電子帳簿保存法の適用によって、帳簿や会計関連の書類を電子保存することが義務付けられます。さまざまな面での対応が求められますが、特に領収書やレシートは日々の業務で扱いますので、調整が必要となります。具体的にどのような形で処理すべきなのか、電子保存するメリットとしてはどんなものがあるかなどを考察しましょう。
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目次
電子帳簿保存法の改正により電子保存に
電子帳簿保存法が2022年に改正され、電子取引を行う事業者は帳簿などの書類を電子保存する必要が生じました。そのため、個人事業主も含め、ほぼすべての事業者が対応しなくてはなりません。紙ベースで発行されることの多い領収書やレシートについて、どのように対応すべきかを確認します。
領収書やレシートも電子保存の対象
電子帳簿保存法では、取引を証明する書類について電子保存をすることと定めています。仕入れ調達や消耗品購入などを経費として処理するのであれば、領収書やレシートも当然、取引証明書類に属します。そのため、これらも電子保存をする必要があるのです。
電子保存とは、対象書類を電子データとしてパソコンやハードディスク、クラウドなどに保存しておくことを指します。たとえ紙ベースのレシートを受け取っているとしても、それを電子データ化して保存しなければならないのです。
ただし、電子取引がまったく行われていない事業については、電子帳簿保存法の対象外となっています。帳簿も経費に計上する購入品などの書類などもすべて紙の書類であれば、以前と同じように対応を続けることが可能です。と言っても、今ではネットショップでの購入など、多くの事業者が電子取引をしていますので、電子取引がまったくないというケースはそれほど多くないでしょう。
2023年12月31日以降は義務になる
電子帳簿保存法が制定された当初、こうした書類の電子保存は選択制でしたが、改正によって義務化されています。そのため、電子取引の実績があれば、どの事業者もこの制度に対応しなくてはなりません。
法改正は2022年に行われていますが、猶予期間が設けられています。すぐに必要なシステムを備えたり、現場での作業を完全に切り替えたりするのは実質的に難しいからです。この猶予期間は2023年12月31日までとなっていて、それ以降は原則としてすべての事業者が義務化対象となります。
それだけに、2023年中に体制を整えておく必要があるわけです。
領収書やレシートを電子保存する方法
領収書やレシートの保存方法についても、電子帳簿保存法で要件が定められています。こうした要件をクリアしないと、仮にデジタル化して保存したとしても法的には不十分となってしまいますので気を付けましょう。
電子帳簿保存法では、帳簿に関する保存方法の指定のほか、スキャナ保存と電子取引データの保存という3種類に分けて、規定を設けています。これらのうち、領収書やレシートはスキャナ保存と電子取引に関係しています。
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スキャナ保存
スキャナ保存は、領収書やレシートなど、紙に印刷された形で受け取った場合を想定した方法です。当然、紙のままでは電子保存はできませんので、スキャナを使って読み取るか、もしくは撮影して、そのデータを保存します。データの形式は通常出力できる形式であれば良いとなっており、一般的にはPDF形式を採ることが多いです。このルールに従えば、撮影の場合はJPGなどの画像データでも構わないということになります。
スキャナ保存では、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、書類が発行されてから最長で2カ月+7営業日以内に入力しなければならないという、期間に関する制限があります。後でやろうと作業を後回しにすると、制限期間を超えてしまう恐れがあるので気を付けましょう。
また、読み取り解像度は200dpi以上、カラー画像でのスキャンもしくは撮影が求められています。そして、削除や訂正をした場合の確認、および保存作業をした人の確認ができるようにしなくてはなりません。
さらに、それぞれの領収書やレシートと対応する帳簿の関連性がわかるようにする必要があります。どこにどんな書類があるかをすぐに見つけられるように、検索機能を設けておくことも要件となっています。
もう1つ重要なのが、タイムスタンプの付与です。改ざんを防ぐ目的で、入力・保存をする時にタイムスタンプを押す必要があります。タイムスタンプは外部のシステムを使うことが求められており、付与した日から変更が加えられていないことを証明します。
電子取引データ
紙に印刷されていない形で領収書を受け取ることもあるはずです。ECサイトで購入した商品の領収書をWEB上からダウンロードしたり、取引先からメールで添付されたりするケースです。こうした領収書は電子データとして受け取っていますので、そのまま保存することができます。
保存に関しては一定の要件があります。まず改ざん防止措置をしなければなりません。具体的には、訂正や削除などの記録を残せるシステムを使う方法、訂正や削除を防止するための事務処理規定を備える方法、タイムスタンプを付与する方法があります。この点については、上記のスキャナ保存の方法と統一しておくと、効率よく作業できるでしょう。
また、一定の売上高がある事業者については、取引日付や金額、取引先などの条件で検索できるように、検索機能を設けることも必要となります。たとえば、ファイルの中に別表でリストを作るという形を採ることができますし、もしくはファイル名自体にこうした情報を記載する方法も認められています。
保存期間
電子データとして保存した領収書やレシートは、税法によって7年間の保管が義務となっています。ただし、個人事業主の場合は5年間の保存期間とされています。この保存期間については、以前の紙の書類についての規定と変わりがありませんので、特に大きな調整をする必要はないでしょう。
紙の書類は破棄可能
もし電子保存をしているのであれば、原本となる紙の領収書やレシートは破棄することができます。これは、メールなどで添付された領収書とは別に、紙に印刷したものを受領したというケースだけでなく、紙のみで受領し、それをスキャン保存した場合でも同じです。つまり、電子保存のみにすれば、紙の書類は一切保管しなくても良いことになります。
ただし、電子取引がないために電子保存しないという選択肢を採る場合には、当然紙の書類を所定の年数、保管しなければなりません。また、電子保存している場合でも、入力の制限期間を過ぎてから保存してしまった場合には、データに加えて紙の原本の保管も求められていますので、注意しましょう。
領収書やレシートを電子保存するメリット
ここまで見てきたように、領収書やレシートの電子保存は、電子帳簿保存法によって義務付けられた処理です。これは単に法律に従わなければならないというだけでなく、業務上いくつものメリットをもたらすものでもあります。どんなメリットがあるのかを確認しておくことで、早めに移行する動機づけにすることができるでしょう。
紛失防止
電子保存では一切の書類をパソコンやクラウドに保管することになり、紙の書類は保管不要となります。そのため、書類の紛失を防げるというメリットがあります。帳簿類などは通常A4サイズですし、常にまとめて処理しますので、紛失することは多くないかもしれません。しかし、レシートなどは小さな紙であり、現場では移動が多い書類です。そのうちに紛失してしまうこともしばしばで、経理担当者の頭を悩ませる原因となります。
その点、すぐに領収書やレシートをスキャナ保存すれば、紛失のリスクをかなり減らすことができます。また、処理後の保管でもファイルから落ちてなくなってしまうなどのアクシデントも起きることはありません。特にクラウドへ保存をしておけば、自社で使っているパソコンが故障したなどのトラブルが生じても、データ自体は消えることはないので安心です。
不正行為の防止
電子帳簿保存法では、領収書やレシートを保管する場合、タイムスタンプを付与したり、訂正の履歴が残るシステムに入れたりしなければなりません。これは、改ざんや不正削除を防ぐのに役立ちます。紙ベースの保管方法だと、記帳した後でも、ファイルから抜き取られる恐れや巧みに書き換えられるリスクが生じます。電子データも、本来は改ざんが容易で不正のリスクが高いのですが、電子帳簿保存法はそういった不正を防止する措置がされたもののみが適用されるため、健全な経理処理が期待できるわけです。
書類の改ざんは、企業にとってさまざまなリスクを生み出します。場合によっては、税務調査の際に発覚して追徴課税を受けたり、企業の評判を落としたりする原因となります。電子帳簿保存法に従って電子保存をすればこうしたリスクを軽減できるので、メリットは大きいでしょう。
保管の効率化
紙ベースの書類を破棄できることは、保管スペースの節約につながります。企業であれば7年間分の書類をすべて保管しなければなりませんので、そのスペースを確保するだけでも大変になるものです。電子保存をすればオフィスを広く使えるので、場合によってはより狭いオフィスに移動して、固定費を下げることも可能になります。
また、過去の書類を見つけるのも非常に楽になります。紙の書類だといちいちファイルを開いて探す必要がありますが、電子保存していれば検索機能を使ってすぐに見つけられます。しかも、クラウド保存をしておけば、どの場所にいてもすぐに検索することができます。こうした業務の効率化も、大きなメリットと言えるでしょう。
会計処理の効率化
領収書やレシート処理の電子化は、会計部門にとって大きなメリットとなります。経費申請をする社員がスマホでレシートを撮影し、それをシステム上にアップロードして、そのまま経費処理することもできるからです。受け取ったデータをそのまま記帳し、保管までできるので、会計処理が格段に効率化されます。
電子帳簿保存法への対応を早急に進めよう
領収書やレシートの電子保存は、電子帳簿保存法への対応というだけでなく、業務効率化などのさまざまなメリットがあります。電子保存の正しい方法と条件を確認して、できるだけ早く対応することを検討しましょう。
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