企業で経費精算するにあたっては、レシートでは認められず領収書での提出が必要とされるケースが一般的です。しかし「レシートのほうがより詳細な情報が載っているのに、なぜ領収書でなければならないの?」と疑問に感じたことはありませんか。
そのような疑問を解決するために、本記事ではレシートと領収書の役割の違いや、経理および消費税法における取り扱いについて詳しく解説します。
目次
レシートと領収書の大きな違いは「宛名の有無」
領収書を英語に訳すと、「Receipt」すなわち「レシート」になります。海外では領収書もレシートも同じものとして取り扱われている国が多いので、外国で商品を購入してレシートを受け取ったときに「領収書で作成してほしい」といっても、うまく伝わらないかもしれません。このように、領収書は日本独自の文化といえます。
それでは、レシートと領収書で何が異なるのかというと、記載されている項目です。レシートの場合、店名と日付、購入した商品名、単価が記載されています。一方、領収書は、レシートの記載項目にプラスして「宛名」と呼ばれる受領人の名前も記載されます。
つまり、宛名の有無がレシートと領収書の大きな相違点なのです。
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経理や税法における取り扱い
経費精算の際に、レシートではなく領収書を提出するようにいわれる会社は結構多いでしょう。しかし、実はレシートでも有効というケースも結構あります。
領収書の代わりにレシートの提出が認められることも
経費精算における領収書の役割は購入(支払い)の証明です。領収書は証憑書類の一種で、領収書の提示が必要になる代表的なシーンは税務調査です。その税務調査においては、領収書だけではなくレシートも実は証憑書類として扱われるケースが存在します。
そのため厳密にいえば、経理面においては、領収書とレシートにそこまで大きな違いがあるわけではありません。ただし、会社の規則によって領収書しか認めていない場合もあります。この場合には会社のルールに従って、領収書で提出しなければなりません。
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消費税法で重視される宛名と例外
一般的に、企業は売上に応じた消費税を納めます。その際、仕入れなどに対して支払った消費税を控除できる仕組みが整えられています。そして消費税法30条では、仕入れに係る消費税額の控除のためには、宛名が正しく記載されている証憑書類を用意せよと明言されているのです。
したがって、消費税法では原則として宛名の記載された領収書を用意しなければなりません。しかし、宛名が記載されていなくとも問題ない場合もあります。
具体的には、取引先の業種が下記に分類される場合、領収書には宛名が書かれていなくても問題ありません。
コンビニで買い物した、得意先と飲食した、タクシーで移動したなどの場合には、レシートでも構わないわけです。
レシートは簡易インボイス(適格簡易請求書)として扱われます。
税務調査ではレシートのほうがメリットが大きい?
領収書を作成するにあたって、店員さんから「宛名はどうしますか?」「品目はどのようになさいますか?」といわれたことがある方も多いでしょう。このような場合に、宛名を上様にしたり品目を「お品代」と記載したりするケースが多いです。
しかし、このような記載内容が省略されている簡略化されている領収書よりは、レシートのほうが証拠能力はあると考えられます。レシートには宛名が記載されていませんが、店名や日付、品目、単価などについては詳細に記載されています。またレシートは機械が印字しているので、人の手で改ざんするのは難しいです。
このような理由から、記載内容が省略されている領収書よりは、むしろレシートを保管しておいた方が税務調査では信ぴょう性が高くなると考えられています。
特定の場合にレシートでの経費精算も認めるかどうかは、企業や組織の社内ルールによります。税法上レシートでも認められるケースだからといって、領収書の提出を拒むことは、自身にとっても会社にとってもプラスになりません。まずは社内でどのような運用がされているのか、十分に確認しましょう。
会社が領収書を重視する理由
税法上、レシートで経費精算しても問題ないケースは少なくありません。しかし、それでも日本では多くの企業が領収書を取得するように求める傾向が見られます。その理由には、税務調査が関係しているといわれています。
飲食のレシートは会社での利用かどうか疑わしいため
取引先との食事会にかかった飲食代の経費を精算する場合、消費税法に則れば宛名なしのレシートでも構わないことになっています。しかし、飲食代があまりに高額だったり頻繁に行われていたりする場合には、税務署は「本当にビジネスに関係した会食なのか?」と疑いの目を向ける恐れがあります。
このような場合、レシートを発行した飲食店に税務署から事実関係の問い合わせがあるかもしれません。無用な疑いをかけられたくないならば、宛名のある領収書を経費精算のときに提出するようにしておきましょう。
レシートは長期保存に向かないため
レシートよりも領収書のほうが重視される理由として、レシートは長期保存に向かない点も挙げられます。レシートは表面がつるつるしていますが、これは感熱紙が使われているためです。
感熱紙は光や水分、熱などに弱い特性があります。そのため、時間の経過とともに日焼けや室内の温度によって文字がかすれて、確認しにくくなります。最悪の場合印字された文字が消えてしまって、支払いの証明書類として認められない恐れもあります。
レシートや領収書の保管期間は、法人では会社の規模に関係なく7年間です。また、7年間の起点はレシートや領収書が発行されてからなく、法人税の申告期限からです。そのため長い期間保管しなければならず、文字が消えるトラブルを防ぐために領収書の提出が求められるケースが多くなっています。
領収書の再発行について
先述した通り、領収書は一定期間保管しなければなりません。しかし、なんらかのミスで紛失してしまい、会社から再発行を求められることもあるでしょう。また、宛名に間違いがあったり、但し書きが実際の内容と異なっていたりした場合も、再発行を求められるかもしれません。このような場合にはどうすればいいのか対処法をお伝えします。
取引先に領収書の再発行の有無を確認
まず、取引先に領収書の再発行が可能かどうか確認することが重要です。多くの企業では、一定期間内であれば領収書の再発行に対応してくれる場合があります。その際、再発行の理由や必要な情報(取引日、金額、取引内容など)を明確に伝えましょう。また、再発行に手数料がかかる場合もあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。再発行が可能な場合は、できるだけ迅速に対応してもらえるよう丁寧にお願いすることが大切です。
レシートや購入明細書(利用明細書)で代替できないか確認
領収書の再発行が難しい場合、レシートや購入明細書(利用明細書)で代替できないか確認してみましょう。これらの書類には、取引日、金額、取引内容などの必要な情報が記載されていることが多いです。レシートだけでなくクレジットカードの利用明細書も証憑書類として認められることがあります。会社の経理担当者や税理士に相談し、これらの代替書類で問題がないか確認することをおすすめします。ただし、宛名や但し書きが必要な場合は、これらの代替書類では不十分な可能性があるので注意が必要です。
出金伝票や支払い証明書の作成を依頼
領収書の再発行もレシートや明細書での代替も難しい場合は、取引先に出金伝票や支払い証明書の作成を依頼することを検討しましょう。これらの書類には、支払いの事実を証明する情報(支払日、金額、取引内容、支払者名など)を記載してもらいます。取引先の担当者に状況を説明し、協力を求めることが重要です。場合によっては、取引先の社印や担当者の署名を付けてもらうことで、書類の信頼性を高めることができます。ただし、これらの代替書類が会社や税務署に認められるかどうかは事前に確認しておく必要があります。
領収書とレシートを両方もらうことはできる?
万が一に備えて、領収書とレシート、両方の発行をお願いしたことがある方もいるのではないでしょうか。問題なく両方とももらえることもあれば、どちらか一方のみの発行になるといわれたことがある方もいるかもしれません。
多くの店舗や企業では、領収書とレシートの両方を発行することは技術的に可能です。レシートは購入時に自動的に発行される取引記録であり、領収書は顧客の要望に応じて発行される正式な支払い証明書です。
しかし、両方を要求することには以下のような問題があります。
- 経費の二重精算のリスク
- 不正使用の懸念
- 取引先への余計な負担
これらの理由から、領収書とレシートの両方を受け取ることはおすすめできません。代わりに、取引の目的や金額に応じて、適切なほうを1つ選んで受け取るようにしましょう。通常、経費精算や税務申告には正式な領収書を使用することが望ましいですが、少額取引の場合はレシートで代用できることも多いです(社内ルールに従いましょう)。
なお、紛失に備えて領収書のコピーをあらかじめ取っておくなどの行為もおすすめできません。不正使用や改ざんのリスクが高まります。実際に会社では、領収書の原本の提出が求められることが多いはずです。同様に領収書に手書きで変更を加えるなどの行為も決して行ってはいけません。内容に不備がある場合は発行元に再発行してもらうように依頼しましょう。
まとめ:領収書とレシート、どちらも経理や税法において重要な書類です
領収書とレシートの大きな違いは宛名の有無です。
会社における経費精算では一般的に領収書の提出が求められるケースが大半ですが、税法上また税務調査の際にはレシートで対応しても問題ないことが多々あります。とはいえ、組織で働く以上、会社のルールに従いましょう。会社のルールは、仕入れに係る消費税額の控除の要件を抜け漏れなく満たすために定められています。こうしたルールを一人ひとりが守ることで、結果として会社全体の業務が効率的に遂行されます。
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