な企業であっても、大きな決断を迫られる場面では不安を伴うものです。知識や経験が豊富な監査役からの助言を受けることで適正な決断を下せるようになり、その後の重要な場面においても誤った決断を避けられるでしょう。
ただ、数合わせのために監査役を設置するのはリスクが高くなります。監査の実効性を担保するためには、業務や会計の知識経験が豊富な人を監査役として迎え入れる必要があります。知識や経験のない人物が監査役に就任すれば、のちに大きなトラブルを引き起こす可能性もあるため、人選は慎重に行いましょう。
近年、大手企業の不正会計処理件数などが増加していることから、監査役の重要性が再認識されています。経営者や企業の監査をし、不正を正すのが監査役の役割となります。
しかし、それだけでなく、長年の慣習や独裁体制から脱却するためにも、第三者的な立場の人間の目が必要となります。自社だけでなく、子会社にも目を光らせて不正を防止する監査役はまさに株式会社の縁の下の力持ちといえるでしょう。コンプライアンスが求められる現代で、今後さらに監査役の需要が高まると予想されます。
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