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収入印紙を領収書に貼り付けることは日常の取引でよくあることですが、不動産取引における敷金預り証に収入印紙を貼り付けるべきかどうかについては、税理士に相談しても答えに迷うケースがよくあります。
「税理士なのだから印紙税についても知っているはず」と思われがちですが、税理士法では印紙税が対象外ということもあり、よく知らない税理士もいるからです。
不動産に関連した取引については、どの取引が課税対象になるのか、あるいは課税対象にならないのかが複雑なため、税理士でも迷ってしまうことがあります。納税は国民の3大義務ですから、この点については正しく理解しておく必要があります。
不動産契約と印紙税についての関係を理解しておきましょう。今回取り上げる敷金預り証は、賃貸契約で交わされる証明書の一つです。賃貸契約は、家主もしくは仲介業者を介して、借主との間に交わす契約です。その際に発行するのが賃貸契約書です。
賃貸契約書では当然、一定の額を超えるわけですから、収入印紙も契約金額に応じて貼り付けるべきだろうと思われがちです。しかし、貼り付けなくても良い場合があります。少し混乱するかもしれませんが、賃貸契約では印紙税の課税対象になるものとそうでない契約が存在します。
印紙税の課税対象になるのは土地の賃貸契約です。それに対して、上物(建物)の賃貸契約については印紙税の課税対象にはなりません。これはいかなる物件の賃貸契約についても言えることで、金額の大小に関わりなく非課税になります。国税庁のホームページには、次のような説明があります。
建物の賃貸借契約書は、印紙税の課税対象となりません。ところで、建物の賃貸借契約書の中には、その建物の所在地や使用収益の範囲を確定するために、敷地の面積が記載されることがありますが、このような文書も建物の賃貸借契約書であるとして、印紙税の課税対象となりません。
【引用】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7106.htm
土地の賃貸契約については印紙税の課税対象になるため、収入印紙の貼り付けが必要になります。土地の賃貸契約を結ぶ場合、いくらの収入印紙を用意する必要があるのでしょうか。国税庁のホームページには、印紙税の額の一覧が公表されています。
印紙税額(1通または1冊につき) | |
---|---|
記載された契約金額が 1万円未満(※) 10万円以下 10万円を超え50万円以下 50万円を超え100万円以下 100万円を超え500万円以下 500万円を超え1千万円以下 1千万円を超え5千万円以下 5千万円を超え1億円以下 1億円を超え5億円以下 5億円を超え10億円以下 10億円を超え50億円以下 50億円を超えるもの 契約金額の記載のないもの | 非課税 200円 400円 1千円 2千円 1万円 2万円 6万円 10万円 20万円 40万円 60万円 200円 |
一覧表からもわかる通り、土地の賃貸契約における取引金額により、印紙税額がいくらになるかが変わります。ここで注意したいのが「契約金額のないもの」という表記です。
「1万円未満は非課税」という表記とは別に、「契約金額のないもの」とはいったい何を指すのでしょうか。
まずは、上の表にある「記載された契約金額」の意味を理解しておきましょう。記載された契約金額とは、契約満了時などに返還されないお金のことを指します。たとえば、権利金などがそれにあたりますが、これらの契約金額が記入された賃貸契約書は、印紙税の課税対象になるという意味です。
それに対して、「契約金額のないもの」とは、敷金などの契約満了や契約解約時に返還されるお金のことを指します。このことから、賃貸契約書に後日返還されないお金が記入されていないものについては、「契約金額のないもの」に該当し、一律で200円の印紙税がかかります。
賃貸契約書に収入印紙が貼り付けられている場合、この原則に従って、収入印紙が貼り付けられているということになるのです。
賃貸契約を現金取引で交わす時には、領収書が発行されます。この場合、印紙税は課税されるのでしょうか?
賃貸契約で契約書とは別に領収書を発行した際には、印紙税が課税されます。この場合の印紙税の額は次のとおりです。
印紙税額(1通または1冊につき) | |
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記載された契約金額が 1万円未満(※) 10万円以下 10万円を超え50万円以下 50万円を超え100万円以下 100万円を超え500万円以下 500万円を超え1千万円以下 1千万円を超え5千万円以下 5千万円を超え1億円以下 1億円を超え5億円以下 5億円を超え10億円以下 10億円を超え50億円以下 50億円を超えるもの 契約金額の記載のないもの | 非課税 200円 400円 1千円 2千円 1万円 2万円 6万円 10万円 20万円 40万円 60万円 200円 |
ここからが本題になりますが、不動産の賃貸契約において、敷金を支払うとが発行されることがある敷金預り証は印紙税の課税対象になるのでしょうか。
国税庁によると、賃貸契約の預り証について次のような説明があります。
敷金の法律上の性質は、賃貸借終了の際、賃借人に債務不履行のあるときは当然にその弁済に充当された残額を、債務不履行がなければ全額を返還するという停止条件付返還債務を伴う金銭所有権の移転であると解されています。
この敷金の預りは、相手方のために金銭を保管するものではありませんので、敷金の「預り証」は、第14号文書(金銭の寄託に関する契約書)ではなく、第17号の2文書(売上代金以外の金銭の受取書)に該当することになります(基通別表第一第14号文書の3)。
なお、建物賃貸借契約書を作成する場合に、契約書に敷金等の受領の旨が具体的に記載されている場合には、第17号文書(金銭の受取書)に該当する場合があります。(注) 賃貸借契約に伴う「保証金預り証」も「敷金の預り証」と同様に取り扱われます。
【引用元】https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/17/06.htm
敷金の預り証は第17号文書に該当します。第17号文書とは、印紙税の課税対象になる金銭もしくは有価証券の受け取り書類に相当します。
このことから、敷金の預り証には収入印紙を貼り付ける必要があることがわかります。
では、敷金の預り証に貼り付ける収入印紙の金額はいくらになるのでしょうか。この点については、次の規定が適用されることになっています。
[売上代金以外の金銭または有価証券の受取書] (例) 借入金の受取書、保険金の受取書、損害賠償金の受取書、補償金の受取書、返還金の受取書など | 記載された受取金額によって、それぞれ以下 5万円未満→非課税 5万円以上→200円 受取金額の記載のないもの→200円 (非課税文書:1営業に関しないもの、 2有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの) |
この表からわかるとおり、敷金の合計が5万円未満のものについては非課税となりますが、それ以外は200円の収入印紙を貼り付ける必要があります。
もし手元に敷金の預り証がある場合、金額と収入印紙が貼られているかどうかを確認してみてください。賃貸物件の大家さんと直接賃貸契約を結んでいるという人もいるかもしれません。時折、大家さんが収入印紙を貼り付けるのを忘れて、敷金の預り証を発行するケースが見られます。この場合、罰則の対象になるのでしょうか。
印紙税法では、定められた金額の印紙税を納めない場合、本来納めるべき印紙税額の3倍を納めることが規定されています。先ほどのケースだと、敷金の預り証に収入印紙を貼り付けていないならば、200円の3倍の600円の印紙税を納めることになります。
不動産契約によっては、敷金の支払いが不要というケースもあります。この場合、敷金の預り証は発行されないため、印紙税の課税対象にはなりません。
中には、敷金の預り証を発行しない場合もあります。ただし、後々のトラブルを防ぐため、敷金の預り証を発行してもらうことを検討したほうが良いかもしれません。
賃貸契約では、土地の賃貸契約については印紙税の課税対象になり、建物の賃貸契約については課税対象にはなりません。ただし、不動産契約を締結し、現金で敷金等を支払った場合、領収書が発行され、それは印紙税の課税対象になるため、収入印紙の貼り付けが必要です。敷金の預り証を発行する場合も印紙税の課税対象文書に相当するため、収入印紙を貼り付けることが求められます。
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