企業では非常に多くの個人情報や社外秘の情報などを扱っているため、強固なセキュリティ対策が必要不可欠となっています。しかし、サイバー攻撃は年々手口が巧妙化しており、適切な対策を立てるのは容易ではありません。
そこで役立つのが、SOC というセキュリティサービスであり、近年多くの企業が導入しています。本記事では、SOCの内容や導入方法、セキュリティ能力などについて詳しく解説します。
目次
SOCとは
SOC(Security Operation Center)とは、ネットワーク機器やITデバイスなどに対するサイバー攻撃の検出や分析などを行う専門組織のことです 。SOCは年々巧妙化するサイバー攻撃に対抗して、高度なセキュリティ対策を行うために常時監視する役割を果たしています。
近年、アウトソーシング(外部専門組織への依頼)によりSOCを設置する企業が増加しています。その背景には、セキュリティ対策やSOCに関する技術が発展していることが挙げられます。自社で対応するよりも専門的なSOC提供をする企業に委託した方が、高い効果があってコストも安いので大きなメリットを期待できるのです。
SOCの導入方法
現代の企業では、社内外からさまざまなデバイスを介して、インターネットと接続している社内システムにアクセスするケースが増えています。しかし、このようなクラウド環境の積極利用には、サイバーセキュリティ面におけるリスクが高まっている面も存在します。
そこでサイバー攻撃などセキュリティ的脅威への対策には、社内で使われているネットワークやデバイスなどのログをきちんと確認して、インシデントが起こると推測される兆候を事前に察知することが重要です。しかし、そのような高度な技術を持つ専門家を自社で確保することは極めて困難であるため、セキュリティ監視に関するシステム運用を専門業者に委託する企業が増えています。
なお、専門的なセキュリティ対策要員を自社で育成しているケースもあります。そのような形態は「プライベートSOC」 と言われており、自社の実情に合った適切な対応が行える点や、外部の業者に任せるよりコスト削減が期待できる点などがメリットとして挙げられます。
SOCのセキュリティ能力
SOCのセキュリティ能力は、ネットワークにおけるセキュリティ機器の状態やエンドポイントにおけるログなどの情報解析に優れています。とくに、不正アクセスなどのセキュリティ攻撃への迅速な対応が可能です。
サーバーのセキュリティを強化
SOCには、サーバーへの攻撃を検知できる能力があります。サーバーのファイアウォールやWAFなどのログを分析できるため、DDoS攻撃(大量にアクセスする攻撃) やSQL攻撃(不正に情報を表示させるコマンドを入力する攻撃) に有効です。
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ウイルスにも有効
クライアントが使用するパソコンがウイルスなどに感染した場合にも迅速に対処できるメリットがあります。たとえば、EDR(Endpoint Detection and Response)製品 に関する異常なログやネットワーク機器の不要な通信量、ウイルスがソフトウェアに対して不審な挙動を行っていないかなどをチェックできます。また、外部のボットネットなどのサーバーへ不正に情報を送信していないかといった挙動なども確認できます。
不正ログインをシャットアウト
サイバー攻撃では、不正に入手したログイン情報などを使って他人がログインしようとするケースもあります。そこでSOCを導入しておけば、挙動の事前察知と解析が可能になります。たとえば、通常とは異なるパソコンやインターネットのアクセスポイント、そして他国からの大量のアクセスログを解析して特定することで、攻撃者からの不正なログイン試行をシャットアウトするのです。
SOCとCSIRTとの違い
SOCと類似したサービスとして、CSIRT(Computer Security Incident Response Team) が挙げられます。SOCはセキュリティインシデントの察知に焦点を当てていますが、CSIRTではインシデント発生後の処理に重点を置いている点が異なります 。つまり、SOCはインシデントを未然に防ぐ専門組織であるのに対して、CSIRTはインシデント発生後の対応を行う組織です。
そのためSOCとCSIRTをそれぞれ用意すれば、セキュリティインシデントに関するPDCAサイクルを管理して、包括的な対策を講じられるようになるでしょう。
CSIRTの利用法
SOCとCSIRTの両方を用意して連携させる方法が理想ですが、この仕組みを作ることが難しい場合には外部のサービスを利用する方法も選択肢の一つとして挙げられます。たとえばCSIRTと連携してセキュリティ対策を行うMDR(Managed Detection and Response) と呼ばれるサービスがあります。MDRでは、エンドポイントにおけるセキュリティインシデントの検知などの高度な技術を活用して、セキュリティに関する脅威を未然に防御します。
セキュリティインシデントでは、外部からサイバー攻撃などによって侵入された場所の特定が必須であり、セキュリティホールを速やかに閉じることが二次被害を防ぐ上で大きな意義を持っています。MDRはそうした作業などを代行してくれる専門的なサービスです。
SOCの関係法令
SOCはサイバーセキュリティ対策の一端を担っていますが、その背景には2015年に国内で施行されたサイバーセキュリティ基本法 による取り組みが挙げられます。サイバーセキュリティ基本法とは、国民がサイバーセキュリティに対する理解を深めて、高度な情報通信社会の到来における安全なITの利活用を推進するための法令です。また本法令は国民の権利を保障した上で、経済社会によるインターネットの利活用推進における安全性を確保する役割も担っています。
参考:総務省「サイバーセキュリティ基本法|国民のためのサイバーセキュリティサイト 」
さらにNISC(National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurity) と呼ばれる内閣サイバーセキュリティセンターが、SOCやCSIRTと連携して具体的なサイバーセキュリティ対策における戦略策定や支援などを行っています。
参考:内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)
SOCを選ぶポイントとは
SOCのサービスを選ぶ際には品質とコスト、対応範囲の確認がポイント です。とくに品質は極めて重要なポイントであり、さまざまなサイバーセキュリティインシデントに対処できる複合的に使えるSOCを選びましょう。なぜなら、サイバー攻撃では多くのセキュリティインシデントが相互的に作用する種類が増えているため、全体に適応できるサービスでなければ対処が難しくなるからです。
コストを事前に試算する点も重要です。SOCは24時間365日の監視が基本であり、また専門的なサービスであることから、経費が思った以上に高くなってしまうケースがあるでしょう。
さらに、会社が監視したいシステムをカバーできるかどうかもしっかりと確認しておきましょう。社内でセキュリティ対策しておきたいシステムが、SOCの対応範囲であるかどうか、委託先の担当者に必ず確認してください。
SOCの問題点
SOCの問題点としては、専門家による常時監視体制を構築する過程で大きなコストがかかる点が挙げられます。また社内でプロフェッショナル要員を用意する場合でも、人材の採用や育成が困難です。そのため、プライベートSOCを構築する方法は現実的ではないといえるでしょう。
解決策として考えられるSaaS型のSOC
既存のSOCの問題点を解決するために、新たなサービスの提供方法として注目されているのが、SaaS型によるオペレーションセンター方式のSOC です。オペレーションセンター方式では、インターネットに接続したSaaSというクラウドアプリケーションを基礎としています。SOCの実体となる物理的なシステムを他の場所に設置して、インターネットを介したリモートアクセスでSOCを提供するクラウド型のサービスになっています。
SaaS型のSOCでは、自社でサーバーを新たに設置したり、SOC用の物理的なセキュリティシステムを構築したりする必要がありません。また、サーバーなどの設備を保守管理するための物理的なスペースや電力などを消費しない点も便利です。さらに、オペレーションセンター方式を採用しているため、点検などもすべてリモートで行え、SOCの実行に関してもインターネットを通じた遠隔操作で行えるといった点から、地方企業にとってもメリットが大きいといえるでしょう。
SaaS型のSOCの課題
しかし、オペレーションセンター方式のSOCはクラウディングコンピューティングシステムを採用していることから、対応できる会社のシステムが限定される傾向にあります。そのため、それぞれの企業に応じたSOCではなく、一般的な対応範囲におけるSOCになっている点が課題として挙げられます。
プライベートSOCと組み合わせる方法がベター
SaaS型のSOCでは、セキュリティ対策の対応範囲が限られているため、多様化するサイバー攻撃に対処し切れない可能性があります。そこで最初はSaaS型のSOCを運用しつつ、プライベートSOCと並行して使う方法がおすすめです。うまく人材が育てば、コスト削減や自社に特化した非常に有用なプライベートSOCが構築できるでしょう。
まとめ
本記事では、企業のサイバーセキュリティに欠かせない専門組織SOCについて、SOCが担う役割や設置の際の注意点を中心に詳しく解説してきました。
現代社会において、高度なセキュリティの確保は最も優先すべき事項です。外部サービスの利用も念頭に入れながら、自社にとって最適なセキュリティシステムの構築を検討してみてください。
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