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企業が事業を行うにあたって作成した契約書には、法令によって保管期限が定められています。契約書の適切な管理のためには、それぞれの契約書の保管期限を理解することが重要です。
会社法第432条には、適切な会計帳簿の作成と保存についてのルールが定められています。これによると、株式会社の「事業に関する重要な資料」に該当する契約書については10年間の保管期限が定められています。
引用
会社法第432条第2項
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
法人税法は企業が行う納税のルールを定めた法律です。この法人税法に沿った実務上の細かな取り決めをまとめたものに「法人税法施行規則」があります。この法人税法施行規則の第59条には、契約書を7年間保管する義務が定められています。
この7年間の期間の起算日は契約書の作成日ではなく、「作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日」とされているため注意が必要です。
電子帳簿保存法は、電子データとして作成した帳簿や契約書の保管についてのルールを定めた法律です。契約書を電子的に作成、保管する場合であっても、保管期限に関するルールは紙の場合と同じです。先に解説したように、会社法で10年、法人税法で7年の保管期限が設定されています。
上で解説した法令やその他の法令によって、契約書の種類に応じた保管期限が定められます。単一の契約書が複数の分類に合致することもありますが、その場合は長い保管期限に従うことになります。
廃棄物の処理に関するルールを定めた廃棄物処理法に従って、実務的なルールを定めているのが「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」です。この規則では、産業廃棄物を処理することを依頼する契約書の保管期限を5年と定めています。この保管期限の起算日は、契約が終了した日となります。
契約書を納税額の根拠となる計算のための資料と考えると、法人税法などに規定された7年間の保管義務が該当します。事業上の取引内容を表す契約書は、請求書や領収書などの書類と併せて7年間保管する必要があります。
各事業年度で欠損金が生じて、欠損金の繰越控除が適用された場合、法人税法などに規定された保管期限が10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)に延長されます。
また、会社法で定められた、株式会社の事業に関する重要な資料に該当する契約書の保管期限も10年です。
契約書の他にも、企業が事業を行っていく過程で様々な書類が作成されます。ここでは、それらの書類について保管期限ごとに解説します。
5年間の保管期限が定められている書類には次のようなものがあります。
会社法第442条に計算書類を本店に備え置く義務を定める規定があり、その起算日は「定時株主総会の日の一週間(取締役会設置会社にあっては、二週間)前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)から五年間」とされています。
計算書類及び付属明細書そのものの保管期限は、会社法第435条で作成した時から10年と定められています。
金融商品取引法第25条では、これらの書類を内閣総理大臣に提出した日から5年を経過する日までの保管することが定められています。
身元保証ニ関スル法律では、その有効期間の上限を作成日から5年としています。
労働基準法及び労働安全衛生法の規定によって、雇い入れ時の健康診断結果や定期健康診断の結果を5年間保管しておかなければいけません。
電離放射線健康診断や石綿健康診断などの特殊健康診断の結果は、それらの対象業務の影響が長期にわたることから5年を超える保管期限が設定されています。
【例】
法人税に関する法令によって、経理関係書類には7年間の保管義務が設定されています。
帳簿類の保管期限の起算日は「その閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日」とされています。確定申告書の提出期限の延長の特例を受けた場合は、起算日も、その延長に係る月数分後ろにずれます。
帳簿の元になる現金収受の記録となる書類も7年間保管する必要があります。これらの書類の保管期限の起算日は、その書類の作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日です。
会社法では、株式会社の事業の状況に関する重要書類について10年間という長い保管期限を定めています。
会社法第432条に、株式会社は会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及び事業に関する重要な資料を保管する義務が規定されています。
会社法第435条によると、株式会社は計算書類等を作成した日から10年間それらを保管する必要があります。
株主総会や取締役会、監査役会の議事録は、それらの会が行われた日から起算して10年間保管する義務があります(会社法第318条、371条、394条)。
ここまでに説明したものを表にまとめました。
書類 | 保管期限 | 根拠法令 |
---|---|---|
各事業年度の計算書類及び事業報告などの本店保管分(監査報告、会計監査報告を含む) | 5年 | 会社法第442条 |
有価証券届出書、有価証券報告書 | 5年 | 金融商品取引法第25条 |
従業員の身元保証書や誓約書 | 5年 | 身元保証ニ関スル法律第1条、2条 |
従業員の一般的な健康診断結果 | 5年 | 労働基準法第109条 |
仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳などの帳簿 | 7年 | 法人税法施行規則第59条 |
帳簿に記載された取引に関する書類(領収書、請求書、契約書など) | 7年 | 法人税法施行規則第59条 |
株式会社の会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など) | 10年 | 会社法第432条 |
株式会社の計算書類等(貸借対照表、損益計算書など) | 10年 | 会社法第435条 |
株主総会などの議事録 | 10年 | 会社法第318条、371条、394条 |
個人事業主の場合は、これまでに解説した会社法や法人税法が適用されません。そのため、契約書などの事業上重要な書類の保管期限には異なるルールが適用されます。
個人事業主の場合、青色申告と白色申告で書類の保管期限が異なりますので、ここではそれぞれの場合に分けて解説します。
青色申告の場合、事業上の取引内容を記録した帳簿類を7年間保管する義務があります。帳簿類に含まれるのは、売上帳、仕入帳、現金出納帳、仕訳帳、総勘定元帳、固定資産台帳などがあります。決算書類(貸借対照表、損益計算書など)の保管期限も同じく7年間となっています。
現金預金取引等関係書類(領収書、預金通帳など)も7年保管が基本ですが、前々年度の所得が300万円に満たない場合は、5年保管となります。
契約書や見積書、請求書、領収書といった取引の内容を示す書類の保管期限は5年間です。
白色申告を行う個人事業主の場合は、収入や支出の状況を記載した帳簿を7年間保管する義務があります。それ以外の書類(事業上作成した契約書や請求書など)の保管期限は5年間です。
契約書は法令で保管期限が定められている重要な書類であり、その保管には十分に注意を払う必要があります。以前は、書類は紙面で作成し、紙面を保管するのが当然でしたが、近年では電子データの活用も広がっています。ここでは、契約書などの保管方法の種類とその特徴を解説します。
従来から広く使われてきた方法で、現在でも行われているのは、紙面による保管です。紙面で作られた契約書などは、クライアントや契約時期に応じてファイルを作り保管することが一般的ですが、次のような問題点があります。
マイクロフィルムとは、書類を小さいサイズのフィルムに写して記録できる媒体のことで、次のようなメリットがあります。
一方で、つぎのようなデメリットもあります。
契約書などの書類の情報を電子データとして保管すると、紙やマイクロフィルムのデメリットを避けて、次のようなメリットを得ることができます。
この記事で解説したように、契約書を含む事業上の書類を保管するためのルールが様々な法令によって定められています。保管期限は7年や10年といった長期にわたり、紙面での保管は手間とコストがかかります。
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