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自社でサーバールームを設けて管理するには、膨大な手間やコストがかかります。さらに、事業継続計画(BCP)やサーバーの専門知識を持った人材の確保・育成も必要となり、多くの課題が存在します。そこで一つの選択肢として、サーバーを外部に委託する方法があります。それがレンタルサーバーやクラウドサーバーです。
本記事では、レンタルサーバーとクラウドサーバーの違い、それぞれのメリット・デメリット、そして最適な選択をするためのポイントについて詳しく解説します。企業のIT部門や情報システム部門でサーバー管理を担当する方々にとって、有益な情報となることを願っています。ぜひ参考にしてください。
自社サーバーとは異なり、外部にサーバーを設置するという点で、レンタルサーバーとクラウドサーバーには共通点があります。ここでは、それぞれの概要と相違点について詳しく説明します。
レンタルサーバーは、ホスティングサービスとも呼ばれ、サーバー事業者が用意したサーバーを法人や個人に貸し出すサービスです。
通常、レンタルサーバーは物理的に存在するサーバー(物理サーバー)を複数の法人または個人が共有して利用する形態で提供されます。この形態を共用サーバーと呼びます。なお、1台のサーバーを1つの法人または個人が専有する場合は専用サーバーと呼ばれます。
共用サーバーは「シェアハウス」、専用サーバーは「戸建住宅」と捉えるとわかりやすいかもしれません。
クラウドサーバーも、サーバー事業者が提供するサービスですが、複数の仮想サーバーを1台または複数の物理サーバー内に構築して提供する点で異なります。
仮想サーバーとは、物理サーバー上で複数のオペレーティングシステム(OS)を稼働させ、ユーザーごとに独立した環境を提供するものです。
物理サーバーを複数の法人や個人で共有する点では共用レンタルサーバーと似ていますが、クラウドサーバーでは各仮想サーバーが独立したOSを運用できるため、専用サーバーに近い利用が可能です。つまり、クラウドサーバーを「マンション」とたとえると、その違いがわかりやすいでしょう。
レンタルサーバーとクラウドサーバーにはそれぞれメリットとデメリットがあり、理解が不十分だと最適なサーバーを選択できません。ここでは、レンタルサーバーを利用する際の主なメリットを説明します。
サービスの形態によりますが、自社サーバーやクラウドサーバーと比較して、レンタルサーバーの運用コストは一般的に安価です。
自社サーバーの場合、サーバールームの管理コストやそれを管理する人材のコストが発生します。また、クラウドサーバーでは、個別のCPUやメモリを利用できる分、レンタルサーバーよりも高額になることがあります。
ただし、レンタルサーバーでも専用サーバーを利用する場合、クラウドサーバーよりもコストが高くなることがあります。
レンタルサーバーでは、サーバーの保守運用管理の大部分をサーバー事業者が担当するため、自社の負担が軽減されます。その結果、必要な時にすぐに運用を開始できるのも大きな利点です。
自社サーバーの場合、保守から運用管理まですべて自社で行う必要があります。クラウドサーバーでは、ハードウェアの管理は事業者が行いますが、ソフトウェアの管理は自社で行うことが多く、場合によってはOSやミドルウェアの管理も必要となります。
サーバーの保守運用管理は専門知識を持つ技術者が必要であるため、人材の採用や教育にかかるコストを低減できるのもレンタルサーバーの大きなメリットと言えるでしょう。
レンタルサーバーを利用するうえで生じる主なデメリットは次のとおりです。
レンタルサーバーは、すぐに使い始められる環境が構築されている分、導入時に初期費用が発生することが多いです。一方、クラウドサーバーはサーバー構築や運用を自社で行う必要がある分、初期費用に関しては無料としているサービスが多いのが実情です。
カスタマイズの自由度が低いこともレンタルサーバーのデメリットの1つです。サーバー事業者がOSの選択やインストール、アプリケーションの導入、その他ソフトウェアやシステムのインストールを行うため、ユーザー自身でサーバーをカスタマイズする余地が限られています。
レンタルサーバーはあらかじめスペックが決定されており、契約後に利用者が必要に応じてスペックを原則として変更できません(※)。季節的な需要や繁忙期・閑散期に応じた柔軟なスペック変更が難しい点も、レンタルサーバーのデメリットです。
※スペックを変えるには、契約プラン自体を変更するなどの手間が必要です。
共用サーバーでは、自分たちと同じサーバーを使っている他のユーザーがサーバーに高負荷をかけることで、自分たちのサーバーの動きも悪くなってしまう場合があります。
前述したように共用サーバーは、シェアハウスのようなものです。たとえば、一人のユーザーが長時間キッチンを使ってしまえば、他のユーザーはその間キッチンを使えません。また冷蔵庫を自分たちの食材だけで埋めてしまえば、他のユーザーは冷蔵庫を使えなくなってしまうでしょう。
共用サーバーは、複数ユーザーが1台の物理サーバーを共用するため、自分たちが高負荷をかけずとも、ほかユーザーが高負荷をかければ、動きは遅くなります。
前述したようにレンタルサーバーは、OSやアプリケーション、ソフトウェア、システムなどのほとんどをサーバー事業者が用意します。セキュリティ対応ソフトも同様で、自分たちで用意することはできません。
事業者によっては、最新のセキュリティ対策が十分に施されていない場合もあり、セキュリティリスクが生じる可能性があります。事業者選びの際には十分な調査が必要です。
レンタルサーバーに続き、ここではクラウドサーバーのメリットをご紹介します。
初期導入費用がかからないケースが多いのもクラウドサーバーの大きなメリットです。多くのクラウドサーバーは、使った分だけ請求される従量課金制を採用しており、導入時に費用を抑えることが可能です。
サーバー事業者によっては定額制を提供している場合もありますが、クラウドサーバーは基本的に自社でサーバーを構築するため、初期費用を無料にしていることが多く、コストを抑えながら導入を進められます。
クラウドサーバーは、ユーザーがサーバーの構築やミドルウェア、ソフトウェアの導入を自分たちで進める必要があります。その代わり、自分のニーズに合わせて自由にカスタマイズが可能です。レンタルサーバーは契約後すぐに運用を開始できる利点がありますが、必ずしも自社の目的に最適な仕様であるとは限りません。しかし、クラウドサーバーであれば、高いカスタマイズ性を活かすことで、無駄を省き自社に最適なサーバーを構築できます。
クラウドサーバーのもう一つの長所は、事業拡大や需要急増時にスペックを柔軟に変更できる点です。
レンタルサーバーは事前に設定されたスペックで運用されます。自社サーバーではサーバールームの拡張で対応は可能ですが、閑散期になると余剰リソースが無駄となりコストが増加することがあります。
しかし、クラウドサーバーならば需要が高い時期にスペックを増強し、需要が落ち着いた際には元に戻すことができるため、無駄なコストを抑えることが可能です。
次に、クラウドサーバーの主なデメリットを説明します。
一般的にクラウドサーバーの運用コストは、レンタルサーバーの専用サーバーに比べれば割安なものの、共用サーバーに比べると割高です。
クラウドサーバーは物理サーバーをそのまま分割して利用するレンタルサーバー(共用サーバー)に比べ、物理サーバーを仮想化するコストが追加されます。そのため、スペックが同じであっても、クラウドサーバーの方が運用コスト増になるケースがほとんどです。
クラウドサーバーはカスタマイズ性が高い反面、自社に合わせたサーバーを構築するための知識が求められます。そのため、サーバーを構築できる社員が不在の場合、クラウドサーバーの運用は困難になってしまうでしょう。
社内に専門スタッフがいない場合、外部委託を考慮する必要があるため、結果的にクラウドサーバーの選択が難しくなることもあります。
クラウドサーバーは「マンション」にたとえられるように、レンタルの共用サーバー(「シェアハウス」)よりは他ユーザーの影響が少ないですが、専用サーバー(「戸建住宅」)と比べると、その影響を受ける可能性があります。
同じ物理リソースを使用しているため、他のユーザーが一時的に高負荷をかけた場合、自身のサーバーのパフォーマンスにも影響が出る可能性があります。
ここまで紹介したレンタルサーバーとクラウドサーバーのメリット・デメリットを踏まえ、外部サーバーを選択する際のポイントを解説します。
クラウドサーバーは、サーバー構築に関する知識を必要とするケースが多いため、社内にサーバー構築を行える人材がいない場合は、レンタルサーバーがおすすめです。
ただし、サーバー事業者によっては基本的なソフトウェアのインストールができれば運用可能な場合もあるので、事前に確認を行いましょう。
レンタルサーバーは初期導入費用がかかりますが、長期的には運用コストを抑えられる傾向があります。したがって、長期的なコスト削減を目指すのであれば、レンタルサーバーが適していることが多いです。ただし、専用サーバーを選ぶ場合はクラウドサーバーより高コストになる可能性もあるため、目的に応じて慎重に選択してください。
料金形態についても考慮が必要です。従量課金制は使った分だけ支払う形式ですが、予測が難しく繁忙期に予想以上のコスト増となるリスクがあります。一方、定額制は使用量が少ない場合でも一定の料金が発生しますが、総合的に見ればコスト削減につながることがあります。年間計画が立てやすくなるメリットもあるため、検討しましょう。
クラウドサーバーは初期費用がかからないことが多く、一定期間のみ外部サーバーを必要とする場合に最適です。通常は自社サーバーで問題なく運用可能だが、繁忙期のみ容量を増やしたい、または不定期でアプリケーション開発を行う企業には、クラウドサーバーが便利です。
クラウドサーバーであれば、自社システムとの連携を重視したサーバーを選択できます。自分たちで自由にカスタマイズできるため、自社システムとの連携を想定しているのであれば、レンタルサーバーよりもクラウドサーバーを選択するのがおすすめです。
自社サーバーを外部サーバーに移行する際には、レンタルサーバーとクラウドサーバーのいずれかを選択する必要があります。レンタルサーバーには共用と専用があり、それぞれ特徴があります。まずは自社の利用目的を明確にし、それに基づいて最適なサーバーを選択することが重要です。
一般的にコストを抑える選択肢としてレンタルサーバーが考えられますが、カスタマイズの柔軟性が低かったり、急な需要増に対応できなかったりすることがあります。そのため、コストだけでなく長期的なニーズや状況を考慮しながら、最適なサーバーを選ぶことが大切です。
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