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あらゆる業種の会社は、従業員の生活や安全を保障するために各種保険に加入して法定福利費を支払わなければなりません。特に建設業では危険な作業が多いため、見積書には法定福利費も含めて記載して提出することが義務付けられています。
そこで本記事では、法定福利費の概要や各種保険の詳細、建設業における法定福利費の注意点について詳しく解説します。
法定福利費とは、会社が従業員に対して負担することが義務付けられている保険料を指します。会社に所属している従業員や家族は、給料以外にも社会保険や各種サービスを受けることができ、これらの制度を福利厚生といいます。この福利厚生を含む各種費用が法定福利費と呼ばれており、従業員の代わりに会社が負担します。
法定福利費にはさまざまな保険が含まれており、事業主もしくは従業員の負担で区別されます。従業員負担分は従業員が直接的に負担するのではなく、給与支払時に保険料を天引きするようになっています。中には事業者が全額負担する保険もあるため、それぞれ該当する保険の種類と負担の内訳については把握しておきましょう。
健康保険とは、怪我や病気、それらによる休業等で生じてしまう経済的な負担を緩和するために設けられている制度です。健康保険は公的医療健康保険とも呼ばれていますが、これにもいくつか種類があり、75歳未満の人すべてに加入義務がある「国民健康保険」や、国民保険の対象者の中で会社員や公務員が加入する保険が「被用者保険」などがあります。被用者保険は企業が従業員の代わりに負担する保険料であるため、法定福利費に該当します。
厚生年金保険は公的年金制度のひとつであり、労働者が65歳以上になると年金が支給されるようになっています。国民年金は20歳以上60歳未満の国民すべてが加入する年金ですが、厚生年金は厚生年金保険に加入する企業で勤めている70歳未満の社員には加入義務があります。
また、正社員だけではなく条件を満たしているパートやアルバイトの人にも加入義務があります。厚生年金保険に加入していると、国民年金に上乗せされる形でもらえるため、国民年金のみの加入者に比べて給付金額が多くなるのが特徴です。
さらに、給与の額によっても保険料は異なり、給与が高い人ほど保険料が高く、支給時の金額も大きくなります。厚生年金保険に入るとその分多くの保険料を払うことにはなりますが、保険料は企業と従業員の折半での負担になります。この企業での負担分が法定福利費に該当します。
介護保険とは、その名の通り介護などの支援が必要な人へ向けて、少ない負担で各種支援を受けられるように費用の一部を給付する制度です。介護保険は40歳を超えると、被保険者として加入義務が発生します。
要支援・要介護の状態になった場合は、64歳未満であってもかかる費用の一部が支給されます。介護保険についても健康保険と同様に、毎月支払われる給与から天引きされるケースが多く、保険料は会社との折半になります。この会社負担分の保険料が法定福利費に該当します。
雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定、就職の促進のために設けられた制度です。主に労働者の失業時や病気によって勤続が困難となった場合に、生活をしばらく安定させるために給付されます。
雇用保険にもいくつか種類はありますが、多くの方が利用しているのは「失業等給付制度」です。雇用保険の被保険者期間や対象者の年齢に応じた割合の給付金が支給されます。雇用保険も会社と従業員がそれぞれ支払う形になりますが、折半ではなく会社側の負担割合が高いです。
労災保険は、従業員が仕事中や通勤途中などで何らかのトラブル等に巻き込まれて怪我や病気、あるいは死亡した場合に給付金が支給される制度です。怪我や病気の場合はかかる治療費の一部が労災保険から支給され、死亡した場合は遺族の生活を守るために遺族に支払われます。
正社員だけではなく、その会社に勤めるパートやアルバイトも対象になり、従業員を最低1人でも雇用する事業主は労災保険の加入が義務付けられます。労災保険の保険料については、その全額が会社負担になります。給付額はそれぞれの従業員がもらう給料の額に応じて変わり、労災保険の費用も法定福利費に該当します。
子育て拠出金とは、子育て支援や児童手当の支給にかかる費用の一部を事業主から徴収する制度です。従業員の負担はなく、全額事業主が負担します。厚生年金とともに毎月徴収されます。
また従業員の子供の有無にかかわらず、厚生年金に加入する人全員が対象になります。拠出額は従業員の標準報酬月額や標準賞与額に応じて算出されるため、従業員ごとに金額も変わります。全額が会社負担であり、この費用も法定福利費となります。
建設業では危険な作業が多く、他の業種と比べても怪我や病気をしやすいです。このような事情から、建設業の事業者は各種保険に加入して従業員に対する保障を充実させなければなりません。
そのため2013年から建設業における見積書には、法定福利費も含めて計算したものを記載、提出することが義務付けられました。この義務化によって、法定福利費を支払っていない建設業者は仕事を受注できないようになっています。
元請け側は下請けに作業を発注する際、見積書を提出してもらうことになりますが、その際には必ず法定福利費を明記してもらうことを伝えておきましょう。法定福利費には各種保険が関係しているため、受け取った後は記入漏れがないか入念に確認します。その際には、法定福利費分を元請け側が減額したり、法定福利費分の労務費や材料費を減額したりしないように注意しましょう。
下請け側は、必ず見積書に法定福利費を明示しましょう。請負金額としてまとめて提出すると法定福利費の内訳が不明瞭になってしまうため、細かく記載した見積書を作成しましょう。ここで記載する法定福利費は、事業主が負担する分のみの記載で問題ありません。
各保険の法定保険料率を参照したうえで、正確な金額を算出することを心がけて、妥当性のある金額で見積書を作成しましょう。
法定福利費は工事の内容に合わせて計算結果が変動するため、工事ごとに毎回算出する場合には手間がかかります。そこで、法定福利費を自動で計算してくれるツールがwebで多く公開されているため有効活用しましょう。
算出にかかる作業時間を短縮でき、業務効率化やコスト削減につながります。値を入力すれば自動で計算してくれるツールや表計算ソフトのテンプレートも配布されているため、状況に応じてこれらのツールを使いこなしましょう。
法定福利費は、従業員の保障のためにも事業者が負担しなければならない保険料です。保険の種類によって、事業者の全額負担か従業員と分割しての負担になるかも変わってきます。建設業の見積書では法定福利費の明示も義務付けられているため、記入方法やそれぞれの保険料率について正確に把握したうえで作成しましょう。
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