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民法において成人年齢が18歳に引き下げられるなど、現在の日本では多くの法改正がされています。2023年5月には企業にとって重要な法律である「景品表示法」の改正が行われ、2023年・2024年と相次いで新しい規制が施行されます。
今回は、ぜひとも知っておきたい景品表示法の改正ポイントについて解説いたします。
まずは、基本的なところからおさらいしていくことにしましょう。
景品表示法(正式には「不当景品類及び不当表示防止法」)は、企業による過大な宣伝・広告や不当に高額な景品の贈呈などを禁止・制限しています。
そうすることによって、消費者が商品やサービスなどを選択する際に消費者自身の自主性や合理性を保ち、消費者の保護を図っているのです。
景品表示法(以下、「景表法」といいます)は、以下の2つの事項を制限しています。
①景品類の制限・禁止
②不当表示の禁止
それぞれについて簡単に確認しておきましょう。
景表法は、事業者が販促の一環などとして消費者に交付する景品類に関して制限しています(同法4条)。
近年はキャンペーンなどによってポイントの付与・還元などを行うことが多くなっていますが、これも景表法の規制対象となる可能性があるので注意が必要です。
特定の種類・性質のポイントに関しては、無制限に還元や付与が認められるのではなく、景表法の上限規制を受けます。これを知らずにうっかりと法律の上限を超える還元をした場合には、罰則を受けるなど企業として大きな損失を被る可能性があります。
なお、ポイント還元の法的上限の詳細に関しては『ポイント還元と景品表示法|還元率の法的上限と違反した場合の罰則』 を参照してください。
景表法では事業者が行う宣伝や広告などにおいて、実際の商品・サービスに関して品質や規格、その他の内容についてライバル他社よりも著しく優良だと誤認させるような表示(「優良誤認表示」)を規制の対象としています(同法5条1項)。
また、商品やサービスの価格や取引条件に関して著しく有利であると誤認させる表示(「有利誤認表示」)も規制対象とされています。
これらの規制に違反した場合には、「措置命令」や「課徴金納付命令」あるいは刑事罰など各種の罰則を受ける可能性があります。
2023年5月10日、景表法の改正案が国会で可決されました。
改正法の施行は公布の日である同年5月17日から「1年半を超えない範囲内」において政令で定める日に施行されることになっており、以下のように2023年12月現在においてすでに施行済みのものと、これから施行予定のものに分けることができます。
①2023年改正(施行済み)
②2024年改正(予定)
それぞれ重要な改正がされていますので、順次ポイントを押さえていきましょう。
実際には事業者による広告であるにもかかわらず、それを表示せずに行われる広告・宣伝のことを「ステルスマーケティング」(いわゆる「ステマ」)といいます。
欧米ではステマ規制が法制化されていましたが、日本では規制の対象外でした。しかし2023年10月1日から施行された改正景表法ではステマが「不当表示」に指定されることになったため、同法律による規制の対象となりました。
ステマ広告は、以下の2つのタイプに分けることができます。
①利益提供秘匿型
②なりすまし型
それぞれについて、簡単に解説します。
有名ユーチューバーなど、いわゆる「インフルエンサー」が事業者から金銭など利益の提供を受け、その事業者の商品やサービスに関して宣伝・広告を行うタイプのステマです。
実質的に事業者が行っている宣伝・広告であるにもかかわらずそれを隠し、表面上は第三者によるものと誤認させるようなタイプのステマです。
今回の改正によって上記のような宣伝・広告をする場合には、広告内において事業者が行っているものである旨を表示することが必要となります。
ただし、そのコンテンツ内において事業者が行っている広告である旨の表示をする場合であっても、フォントが小さかったり動画内でのテロップが短時間であったりする場合は、ステマ規制の対象となるので注意が必要です。
なお、ステマ規制に違反した場合には、消費者庁や都道府県などから「措置命令」などを受けることになります。もし、この措置命令に従わずステマ広告を継続した場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれか一方または両方が科せられることになります。
2023年に施行された改正に続き、2024年には以下のような改正が行われる予定です。特に重要なものを抜粋してご紹介します。
企業にとっては、どれも重要な改正となりますので、ぜひポイントを押さえておきましょう。
①課徴金制度の拡充
②確約手続の導入
③適格消費者団体による開示要請規定の新設
④国際化への対応
⑤罰則の強化
それぞれ簡単に確認していきましょう。
景品表示法の課徴金制度は2016年から始まりましたが、今回の改正で悪質な事業者に対して課徴金を割り増しして課すことができるようになりました。
改正法では、過去10年以内に課徴金納付命令を受けたことのある事業者に対して再度課徴金を科す場合には、通常の1.5倍に増額することができるようになります(改正景表法第8条5項)。
通常であれば課徴金は対象となる商品・サービスの売上額の3%相当額とされるところ、違反行為を繰り返す悪質な業者に対しては4.5%に割り増しして課徴金を課すことが認められることになります。
不当表示など景表法違反をしている又はその恐れがあるとされた事業者であったとしても、自主的に是正措置計画を作成し内閣総理大臣の認定を受けるなど手続きを経ることを条件として、措置命令や課徴金納付命令を回避できる制度が導入されます(同法26条~29条)。
改正前の景表法では、たとえ事業者が自主的に違反行為を是正しても措置命令や課徴金納付命令を回避することは不可能でした。今回の改正以降、当該事業者の自発的で迅速な是正が期待されます。
事業者が優良誤認表示を行っていると疑うについて足りる相当な理由がある場合、適格消費者団体はその事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を開示するよう要請することができる旨の規定が新設されました(同法35条1項)。また、この要請を受けた事業者は、その要請に応じる努力義務が課せられます(同条2項)。
なお、適格消費者団体とは、不当表示や不当な勧誘などを行っている事業者に対して、その行為をやめるように求める差止請求を行うために必要とされる適格性を有するものとして内閣総理大臣から認定を受けた消費者団体のことを言います。
インターネットの発展を通じてビジネスの世界ではますます国際化が進展し、外国の事業者が日本国内で事業展開するケースが増大しています。
そのような外国事業者による景表法違反に的確に対応するためには、その外国事業者が所在する国の当局との緊密な情報のやり取りが不可欠です。
今回の改正では、外国当局との間における情報提供に関する規定が新設されました。
外国当局が職務を遂行するのに資すると認定した情報に関して内閣総理大臣は、外国当局に対して情報提供を行うことが可能となります(同法41条)。
今回の改正では、悪質な事業者に対する罰則が新設されました。
優良誤認表示や有利誤認表示を行っている事業者の中でも特に悪質な事業者に対しては、措置命令などを経ることなく刑罰として100万円以下の罰金を科すことができるようになります(同法48条)。
企業にとって自社の商品やサービスを消費者にアピールするためには、宣伝や広告は不可欠です。特に、近年はインターネットの普及に伴い、商品・サービスをアピールする場は格段に増加しています。
しかし、その内容によっては景品表示法違反となり、罰則を受ける可能性があるので注意が必要です。
企業が宣伝・広告を行う際に注意すべき景表法。今回の改正で規制内容がどのように変わったのかについて熟知しておきましょう。
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