医療業界に勤務している方で、
さまざまな契約の締結に手間がかかって困っている
とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
人手不足が深刻化している医療業界において、業務効率化は急務だといえるでしょう。業務の効率化を図ることができれば、医師・看護師・事務員の負担を大きく減らすことも可能です。
本記事では、医療業界の契約における課題と課題解決のためのアプローチについて解説します。医療業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推し進めるためのツールやシステムも紹介しますので、医療業界で働く方はぜひご覧ください。
医療業界における契約の課題とは?
医療業界ではさまざまな契約が発生するため、その都度時間を割いて対応しなければなりません。ここでは、医療業界で懸念されている2つの課題を解説します。
紙の書類の管理に人員・時間がかかっている
数多くの契約書の管理をするために人員と時間を割かなければならない点は、大きな課題といえるでしょう。医療業界ではさまざまな契約が締結されているため、契約別に書面を保存する必要があります。主な契約は以下の通りです。
- 病院と医師との雇用契約
- 患者の個人情報保護契約
- 臨床試験の委託に関する契約
- 施設管理の委託契約
- 医療機器の保守・リース契約
医療業界ではこれらの契約以外にも数多くの契約が発生しており、種類別に書類を保管しなければなりません。保管スペースが必要なだけでなく、書面の作成から締結、締結後の管理にまで人員を割く必要があるので、人手不足の場所ではスタッフの負担が重くなる傾向にあります。
契約締結までに時間がかかる
医療に関する契約書は、多くの人の確認・承認が必要になるため、契約締結まで時間がかかる点も課題として挙げられます。取引先と医師のみで締結できる契約もあれば、上層部の役員や経営者、ときには行政機関の承認を必要とするケースもあるため、締結までに数週間の期間を要すると考えた方が良いでしょう。とくに病院外の人の承認が必要な場合は、書類を郵送で送る時間もかかるため、すぐに契約を締結することは難しくなります。
深刻な医療業界の人手不足について
医療業界は人手不足が深刻な問題となっており、厚生労働省からは医師・看護師確保に向けた対策も考案されています。現在、どれくらい人手が足りていないのかを見ていきましょう。
医師・看護師の不足
医師や看護師の配置には大きな偏りがあり、地域によっては深刻な人手不足が懸念されています。厚生労働省が発表した「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」資料によると、10万人あたりの看護職員就業者数は、とくに関東圏の都市部において全国平均を大きく下回っています。
東京都はもとより神奈川県や千葉県、埼玉県、茨城県なども看護職員の数が不足している状況がうかがえます(※)。一方、西日本では10万にあたりの看護職員の数が2,000人を超える自治体が多いことも見て取れます。
※10万人あたりの看護職員就業者数は、看護職員の絶対的な充足状況を示すものではなく、あくまで相対的な偏在の状況を表すものです。
また、看護職員だけでなく医師も偏在傾向にあり、地域によって人数に大きな差が生じています。
関西地方や九州地方は偏在指標の数字が大きいことから、そのほかに地域に比べれば医師数が足りていることがわかります(※)。しかし、東北地方や東京を除く関東地方、中部地方の一部は偏在指標が低い値を示しているところもあるため、場所によっては深刻な人手不足に悩まされていることが読み取れるでしょう。
※医師の偏在指標は、医師の絶対的な充足状況を示すものではなく、あくまで相対的な偏在の状況を表すものです。
離職率の高さによってさらに業務が困難に
深刻な人手不足の背景には、医療業界における離職率の高さが潜んでいます。たとえば、厚生労働省「2 産業別の入職と離職の状況」によれば、令和4年(2022年)上半期の「医療、福祉」職の離職者数は781,500人と全産業のなかでもっとも多くなっています。
また離職者数が増える一方で、募集に対し入ってくる働き手が少ない点も課題として挙げられます。
厚生労働省が発表した厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況に関する参考資料」によると、看護職員の有効求人倍率は2倍台後半を示すなど非常に高水準です。令和5年のハローワークにおける一般職業の平均有効倍率が1.31倍であることを考えても、看護職は常に人手不足の状況にあるといえるでしょう。
このように医療業界における人手不足は「新たな担い手が不足している点」と「離職率の高さ」が主な原因と考えられます。具体的に耳にすることも多い医師・看護師が離職する理由には以下のようなものが挙げられます。
- 労働負担が重い
- 人間関係の悪化
- 給与や待遇への不満
- キャリアチェンジ
このなかでも、とくに課題として挙げられるのが労働負担の重さです。病床のある病院は24時間体制でスタッフが常駐しなければならないので、日勤・夜勤があります。生活リズムが整わずに体調を崩してしまう人も多いため、勤務における業務効率化を図り、スタッフの負担を少しでも減らすことが急務です。
電子契約の導入でスタッフの負担を軽減することが可能
医療業界で働くスタッフの負担を減らすひとつの方法として、電子契約の導入を検討するのも解決策の1つです。ここでは、電子契約の導入でスタッフの負担を減らせる理由と、課題へのメリットを解説します。
電子契約でスタッフの負担を減らせる理由
前述したように、医療業界ではさまざまな契約が発生します。契約書を作成したり、契約に関わる人に確認・承認をしてもらったりなど、数多くの手間もかかるでしょう。
契約に時間を取られていては、普段の業務をこなせません。人手不足の現場で契約に人員を割けば、そのほかのスタッフが医療業務をこなす必要があるため、結果的に全体の負担が重くなってしまいます。
すぐにチェックできれば確認・承認作業も迅速に進むため、急ぎの契約も時間をかけずに締結できるでしょう。スタッフの負担を減らすことはもちろん、人手不足による業務の遅延の解消にも効果が期待できます。
負担を減らすことで離職を防ぐ
電子契約の導入で業務が効率化すれば、過重労働に悩んでいたスタッフの離職を防げる可能性があります。医療業界は、医師・看護師ともにこなす業務が多いため、疲れから辞めたいと考える人も多くいるのが現状です。
離職を防ぐには、スタッフ1人ひとりの負担を減らすことが重要と考えましょう。日常の業務を1つずつチェックし、負担を軽減する方法を実施することが重要です。その一助として、電子契約を検討することをおすすめします。
電子契約導入にあたっての課題点
医療業界に電子契約を導入するにあたって、対応すべき課題点があります。ここでは、厚生労働省で議論されている2つの課題について解説しましょう。
医療・福祉分野における電子署名の信頼性
医療・福祉分野に電子契約を導入するにあたり、厚生労働省では電子署名の信頼性が議論されています。信頼性を高めるために求めるものは以下の通りです。
- 身元確認
- 本人の認証
- 認証情報連携の確からしさ
信頼性の高い電子署名を実現するために、厚生労働省は評価方針・基準案としてローカル署名を提案しています。ローカル署名とは、個人のパソコンやICカード内に保管されている秘密鍵を使って電子署名を行う方法です。秘密鍵がなければ署名できないので、基本的には契約者本人しか署名できません。厳重に保管する必要はありますが、信頼性を高めるポイントを満たせる点は大きなメリットといえます。しかし、ローカル署名はローカルアプリケーションを使う必要があるため、どの契約にも活用できるとは限りません。鍵を自身で管理する手間もあるので、スタッフの負担が増えてしまう懸念もあるでしょう。
近年、クラウド上で秘密鍵を管理する電子署名(クラウド署名)を導入するケースも増えています。クラウド署名は秘密鍵の管理を電子契約サービスにお任せできるので、自身で管理せずに済む点が大きなメリットです。相手が電子契約サービスを導入していなくても署名可能ですから、さまざまな契約に活用できるでしょう。
ただし、クラウドにアクセスできる人であれば、誰でも電子署名ができてしまう点が不安視されています。その点、クラウド署名のシステムを提供する電子契約サービスは二要素認証などを使って本人確認をする対策を講じているため、信頼性や安全性の高さを重視して導入したいと考えている方にはおすすめです。
資格確認における信頼性
医療業界に電子契約を導入するにあたって、医師の資格確認における信頼性も求められています。厚生労働省が発表する「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5.2版」では、医師によって作成される文書に電子署名を付与する際に、医師資格を電子的に確認することが必要と記載されています(※)。
※ローカル署名のほか、リモート署名、立会人型電子署名の場合も同様
電子署名前に資格確認を済ませる方法は以下の通りです。
- 保健医療福祉分野PKI認証局が発行する署名用証明書を用いて電子署名を行う
- 官公庁が発行した国家資格の書類を電子契約事業者に持参、または郵送する
- 電子署名以外の方法で、国家資格情報と連携して提示できる仕組みを用いて事業者に提示する
- 勤務する、または運営する医療機関が事業者に国家資格を有することを提示する
いずれかの方法で医師資格を有すると証明することで、医師が電子署名を行えるようになります。医師しか作成できない文書への電子署名は、事前の資格確認を済ませることが法令で定められているため、いずれかの方法で資格を有すると証明しておきましょう。
電子契約サービスを利用するメリット
電子契約は、医療業界における課題の解決が期待できる画期的な契約方法です。とはいえ、一から電子契約システムをローカル環境に整備するのは非常に労力がかかります。そこで、電子契約の導入におすすめなのがクラウド型電子契約サービスの利用です。具体的にどのようなメリットが望めるのか、紹介します。
さまざまな署名タイプを選べる
クラウド型電子契約サービスが提供する電子署名は大きく分けて2つあります。1つがリモート署名とも呼ばれる「当事者型電子署名」です。第三者機関である電子認証局による利用者本人の身元確認を行った上で行われる署名であり、高い本人性を担保します。
2つ目が事業者型電子署名とも呼ばれる「立会人型電子署名」です。こちらは利用者本人の指示にもとづきサービス事業者の電子署名を付与するのが特徴で、当事者型電子署名に比べ使いやすくスムーズな点がメリットです。
現在、クラウド型の電子契約サービスを展開する事業者は数多くありますが、その大半は「立会人型電子署名」のみを提供しています。過去には立会人型電子署名の信頼性が疑問視されたこともありますが、法整備が進み、現在は立会人型電子署名であっても十分な法的有効性を担保できると考えられています。
一方、国内シェアNo.1(※)の電子契約サービスである電子印鑑GMOサインは「立会人型電子署名」はもちろん、「当事者型電子署名」も標準機能として提供しています。
※1 「電子印鑑GMOサイン(OEM商材含む)」を利用した事業者数(企業または個人)。1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウントとする 。自社調べ(2023年11月)
※2 電子署名およびタイムスタンプが付与された契約の送信数(タイムスタンプのみの契約を除く。電子署名法の電子署名の要件より)。自社調べ(2023年12月)
たしかに「立会人型電子署名」はその利便性において当事者型電子署名よりも使い勝手が良いのですが、法的有効性や信頼性が重視される契約の場面では「当事者型電子署名」のニーズは決して少なくありません。
実際に、一般財団法人日本情報経済社会推進協会と株式会社アイ・ティ・アールが2023年1月に共同で行った調査によると、立会人型電子署名を利用している企業が17.5%、当事者型電子署名を利用している企業は25.8%、立会人型/当事者型両方を利用している企業が14.3%という結果が出ています。
とくに医療や福祉といった、人生に大きく関わる情報を日頃から取り扱う分野においては、立会人型電子署名だけではなく当事者型電子署名も利用できる電子契約サービスを選択するのが重要です。
二要素認証で本人の信頼性を上げる
医療業界の電子契約で不安視される本人確認の信頼性は、二要素認証で解決できるでしょう。二要素認証とは、2つの要素を組み合わせて本人確認を行う方法です。要素には知識・所有・生体の3つがあり、それぞれの具体例は以下の通りとなっています。
- 知識:合言葉やパスワード
- 所有:スマホやICカード、身分証明書など
- 生体:指紋や顔、静脈など
1つだけでは不確かな情報でも、2つ以上組み合わせれば本人確認の信頼性が増します。電子署名を行う際、二要素認証を実施すれば契約における当事者のみが電子署名を行えるということになり、信頼度が高まります。
\ GMOサインは二要素認証を標準機能として提供しています /
ワークフローの設定で契約締結をスムーズに
電子契約サービスのワークフロー機能を使えば、書類の確認フローをあらかじめ設定できるため、承認作業をスムーズに進めることが可能です。前述したように医療業界における契約書はさまざまな人が契約に関わるため、確認・承認作業がなかなか進まない課題があります。
契約更新通知で更新・解約漏れを防ぐ
電子契約サービスの契約更新通知機能を活用することで、継続する契約と、解約する契約をかんたんに把握できます。医療業界はさまざまな種類の契約を締結するため、契約期間をつい忘れてしまいがちです。
継続が必要な契約の更新を忘れて業務に支障が出た、解約すべき契約が自動更新になっていて引き続き契約しなければならなくなったなどのケースも多くあるため、契約時期を正確に把握しておかなければなりません。
しかし、普段の医療業務に加えて契約期間を把握しておくことは難しいため、ツールの機能を活用して契約満了の時期を確認することがおすすめです。
作成した契約書にアラートを付けておけば、契約満了時期にお知らせしてくれるので、更新が必要かどうかをその都度確認できます。
医療業界には必要のなさそうな機能も、意外な使い道があるかもしれません。電子契約サービスを選ぶときは、セキュリティ機能だけでなく、電子契約に使える機能が充実しているかをチェックしましょう。
まとめ:電子契約の導入で医療業界の人手不足のカバーやスタッフの負担を減らすことが可能
医療業界においても電子契約の本格導入がすでに始まっています。数多くの契約を電子契約で効率化すれば、契約に割いていた時間が大幅に短縮され、スタッフの負担が減ります。人手不足をカバーしつつ、業務負担の減少で離職を防ぐメリットも得られるでしょう。
少子高齢化が進んでいる日本では、医療人材の確保と業務のデジタル化は非常に重要な課題です。質の高い医療を提供し続けるためにも、デジタル化の1つとして電子契約の導入もご検討ください。