電子申請システムの導入を機に
全国に先駆けて、通知書の電子交付に挑戦
- 大阪府東大阪市役所
大阪府東大阪市では、2021年10月の電子申請システムの運用開始をきっかけに、電子契約と通知書の電子交付を導入しました。とくに通知書の電子交付は全国的に見ても先進的な取り組み。どのような経緯で導入を検討したのか、またそのメリットについて話を聞いた。
取材協力大阪府東大阪市役所 行政管理部 法務文書課 主査 藤井さま 行政管理部 契約検査室契約課 畠中さま
業種 | 契約類型 | ご利用プラン |
---|---|---|
市役所 | 工事請負契約、物品購入契約、通知書など | 契約印&実印プラン |
記事の要約
- 電子申請システムの導入を機に電子契約サービスの導入を検討
- 通知書の電子交付は、全国的に見ても先進的な取組み
- 自治体専用回線「LGWAN」で操作できる電子契約が必須
- 安心感を優先して、電子契約では当事者型署名を活用
- 電子交付、電子契約ともに事務作業が飛躍的に効率化
―東大阪市で電子契約サービスを導入するに至った経緯を教えてください。
東大阪市では、2021年10月に電子申請システムを導入し、それまで窓口や郵送などで行っていた申請や届出をインターネットから行えるようになりました。ただ、決定の通知書は紙のままで、入口は電子なのに出口が紙という少し非効率な状態でした。
そこで、申請から決定通知までの一連の流れをすべて電子で行う解決法として、電子署名を用いた電子交付を検討することになりました。このとき自治体として、最初に候補にあがるのは、地方公共団体組織認証基盤(以下、LGPKI)が発行する職責証明書を利用し、電子署名を行う方法ですが、調査時点では、職責証明書を使用した署名を検証することができるソフトが一部に限られ、市民や事業者への負担が大きく、現実的ではありませんでした。そこで他の方法を検討していたところ、電子印鑑GMOサインなら広く普及しているアドビソフトで電子署名を検証できることがわかり、導入に向けて考えることになりました。
また、通知書の電子交付で電子署名を利用するのであれば、電子契約も同時に検討したほうが良いということになり、契約検査室契約課と法務文書課で歩調を合わせて進めることになりました。
―電子契約サービスを導入するにあたって、懸念点や不安はありましたか?
民間の認証局発行の電子証明書による通知書の電子交付は、全国的に見ても先進的な取組でした。そのため自治体の先行事例がほぼなく、電子交付によるリスクや安全性などについて不安がありました。
また、自治体の事務には、法令に基づくものと条例・規則など市の例規に基づくものがあります。それらすべてにGMOサインの電子署名が適用できるか省令上の確認や、例規整備も必要でした。いずれも手探りのスタートになりました。GMOサインの電子署名の有効性はグレーゾーン解消制度の回答書で解決されましたが、法令で認証局を限定しているものもあるため、すべて解決したわけではありませんが、条例などに基づく手続は例規整備によって、一定解決が図られました。
そのほか、通知に係るリスクについては、原則電子申請システムを利用して通知し、本人確認を徹底するという対策を講じました。電子契約では、事業者の方々の協力や理解が得られるのか、相手方のメールアドレスをどうやって確認するのかといった課題がありましたが、実証実験の中で事業者の方々にご協力いただきながら、一つ一つ解消していきました。
―電子契約の事業者はどのように選定されたのですか?
電子交付と電子契約を同時に導入するにあたって、当事者型署名と立会人型署名のどちらも利用できることが電子契約サービス事業者の選定条件でした。
また、東大阪市が利用している文書管理システムがあるのですが、そちらでの事務作業と電子申請システムでの事務処理を合わせて行うことを想定していました。そのためにはLGWANという自治体専用回線上で操作できることも必須条件でした。当時、その条件を満たす事業者がGMOサインのみだったこともあり、採用することになりました。シンプルな操作性と価格も、採用を後押ししました。その後、GMOサインで実証実験を行った上で、電子印鑑GMOサインの導入を進めていきました。
―現在、どのような内容で電子印鑑GMOサインを利用されていますか?
法務文書課では、市が発行する通知書の電子交付に係る電子署名に利用しています。具体的には、補助金申請における補助金の交付決定通知や、先端設備等導入計画の認定通知などがあります。
また、契約検査室契約課では、同課が行っている建設工事請負契約などで電子契約での電子署名を行っています。建設工事請負契約の件数は、平均すると月に50件ほど締結していますが、そのうちの約3割が電子契約に置き換わっている状況です。
なお、電子契約は立会人型署名で行こともできますが、東大阪市では市長名の署名が確認できる安心感を優先して、当事者型署名を利用しています。
―電子印鑑GMOサインを導入したことで、業務はどのように改善しましたか?
電子交付と電子契約ともに、従来は公印申請所属の職員が紙文書に押印するために課を移動する必要がありました。その手間や時間が削減されています。
また、電子契約については、受注者サイドのメリットになりますが、印紙代が不要になったことで費用負担が軽減しています。2022年度は約12万円が削減された計算になります。郵送費用については、電子交付のみの試算になりますが、2022年度で約10万円の削減になりました。そのほか、電子通知や電子契約の決裁を文書管理システムで行っていますが、LGWAN回線を利用することでそのままGMOサインにログインして、ファイルをアップロードできるため、インターネット回線を使って、ファイルを移行させるといった時間のロスがなく助かっています。
さらに電子署名文書をLGWAN環境で無害化されずにダウンロードすることが可能になり、更なる時間短縮と利便性が高まっています。書類の管理の面でも、所属ごとに専用のフォルダを作って管理することで、個人情報を含む機密情報が他課に見えることなく管理ができるため、適正管理に役立っています。
―電子署名を用いた電子交付を採用している自治体はまだ少ないということですが、電子化すると、どんなメリットがありますか?
まだ事務負担の問題で電子化していませんが、通知書によっては市民のみなさんに一斉に配布するものもあります。もし将来、こうした大量に配布する文書を電子化・自動化することができれば、大幅な業務負担の軽減やコスト削減になります。また、受け取る側としても申請後に郵送で届くような通知書なら、郵送日数を待たずに手元に届きます。紛失のリスクも電子通知書は極めて低いのではないでしょうか。
さらに複数枚の証明書を提出する場合、紙の場合には必要枚数を発行してもらう必要がありますが、電子の場合は、一つのデータで対応ができるというメリットもあります。
―電子印鑑GMOサインの利用に関する、今後の目標はありますか?
電子交付や電子契約の利用はまだ始まったばかりです。そのため電子化されているのは、庁内で扱っている文書や契約のほんの一部に過ぎません。今後は、市役所全体に拡げていけるよう業務フローや課題の検証をしていきたいと思っています。
また、通知や証明書の発行などについては、それを職場や他の役所、第三者に提出するケースもあるので、全国的に電子交付が拡がり、認知度が上がることで、より通知を電子化しやすくなるのではないかと考えています。
―お忙しいところ、ご協力ありがとうございました。
- 感染症対策を実施の上、インタビューを行っております。
- 掲載している内容、所属やお役職は取材当時のものです。
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