こちらの記事をご覧の皆さまは「株主総会」というとどういったイメージをお持ちでしょうか?
など、少し取っ付きにくい話題かとも思います。
そんな方へ、本記事を読むことで「株主総会ってなに?」を解決することができます。
目次
株主総会とは何か?知っておきたい基礎知識
株主総会の登場人物
代表取締役 |
株式会社の経営者であり、株主総会での情報発信や質問に対する回答を主に行います。 |
株主 |
株式会社の発行した株の持ち主であり、株主総会に参加して情報を確認し、経営者に対して質問し、または意見することができます。 |
司会者 |
株主総会の最終的な運営を行います。 |
記者 |
株主総会の様子や話を伝える役割を持つ者です。 |
関係者 |
株式会社の運営に関連する者、アドバイザーなどが含まれます。 |
これらの登場人物は、株主総会において重要な役割を担っていますが、株主総会には各役割を果たすために必要な規則や手順が設けられており、株主総会において各登場人物が適切な役割を果たすことが求められています。
株主総会ってなに?
株主総会は、株式を保有する株主(証券保有者)が1年に1度集まって行われる会議のことです。この会議では、企業の経営方針や業績について株主から質問や提言が行われ、企業側からの説明や回答がなされます。
⇒株主が何か聞きたいこと、言いたいことを企業に意見し企業はその質問に対し答える場が株主総会です。
株主総会は、株式を保有する株主にとって重要な場であり、企業の経営状況や将来の展望などに関する情報を得ることができます。また、株主総会で行われる決議事項(例えば、株主総会の決議に基づく経営方針の変更など)は、企業の経営に大きな影響を与えることがあります。
株主総会で決められること
株主総会では主に3つの事柄について決められます。
①会社の基本的な部分について
定款の変更や事業の譲渡など企業の経営について根幹となる部分を決めます。
②役員の選任や報酬について
株主=雇い主に当たるため、会社役員の選定、役員報酬の決定など採決の権利があります。
③株主への利害について
新株の発行や役員報酬の決定など、株主への利害に関わる部分を決めます。
例えば役員報酬が高い金額に設定されていた場合、株主への配当などにも関わるため利害関係が発生します。そういった株主にとっての不利益を回避するために採決する権利があります。
株主総会は主に2種類
株主総会には主に定時株主総会と、臨時株主総会の2種類に区分されます。
これらは招集される時期によってそれぞれ分けられています。
定時株主総会とは?
毎事業年度の終了後、一定時期において1年に1回は必ず開催される株主総会を、定時株主総会と言います。これは会社法296条1項に定められており、株式会社には必ず開催しなければならない義務があります。
定時株主総会は事業年度1年の締めくくりに開催されるため、事業報告や今後の見通しなどについての説明が主となることが多いです。
臨時株主総会とは?
一方で定時株主総会とは異なり、いつでも必要な時に臨時で開催ができる株主総会を臨時株主総会と言います。これは会社法296条2項に定められています。
臨時で開かれるだけあって、トピックはさまざまですが緊急で役員を補充しなければならない際や資本金の増額等が挙げられます。
株主総会ってなんで開く必要があるの?メリットを解説
会社法で定められているため会社は株主総会を開催せざるを得ないですが、株主にとっては何かメリットがあるのでしょうか。
株主総会は下記3つの役割を満たすことで株主にとってメリットが生じます。
- 経営に関する監視
- 情報収集と提言を行う
- 株主の影響力を発揮
それぞれ下記で説明していきます。
経営を監視することで株主が安心できる
株主総会では、企業の経営状況や経営方針などに関する情報が公表されます。株主はこれらの情報をもとに、適正な経営管理が行われているかを監視することができます。
不透明なところはないか、きちんと仕事をしているか、など監視の目があれば不正はできませんよね。
適正な経営管理を行っていると、顧客や従業員などの関係者から信頼が得られ、長期的な成功が期待されるため投資をしている株主にとって大きなメリットになります。
情報収集の場
株主総会は、株主にとって情報を収集する重要な機会です。企業に対する質問や提言を行い、経営に関する情報を得ることができます。主に株主総会では以下のような事柄を企業に対して質問し情報収集がなされています。
企業の経営状況について |
企業が目指しているビジョンや目標、今後の展望など |
財務状況について |
収益、利益、負債などの状況、投資計画など |
株主権について |
株主の権利や利益に関する問題、株主の投資のメリットなど |
経営に関する評価 |
経営陣の評価、経営戦略の評価など |
リスクについて |
今後のリスクについて、対策など |
これらの情報を基に株主は企業に対し、提言を行い経営に対する影響力を持つことができます。
以下は実際に株主総会で行われた質問です。(イオン株式会社HPより一部転用※)
Q.1
株主:
「新型コロナウイルスの影響で消費行動が変わり、冷凍食品へのニーズが高まるのではないか。新しい業態として、冷凍食品専門の無人型の小型店舗を提案したい。」
イオン:
「冷凍食品のニーズは高まっており、無人店舗についても検討していかねばならないと考えています。なお、無人店舗ではありませんが、冷凍食品専門のスーパーマーケット「ピカール」を14店舗展開しており、そちらの方もぜひご利用ください。」
Q.2
株主:
「セルフレジでは万引きが多いのではないか。システム面はもちろん「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」などのお客さまへのお声がけを徹底するなどセキュリティ対策をもっとすべきなのではないか。」
イオン:
「頂戴したご意見を真摯に受け止め、改めて挨拶の徹底を図り、ご来店いただいたお客さまに気持ちよく安心してお買物していただけるよう努めてまいります。あわせて、レジシステムの改修やセキュリティ対策の強化なども進めていきます。」
※【出典】株主さまからいただいたご質問・ご意見 | 株主総会 | 株式・債券情報 | 株主・投資家の皆さま | イオン株式会社 (aeon.info)
上記のように一顧客目線で企業側に提言が出来ることでさらに企業の発展や成長を促し、株主が安心して投資できるといえます。
株主の影響力の発揮
株主総会は、株主が企業の経営や政策に対して影響力を発揮する重要な場であり、株主が経営に対しての不満や、高給与や経営陣の権利に対する不満を株主総会で提起することで、企業の戦略や経営方針の変更、経営陣の給与規模の制限や企業の経営や財務状況の改善などが図られます。
株主総会はこんな流れで行われる
株主総会は以下のような流れで行われます。
Step1.取締役会(※)において開催の概要を決定する
Step2.株主へ株主総会の収集を通知する
Step3.株主総会開催の準備を行う
Step4.株主総会を開催する
Step5.議事録の作成と保存
(※)取締役会とは…株主総会で任命された3名以上の取締役で構成された機関のこと。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
取締役会において開催概要の決定
主に下記の5つについて開催の概要を決定します。
①株主総会の日時および場所の決定 |
場所の制限はなく基本はどこでも行える。 |
②株主総会の目的事項 |
議案や報告事項など。 |
③書面投票を認める場合にはその旨 |
株主が株主総会に出席することなく、議案の賛否について書面投票できる旨を通知する。 |
④電子投票(オンライン)を認める場合にはその旨 |
書面投票とは異なり、ウェブサイト等のオンラインにて議案の賛否に投票できる旨を通知する |
⑤その他 |
|
株主へ株主総会の招集を通知する
取り決めた株主総会の概要を株主宛に通知します。通知方法については書面で行うのが一般的ですが、一部例外で電話等でも認められています。
通知の期間については、公開会社、非公開会社で異なりますので以下表にまとめました。
会社の種類 |
公開会社 |
非公開会社 |
取締役会設置の有無 |
|
有 |
無 |
書面投票・電子投票を採用の有無 |
|
有 |
無 |
有 |
無 |
通知期間 |
2週間前 |
2週間前 |
1週間前 |
2週間前 |
1週間前 |
※定款により短縮可 |
公開会社:株式に譲渡制限がついていない会社のこと
非公開会社:株式に譲渡制限がついている会社のこと
開催の準備を行う
株主総会を円滑に進めるために事前準備は重要です。報告事項・議事案等のまとめや株主からの想定質問集などの準備が必須です。
質問に答えることができなければ株主からの信頼が揺らぎ会社の存続等にも関わるためかなり重要です。
開催する
株主総会当日は以下の流れに沿って行っていきます。
議長の就任
開会宣言
議事進行に関する説明
監査報告
事業報告、計算書類説明
議案上程
審議方法の確定と審議
質疑応答
決議
閉会宣言
この中でも特に事業報告~決議までの過程は株主総会のメインであり非常に重要な項目です。
それぞれについて解説をしていきます。
事業報告、計算書類説明
現状、企業がどのような事業を行っているのか、どのような状況なのかを株主に分かりやすく説明し理解してもらう大事なプロセスです。
また、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)についても説明を行います。
議案上程
何かしらの議案について提出し会議にかけることを議案上程と言います。提出した議案の説明と内容を株主に分かりやすく説明する必要があります。
議案についてはさまざまですが、役員の選任、解任や役員報酬などについて、資本金額の増加などが挙げられます。
審議方法の確定と審議
議案内容の説明後、質疑応答があります。その後に審議方法を決定し審議へと移っていきます。
審議方法には2種類あります。
①:挙げられた全ての議案に対して一括で審議を行います。個別方式と比べて時間がかからないため、こちらの方式が主流です。
②個別審議方式:一括とは異なり、個別に審議を行う方法です。
質疑応答
議案の内容以外に事業内容やその他のことについて株主からの質問に対し会社側が答えていく時間になります。
事前に準備した想定質問集を用いますが、予期せぬ質問ももちろん挙がってくるため会社側は懇切丁寧、かつ分かりやすい回答が求められます。
決議
決議の種類には3種類あります。
①
普通決議:最も一般的な決議であり、議決権を持つ株主が過半数賛成した場合に成立する決議です。取締役の選任などの人事関連や配当金の決定などが採択されます。
②特別決議:普通決議が過半数の賛成に対して、特別議決では2/3の賛成がないと採択されません。事業譲渡や定款変更など、会社の根幹に関わる重要な決議案の採択に利用されます。
③特殊決議:特別決議よりも賛成多数でなければ採択されないものです。内容は特別決議と近しいものですが、株主の利害に関わる剰余金の配当などの議決案に利用されます。
議事録の作成と保存
株主総会の議事録は、会議の概要や議論内容、決定事項などを正確かつ明瞭に記録するものであり、会議の後の検証や追跡のためにも重要な役割を持ちます。会社法第318条第1項に定められ、作成が義務付けられています。
議事録は、会議中にノートを取り、それを整理・編集することで作成されます。議事録は、株主総会終了後すぐ(おおむね1~2週間)に作成することが望ましいとされており、すぐに作成できない場合は、できるだけ早く作成して保存することが推奨されます。
議事録は、適切な形式で整理され、長期的な保存のためにデジタル形式で保存することもできます。日本では、会社法に基づいて、株主総会の日から10年間は議事録を保管することが定められています。
法務省が取締役会議事録の電子作成・登記申請に利用可能なサービスとして「電子印鑑GMOサイン」を追加
バーチャル株主総会
バーチャル株主総会 (Virtual Stockholder Meeting) とは、インターネットを利用して、株主がリアルタイムで参加し、株主総会を開催する方法です。通常の株主総会と同様に、株主が会社に関する質問をすることができ、会社側は回答を行います。
この方法は、株主が地理的に分散している場合に有効であり、株主が株主総会に参加しやすくなることが期待されます。また、移動や時間の無駄を避けることができ、新型コロナウイルスの感染予防ができます。
メリットとデメリット
バーチャル株主総会のメリット
参加のしやすさ |
場所や時間の制限がないため、株主が参加しやすい |
コストの節約 |
会場の準備や株主への誘導などの費用が必要なくなる |
環境への配慮 |
会場の準備や株主の移動などによる環境負荷が減る |
バーチャル株主総会のデメリット
技術的な制限 |
インターネット接続やハードウェアなどの技術的な要件がある |
参加者の数の制限 |
一度に参加できる株主の数に制限がある |
質問のクオリティの低下 |
参加者が質問をする際に誤りや不明確な表現などがあり、質問のクオリティが低下する可能性がある |
質問への不十分な回答 |
会社側が回答を行う際に、環境や技術的な問題などがあり、不十分な回答になる可能性がある |
まとめ
株主総会とは?株主が何か聞きたいこと、言いたいことを企業に意見し企業はその質問に対し答え、議論する場のこと
株主総会を開くことでのメリット株主が企業の監視、情報収集、また企業へ意見をすることで成長が見込めるとともに顧客からの信頼を得ることにつながる
株主総会はこんな流れで開かれる取締役会において開催の概要を決定する→株主へ株主総会の招集を通知する
開催の準備を行う→開催する→議事録の作成と保存
この記事を通して株主総会について少しでも理解が深まれば嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。
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