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2022年から改正電子帳簿保存法が施行されました。今回の改正により、影響を受ける企業や個人事業主は少なくありません。国は、改正電子帳簿保存法への対応のため、一定の猶予期間を設けています。
国は、2024年までに電子データ保存に対応するよう求めています。自社が改正法の対象になるのかどうかを知りたい担当者もいるのではないでしょうか。もし電子帳簿保存法の対象になる場合には、必要となる具体的な準備や、対応方法を把握しておくことが大切です
電子帳簿保存法とは、帳簿や書類を、電子データを利用して保存する際の決まりごとを定めた法律です。1998年に施行され、その後数回に渡り改正されてきた経緯があります。
電子帳簿保存法の施行により、紙ベースから、電子データを利用した保存に切り替わるため、ペーパーレス化を促進する効果があります。2022年に施行された改正電子帳簿保存法では、より一層の生産性向上のため、企業や個人が柔軟に対応可能な制度への見直しが行われました。
電子帳簿保存法では、国税関係帳簿書類などを電子データで保存することが定められていますが、例外も存在します。たとえば、手書きで作成した請求書が該当します。手書きで記入した仕分帳などの帳簿類も対象外になっているため、対象外の書類は、紙のまま保管しておくことになっています。
どこまでが電子帳簿保存法の対象となるのでしょうか。法人だけでなく、個人事業主の対象範囲も理解しておかなければなりません。
電子帳簿保存法は全ての法人が対象になります。法人の規模や売上などに関わらず対象になるため、注意が必要です。また、個人事業主も基本的に全てが電子帳簿保存法の対象ですが、例外も存在します。電子データを一切取り扱わない企業や個人事業主は電子帳簿保存法の対象にはなりません。
電子帳簿保存法は原則として全ての法人と個人事業主を対象としています。そのため、例外となる場合を除いて、全ての法人と個人事業主は電子データで書類を保管しなければなりません。ただし電子データでの保存については猶予期間が設定されています。
猶予期限である2023年12月31日までは紙ベースで書類を保存することが可能です。しかし、2024年からは電子データでの保存へ移行する必要があるため、遅くとも2023年中には電子帳簿保存法に対応しなければなりません。
改正電子帳簿保存法の施行により、従来よりも電子データの管理についてハードルが下がりました。しかし、それと同時に罰則規定も設けられたため、注意が必要です。
電子帳簿の保存に関連して不正が発覚した場合には、罰則が適用されます。具体的には青色申告適用の取消しや、重加算税の追徴課税などの罰則が科されます。申告漏れの場合にも罰則が適用されるため、あらかじめ制度を良く理解して、準備を進めるようにしましょう。
電子帳簿保存法には、電子帳簿、スキャナ、電子取引データの3つの保存区分が設定されています。
電子帳簿等保存とは、税務関係帳簿書類を電子データで保存することを指します。たとえば、会計ソフトで帳簿を管理している場合、会計ソフトで作成した帳簿を電子データで保存するという意味です。
これまでは帳簿などを紙に印刷していましたが、電子帳簿保存法施行により、印刷の必要がなくなりました。その代わり、帳簿を作成する過程で、全てのデータを電子的な形で処理する必要があります。パソコンで管理しているのであれば、会計ソフトを利用して、帳簿作成と保存を全てパソコンで行います。これまでは電子データでの保存について所轄税務署長による承認が必要でしたが、改正により、税務署長の承認は不要になりました。
電子帳簿保存法に定められているスキャナ保存とは、書類をスキャナなどで電子データに変換して保存することを指します。PDFファイルなどの電子的なデータに変換し、保存することが認められています。たとえば、紙ベースの発注書や領収書など決算関係書類を除く国税関係書類はスキャナ保存することが可能です。スキャナ保存する場合は、解像度などが予め定められているので、要件を満たしたうえで保存する必要があることも覚えておきましょう。
電子取引を行った場合、電子データで保存しておくことが求められます。たとえば、商品を納品した際に、取引内容を電子データで受け取った場合には、変更することなく、受け取った時点での形で保存しておくことが求められます。メールで電子ファイルの領収書や発注書を受け取った場合などが該当します。
ECサイトで事務用品を購入し、領収書を電子データで受け取った場合は、データのまま保存することになります。しかし、紙の領収書を受け取った場合、電子取引のデータ保存には該当しません。
それぞれの保存法についての詳細は次の通りです。
スクロールできます引用元:どうすればいいの?「電子帳簿保存法」 | 経済産業省 中小企業庁
保存区分 概要 ①電子帳簿等保存 電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存 ②スキャナ保存 紙で受領・作成した書類を画像データで保存 ③電子取引 電子的に授受した取引情報をデータで保存
紙の帳簿や領収書から、電子データに変更することには多くのメリットがあります。膨大な書類を保存する必要がなくなるため、オフィススペースの有効活用が可能となります。また、電子データの利用により、書類の検索性も向上するでしょう。
電子データでの保存は、省資源化にもつながり、環境に配慮している企業としてイメージの向上が図れます。また、書類を電子データで管理することは、生産性の向上にもつながります。電子帳簿保存法では電子データで書類を保存する際の要件が定められているため、予め理解しておくことが必要です。
電子データで書類を保存する場合、次の4つの要件が定められています。
1.システム概要に関連した書類を備えつけること
2.見読可能装置の設置
3.検索機能を使えるようにする
4.データの真実性の担保
電子データで書類を保存する場合、会計ソフトなどデータを作成するソフトウェアの説明書やマニュアルを備えつけるとことが必要です。電子データで保存した書類は、税務職員も確認する必要があるため、使い方を記したマニュアルなどを用意しておかなければなりません。
見読可能装置の設置とは、パソコンで作成した電子的なデータを視認できるモニターなどの装置を設置することを意味します。パソコンを提示したとしても、モニターがなければ電子データを確認することはできません。税務職員がデータを閲覧する際に視認可能な端末を準備する必要があります。具体的にはノートパソコンや、タブレット端末などが該当します。
定められた項目ごとに検索ができるよう、データをまとめておくことも必要です。具体的な項目は取引に関連した年月日、金額、取引先の3つです。ファイル名をあらかじめそれぞれの項目にあった名称で統一することで、検索がしやすくなります。
市販の会計ソフトを利用して、検索機能を確保することも認められています。そのほかにも表計算ソフトの検索機能で、項目ごとに内容を検索できるようにしておくことも可能です。
データの真実性の担保とは、電子データの日付などが信頼できるものにするため、タイムスタンプなどを付すことを指します。電子帳簿保存法では、次の4つの措置のうちのどれか1つを行うことが定められています。
A.タイムスタンプが付与された書類の受け取り
B.電子データへの速やかなタイムスタンプの付与
C.電子データの変更を随時記録するもしくは変更が禁止されているシステムを使用して保存する
D.真実性を担保するため事務処理に関する明確な規定を定め運用する
A-Cの方法を利用する場合、タイムスタンプを押せるシステムを新たに導入する必要があります。Dはシステムを導入する代わりに国税庁が定めた方法で、ルールを決めて運用する方法です。システム導入が難しい場合、Dの方法を利用することになります。
電子データの保存に関する要件のうち、3と4については次の表が参考になります。
スクロールできます引用元:どうすればいいの?「電子帳簿保存法」 | 経済産業省 中小企業庁
保存要件 概要 対応方法例 3.検索機能の確保 ・「取引年月日」
・「取引金額」
・「取引先」
で検索できるようにする1.検索機能に対応した専用ソフトを使用する
2.ファイル名を「20221031_(株)国税商事_110000」等にしてデータを保存する
3.Excel等で索引簿を作成し、保存したファイルと関係づける4.真実性の担保 保存した電子データの真実性を担保できるようにする。 A.タイムスタンプが付与された書類の受け取り
B.データに速やかにタイムスタンプを付与する
C.データの訂正・削除が記録されるまたは禁止されたシステムでデータを受け取って保存する
D.不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用
国税関係帳簿などは、電子データで保存するか、紙で保存するかについて、選択可能になっています。そのため、国税関係帳簿などに関しては従来通り紙での保存でも問題ありません。ただし、電子取引に関連したデータについては、紙での保存は認められないため、2024年1月までに準備を整えておく必要があります。先ほど取り上げた4つの要件のうち、小規模法人や個人事業主が注意したいのは、3と4です。
検索機能要件については、電子データで領収書などを保存する際、ファイル名に日時、取引企業の名前、取引金額を指定することで検索しやすくなります。4のデータの真実性の担保については、タイムスタンプを付与できるシステム導入にコストや時間がかかってしまうことから、Dの事務処理に関する規定を定める方法を採用するのがスムーズで負担が軽く済みます。
改正された電子帳簿保存法ではいくつかの要件が緩和されています。主な変更点を理解しておくことをおすすめします。
書類へタイムスタンプを付与するタイミングについて、これまでは3営業日の間と定められていましたが、改正により、最長2か月と概ね7営業日以内にタイムスタンプを付与すれば良いことになりました。これまで国税関係書類をスキャナで読み取る際に、受け取り側が署名する必要がありましたが、この措置も廃止されています。
改正前は、紙の帳簿を電子データに変換したのち、原本も保存する必要がありました。しかし、法改正により、この義務がなくなり、スキャナで電子データに変換した後は、破棄しても良いことになっています。
2022年に施行された改正電子帳簿保存法は、対応が難しい事業主も多いことから猶予期間が設けられています。猶予期限である2023年末までの準備期間を活用して、自社に合った対策を整えておくことが必要です。
電子データでの保存は、印刷が不要となることから、環境保護にもつながります。また、自社の書類管理なども効率良く行えるようになり、担当者の負担が軽減されます。改正内容を良く理解し、現在できる対策を行うことが大切といえるでしょう。
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