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独占禁止法とはよく耳にする法律ですが、具体的にどのような内容かご存じでない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、独占禁止法の概要や罰則などについてご紹介します。経済活動を健全化するための重要な法律なので、その仕組みについても解説します。
独占禁止法とは、企業が自由で公正な競争を行うために企業が守るべきルールを定めている法律です。具体的には、私的独占の禁止や不当な取引制限の禁止、事業者団体の規制などのルールが挙げられます。
私的独占行為とは、事業者が競争相手である他の事業者を市場から排除したり、新規事業者の参加を妨害して市場を支配したりすることです。たとえば、低価格で製品を販売して競争相手である他社の事業を阻害する行為が挙げられます。
また不当な取引には、カルテルや入札談合などが該当します。カルテルとは、本来それぞれの事業者が決めるべき内容を複数の事業者が連絡を取り合うことで、共同で製品価格や販売・生産数量など決める行為を指します。入札談合とは、入札参加者の企業同士が国・地方自治体の公共工事・物品の公共調達などの入札において、受注企業や金額をあらかじめ決めて競争を制限することです。
さらに事業者団体の規制とは、事業における新規参入など制限するものです。独占禁止法は、それぞれ以下のように禁止されています。
引用元:独占禁止法とは?規制内容や罰則を分かりやすく解説!|契約ウォッチ
一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(8条1号) 価格制限、入札談合、カルテル、事業者が行う私的独占などに相当するものを禁止 6条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること(8条2号) 事業者団体が、外国の事業者または事業者団体と不当な取引制限または不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定、国際的契約を締結することを禁止 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること(8条3号)
※1号違反に至らない競争制限行為の禁止事業者団体へ加入せずに事業活動を行うことが困難な状況下において、合理的な理由なく団体への加入制限を行うこと、 事業者団体が厚生事業者の取引先に対して非構成事業者との取引を拒絶させること、 生産設備を買い取り廃棄するなど、事業者団体が非構成事業者の事業活動に直接的に介入することなどを禁止 構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること(8条4号)
※1号違反に至らない競争制限行為の禁止カルテルに該当するものの、構成事業者の市場シェアが小さい場合や、価格制限の対象となる製品が構成事業者の取扱製品の一部のみに係る場合など 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること(8条5号) 事業者(構成事業者に限らない)に不公正な取引方法に該当する行為を行うよう働きかけることを禁止
独占禁止法を補完する法律として、下請法(下請代金遅延等防止法)があります。取引において弱い立場である下請事業者が親事業者からの搾取的行為は、独占禁止法ではカバーしきれません。そこで親会社が行う下請事業者への不当な扱いを禁止しているのです。
具体的には、納品物の受領拒否・不当な返品、下請代金の遅延、不当に品物の納入をやり直させるなどの行為が対象となります。
独占禁止法に違反した場合には、以下のような罰則が課せられます。
・排除措置命令
・課徴金制度
それぞれ詳しく解説します。
独占禁止法違反を行った事業者に対して、公正取引委員会は行政処分として違反行為の排除または必要な措置を命じることができます。排除措置の目的は違法行為を中止させて市場の競争を健全な状態にすることであり、再発を防止する狙いもあります。
排除措置の具体例には、違反行為の差止や当該行為を中止しているかの確認が挙げられます。また再発防止のために、従業員や取引先への徹底した周知も行います。また公正取引委員会に対して、経過状態について報告するといった付属的措置も行われます。
課徴金制度とは、公正取引委員会が課徴金の対象である事業者に対して、課徴金の納付を命じられる仕組みを指します。課徴金の金額は、違反行為を行っていた期間の売上などに事業者の規模に応じた算定率を掛けて算出します。なお、算定率は独占形態によって1~10%と異なります。
犯則調査とは、刑事手続きの前段階的な調査です。犯則調査では、独占禁止法違反の違反被疑事件において、当該事件を更生保護委員会が調査します。裁判官の許可状があれば、立ち入り検査や関係者への事情聴取などの調査が行えます。
独占禁止法違反によって被害を受けた側には、民事救済として差止請求と損害賠償請求が行えます。まず差止請求では、独占禁止法の違反者によって著しい損害を受けたり、そのおそれがあったりする場合には差止を裁判所に請求できます。
また損害賠償請求では、被害を受けた者に対して事業者が無過失でも賠償責任を負う場合があります。この無過失の損害賠償を負う場合とは、事業者が私的独占行為をした場合や価格カルテルや入札談合行為などの不当な取引制限を行った場合が該当します。他にも事業者が不公正な取引方法を用いた場合や、事業者団体が独占禁止法違反である価格カルテルを行った場合も責任を負います。
独占禁止法は、企業や事業者だけではなく消費者に大きく関わっています。なぜなら市場が独占状態になって競争がなくなってしまったら、企業はコストダウンの努力をしなくなり、価格も企業に有利な金額に設定できるようになります。そのため、消費者は企業の言い値で製品を購入せざるを得なくなります。
また公共工事では、業者間の話し合いだけで業者が決まってしまうので、本来ならもっと安く工事ができるのに不当に高い工事費用を払う可能性があります。こうなると公共工事は税金で行われるので、税金を無駄に使われることになってしまいます。
さらにメーカーが市場を独占してしまえば、競争がなくなるので企業努力による製品の質の向上を行わなくなるでしょう。そのため、消費者の生活の質も向上しなくなります。
次に、実際に健全な経済活動を阻害した独占禁止法の違反例をご紹介します。まずパソコン部品製造の大手メーカーであるA社は、A社製CPUを多く買ってもらうことを条件に国内パソコンメーカー5社に、資金提供やリベートを約束して他社CPUを使わせないようにした事例があります。このような行為は、私的独占に該当します。
また、旅行会社5社が中学校の修学旅行に掛かる宿泊費などその他費用の額の基準を設ける事に合意した事例もあります。そのため当該中学校はどこに旅行を頼んでも、取り決まっている基準よりも高い旅行費用がかかることになりました。この行為は、旅行業務市場の競争を制限したカルテルに該当します。
他にも市役所発注の電気設備工事の競争入札で、長期で受注の金額が落ちないようにと参加業者が共同して、受注業者をあらかじめ決めていた事例もあります。本来ならば自由競争によって安く落札できていたはずです。このような行為は、入札談合になります。
このように独占禁止法で違反する行為を行うと、消費者や行政などに不利益を及ぼす可能性がかなり高いのです。
独占禁止法は、市場競争による適切な値段設定や製品の質の向上を目的として定められました。しかし、経済今では経済活動はグローバルに広がっていますので、独占禁止法は国際的な問題として新しい事例が増えていくことが予測されています。また独占禁止法の内容は国によって異なりますので、海外で活動する企業は適切な知識を持って市場に進出する時代となっていると言えるでしょう。
独占禁止法とは、企業が自由で公正な競争を行うために企業が守るべきルールを定めている法律です。またこの法律は、経済活動を健全化させるための重要な規範とも言えます。
なぜなら、企業は企業努力によって安くて質の高い製品を提供して売上を出そうとします。一方製品を購入する消費者も、様々な企業から自分のニーズに合った製品を選ぶことが可能になります。このように、独占禁止法は事業者だけに関わる法律ではなく、消費者の生活にも関わる重要な法律なのです。
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