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飲食店を経営する際には、さまざまな法律が適用されますが、その中の1つに風営法があります。飲食店経営者やこれから開業しようと検討している人の中には、風営法についてあまり詳しく知らない人もいるかもしれません。
風営法の適用を受ける飲食店は多いため、知識がなければ、知らない間に違反行為をしてしまうリスクもあります。飲食店経営者なら、風営法について一通り知っておかなければなりません。本記事では風営法の対象や注意すべき違反行為について解説します。
風営法とは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の略です。青少年の健全な成長や地域の環境を守ることを目的としています。風営法の名称や目的から、自分のお店とは関係ないと思ってしまう飲食店経営者の方もいるでしょう。しかし、風営法の対象は幅広く、飲食店も対象となる可能性があります。
風営法に違反してしまった場合、罰則の適用を受けることもあるため、十分注意が必要です。
風営法では風俗営業等が規制対象です。このうち風俗営業の種類が風営法第2条の1号から5号までに列挙されており、1号営業や2号営業などと呼ばれています。また、1号から5号までに該当する営業の他にも、規制対象となる営業が3種類あります。それでは、風営法で規制対象になる営業についてそれぞれ見ていきましょう。
第二条この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
二喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)
三喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの
四まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
五スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 | e-Gov法令検索
1号営業は、キャバレーや待合、料理店、カフェなどで接待を含むサービスを提供している店舗のことです。接待というのは、特定のお客さんの隣に座ってサービスを提供したり、身体を触れ合わせたりするような行為が該当します。カラオケ設備がある店舗では、特定のお客さんと一緒に歌を歌うのも接待です。
キャバクラやスナック、ホストクラブなどが該当しますが、一般の飲食店であれば、通常は該当しません。
2号営業は喫茶店やバーなどの飲食店で、店内が10ルクス以下の明るさの場合に該当します。10ルクスの目安としては、上映前の映画館の明るさをイメージするといいでしょう。かなり暗くしないと10ルクス以下にはなりません。
バーなどで、雰囲気作りのために照明を意図的に暗くしているお店なら、2号営業に該当するケースが多いです。
3号営業は、喫茶店やバーなどの飲食店で、他の場所から見通しにくく5平方メートル以下の客席を設けている店舗のことです。主に個室居酒屋などが該当します。
4号営業は、主にマージャン店やパチンコ店などの店舗です。飲食店とは関係がありません。
5号営業は、ゲーム機やスロットマシンなどの遊戯設備を設置している店舗です。主にゲームセンターが該当します。飲食店で該当する店舗はそう多くありません。ただし、店内にゲーム機やスロットマシンなどを設置していると該当する可能性があります。
特定遊興飲食店営業は、深夜の時間帯に営業しており遊興をさせて、なおかつ酒類の提供をしている飲食店のことです。深夜というのは具体的には午前0時から午前6時までの間の時間帯を指します。遊興に関しては、店舗側が積極的に働きかけて行う場合が該当し、スペースを提供するだけの場合には該当しません。
主にライブハウスやダーツバーなどが該当する可能性があります。通常の飲食店であれば、深夜の時間帯に営業していても該当する可能性は低いです。
深夜酒類提供飲食店営業は、深夜の時間帯に酒類を提供している飲食店が該当します。深夜の具体的な時間帯は特定遊興飲食店営業と同様に午前0時から午前6時までです。特定遊興飲食営業とは異なり、遊興をさせるサービスは提供できません。また、レストランやラーメン店、牛丼店など主食の提供をメインとする飲食店の場合には対象外です。
主に居酒屋やバーなどが深夜酒類提供飲食店営業に該当します。
性風俗関連特殊営業は、いわゆる性風俗店などのことです。飲食店の場合には関係がありません。
開業予定の飲食店が風営法の規制対象に該当する場合には、開業前にあらかじめ許可または届け出を済ませておかなければなりません。営業の種類により「許可」が必要なものと「届け出」が必要なものに分かれています。
許可が必要な営業は風俗営業に該当する営業と特定遊興飲食店営業です。許可申請書を作成して、警察署の窓口に提出します。その後、記載内容をもとにして公安委員会で審査が行われ、問題なければ2カ月程度で許可が下ります。
許可申請書の様式は決まっていますが、警視庁や各道府県警察のホームページから用紙をダウンロード可能です。
許可が必要な行為は一般的に禁止されている行為です。許可申請を行い、許可が下りることで禁止が個別に解除されます。そのため、許可申請の審査は厳しめに設定されているのが特徴です。申請書を提出しても、許可が下りない場合もあります。
許可申請書類は、飲食店を開業予定の人が自分で作成することも可能です。しかし、図面などを作成しなければならないケースもあり、内容的にかんたんなものではありません。そのため、専門家に依頼して作成してもらうのが一般的です。
飲食店で風営法の規制により届け出が必要なのは、深夜酒類提供飲食店営業に該当する場合です。営業開始届出書を作成して、警察署の窓口に提出します。
許可申請書と同様に、警視庁や各道府県警察のホームページから用紙をダウンロード可能です。
届け出の場合には、許可申請のような内容の審査が行われるわけではありません。決められた形式にもとづいて、記載されていれば受理されて手続きが完了します。
飲食店を営業する上で、気付かない間に違反行為をしてしまっているケースもあります。風営法には罰則が設けているため、違反行為をしてしまわないように十分に注意しなければなりません。それでは、よくある違反行為と罰則の内容について見ていきましょう。
風営法で規制対象になっている業態で飲食店を営業しており、必要な許可や届け出を済ませていないケースがよくあります。許可を得ていない、または届け出をしない理由はさまざまです。
たとえば、許可申請が下りなかったというケースもあれば、手続きが面倒だったというケースがあります。そして、自身が経営する店舗が風営法の規制対象になることを知らなかったという事例も多いです。知らなかった場合でも無許可や無届けは違法として扱われてしまうため、十分に注意しましょう。
風俗営業と特定遊興飲食店営業に関して、無許可や無届けでの営業は、風営法第49条により罰則が規定されています。2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科という内容です。
(営業の許可)
第三条風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第一項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
2公安委員会は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があると認めるときは、その必要の限度において、前項の許可に条件を付し、及びこれを変更することができる。
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 | e-Gov法令検索
名義貸しというのは、すでに風営法上の許可や届け出の手続きを済ませている人が他人に名義を貸して経営させることです。
風営法第11条で禁止されており、第49条に罰則が規定されています。罰則の内容は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科です。
名義貸しは貸した側も借りた側も違法として扱われます。新規で飲食店の開業をする際などに、名義貸しの話を持ちかけられたとしても、乗ってしまわないように注意しましょう。人によっては、名義貸しが違法であることを知らずに、話を持ちかけてくる可能性があります。
また、名義貸しが発覚した場合には、刑事罰の他に許可の取り消しや営業停止などの処分の対象にもなります。
(名義貸しの禁止)
第十一条第三条第一項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に風俗営業を営ませてはならない。
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 | e-Gov法令検索
風営法22条には、店側が20歳未満の客に対して、酒類とタバコの提供することを禁止する内容が規定されています。もし、20歳未満の客に酒類やタバコを提供してしまうと、罰則が適用される可能性があるため注意しましょう。罰則は風営法50条に規定されており、1年以下の懲役もしくは100万円以下またはこれらの併科です。
見た目で20歳以上かどうかの判断が難しい場合には年齢確認をしましょう。また、20歳以上の客と20歳未満の客が一緒に来店している場合にも要注意です。20歳未満の客が飲酒や喫煙をしてしまわないようにする必要があります。
風営法第22条には、18歳未満の者に客の接客をさせることを禁止する内容の規定も置かれています。1号営業の許可を得ている場合でも、接待の仕事に従事できるのは18歳以上の従業員のみです。違反した場合には、風営法50条に規定されている1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科が適用される可能性があります。
18歳未満の従業員を雇っていない店舗であれば、違反してしまう心配はありません。従業員を雇う際に年齢を確認しないまま仕事に従事させると、意図せず違反してしまう可能性があります。短期のアルバイトなどを雇う場合にも、きちんと年齢を確認しておきましょう。
18歳未満の従業員を雇用している場合には、深夜労働をさせてしまうのもよくある違反行為です。風営法22条に18歳未満の者を深夜に接客の業務に従事させることを禁止する内容の規定が置かれています。50条に罰則が規定されており、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科という内容です。
なお、ここでいう深夜というのは、午後10時から午前6時までの間の時間帯を指します。特定遊興飲食店営業や深夜酒類提供飲食店営業の基準となる深夜の時間帯とは異なるため注意しましょう。
客引きつきまといに関しても、風営法22条で禁止する旨の規定が置かれています。店舗の前で通行人に対して呼び込みなどをする際に、通行を妨げるなどの行為をすると該当してしまいます。風営法52条に罰則が規定されており、6カ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金または併科という内容です。他の違反行為よりやや軽めですが、違反してしまわないように注意しましょう。
(禁止行為等)
第二十二条風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一当該営業に関し客引きをすること。
二当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三営業所で、十八歳未満の者に客の接待をさせること。
四営業所で午後十時から翌日の午前六時までの時間において十八歳未満の者を客に接する業務に従事させること。
五十八歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること(第二条第一項第五号の営業に係る営業所にあつては、午後十時から翌日の午前六時までの時間において客として立ち入らせること。)。
六営業所で二十歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。
2都道府県は、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、条例により、第二条第一項第五号の営業を営む者が午前六時後午後十時前の時間において十八歳未満の者を営業所に客として立ち入らせることを禁止し、又は当該営業を営む風俗営業者が当該時間において十八歳未満の者を営業所に客として立ち入らせることについて、保護者の同伴を求めなければならないものとすることその他必要な制限を定めることができる。
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 | e-Gov法令検索
風営法違反の検挙件数は、令和5年には882件あり人員数では1,029人でした(※)。ここ数年で人員数は微増していますが、件数は減少傾向にあります。違反で比較的多いのは、主に無許可営業や客引き・つきまといなどです。
※出典:警察庁生活安全局保安課「令和5年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」
風営法違反で逮捕された場合には、初犯であれば実刑になることは稀で、略式手続で罰金刑に処せられるケースが多いです。しかし、それでも数日程度は警察の留置場や拘置所に勾留されてしまう場合があります。違反行為をしてしまわないように十分に注意が必要です。
刑事処分のほかに、営業停止や指示などの処分が下される行政処分も存在します。
飲食店で深夜の時間帯に営業しているところや酒類を提供しているところだと、風営法の規制対象になる可能性あります。飲食店を開業する際には、営業方法や店内の設備などが風営法の規制対象に該当しないかどうか今一度確認してみましょう。必要な許可や届け出などの手続きは確実に済ませた上で営業することが大切です。よくある違反行為についても十分に注意しておきましょう。
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