ビジネスをする上で「契約」は欠かせないものですが、「なぜ契約が必要なのか」と聞かれると答えられる人は少ないのではないでしょうか。こどもの頃から「約束は守らなければならない」と教育を受けてきているので、その延長線上で捉えている人も多いと思います。
実は、契約について定める民法は120年ぶりに大改正され、2020年4月から改正法が施行されています。明治時代に作られた法律だったので現代社会に対応しきれなくなったからです。今回は、なぜ契約は必要なのか、契約に違反した場合にはどうなるかなど、最新の情報を踏まえて、契約の基本について解説していきたいと思います。
目次
契約とは?
契約の定義については、多様な捉え方ができるため、明確な答えはありません。一般的には、「債権発生を目的とする合意」と考える「狭義の契約」と、「債権に限らず合意の内容の実現が法律によって保護されるもの」と考える「広義の契約」があるとされます。
債権というのは、特定人の間で一定の請求権が発生することです。売買契約をすることで、買主は物の引渡請求権を取得し、売主は代金請求権を取得することなどが代表例です。ただ、抵当権の設定契約などは債権ではなく物権の設定契約なので、「狭義の契約」ではなく「広義の契約」となります。
学問的には興味深く奥深いところですが、ビジネスにおいては深入りするところではないので、「契約とは、債権を発生させるための合意で、一部例外がある」という程度に覚えておけば、十分です。
なぜ契約が必要なのか?
「約束は守らなければならない」というのは、道義上の観念にすぎません。相手が約束を破れば当然非難することはできますが、それでも相手が約束を守らなければ諦めるか、力ずくで奪うしかありません。しかし力ずくで奪うことは法律で禁じられているので、結局諦めることになってしまいます。それでは、困ってしまうので、契約が必要になるわけです。契約であれば、契約を守らない場合には、国家権力(強制執行等)を使って約束を守らせることができるからです。
契約の種類
民法には、13種類の契約類型が定められています。
1. 贈与
2. 売買
3. 交換
4. 消費貸借
5. 使用貸借
6. 賃貸借
7. 雇用
8. 請負
9. 委任
10. 寄託
11. 組合
12. 終身定期金
13. 和解
これらを「典型契約」と呼びます。 |
もっとも、「契約自由の原則」という契約の基本原則から、典型契約以外の契約をすることも可能です。それを「非典型契約」と呼びます。非典型契約は、宿泊契約や診療契約など無数にあります。
また、法的な性質による分類として、「双務契約」と「片務契約」、「有償契約」と「無償契約」があります。「双務契約」と「片務契約」の違いは、債務を当事者双方が負うか、片方が負うかです。「有償契約」と「無償契約」の違いは、対価的な給付が伴うかどうかです。
契約の効力
契約の効力が発生する要件の違いから、「諾成(だくせい)契約」と「要物(ようぶつ)契約」に分けられます。諾成契約が当事者の合意だけで成立する(民法第522条第1項)のに対し、要物契約は目的物を引き渡さなければ成立しない契約です。基本的に契約は諾成契約ですが、消費貸借などは要物契約です(第587条)。
なお、諾成契約の場合、契約は口頭での合意であっても有効に成立します。つまり、契約書がなくても契約の効力は発生します(第522条第2項)。
13の類型を分類すると以下のようになります。

契約に違反した場合にはどうなるか?
契約に違反した場合、債権者は、債務者に対して法律を根拠として履行をするよう請求することができます。それでも債務者が履行しない場合には、訴えを提起することもできます。裁判で債権者が勝訴すれば、債務者に強制的に履行させることができます(第414条)。また、強制的に履行させることができない性質のものについては、債務者に対して損害賠償を求めるか(第415条)、契約を解除(第541条、第542条)することができます。
まとめると、債務者が契約通りの履行を行わないとき、債権者は以下のことができます。
・強制履行(第414条)
・損害賠償請求(第415条)
・契約の解除(第541条、第542条)
まとめ
今回は、契約とは何か、契約の種類、契約の効力、契約に違反した場合にはどうなるかなどについて解説してきました。契約は自分の権利を守ってくれるものですが、契約内容を誤ると逆に自分にとって不利になることもあります。契約を締結する際は、しっかりと内容を確認するようにしてください。