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談合を持ちかけた側でも免除に?独占禁止法の課徴金減免制度について

 

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大手企業も加わった談合事件が相次いで報道されています。

ニュースの見出しから①大手企業が参加したカルテルや談合が発覚したこと、②巨額の課徴金の納付命令が出そうであること、③カルテルや談合に参加したにもかかわらず一部の企業は課徴金が免除されそうであることがわかります。公正取引委員会は、このようなカルテルや談合の存在をどのようにして知ったのでしょうか。

本記事では、独占禁止法の目的、独占禁止法が禁じるカルテル・談合について、課徴金減免制度について解説します。

目次

独占禁止法とは?

独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、自由社会経済において企業が守らなければいけないルールを定め、公正かつ自由な競争を妨げる行為を規制する法律です。一般的には競争法(Competition Law)と呼ばれる法令で、日本だけでなく諸外国にも存在します。たとえばアメリカでは3つの法律からなる「反トラスト法」が、EUでは「欧州連合競争法」がこれにあたります。

公正かつ自由な競争とは、どのようなものでしょうか。
私たち消費者は、事業者が提供する商品・サービスを自由により良いものを選ぶことができます。他方、事業者は商品・サービスの品質向上、技術革新、低価格化などによって自らの商品やサービスを消費者から選んでもらえるよう市場を開拓し事業活動を行っています。しかし、事業者が自らの利益を守る目的で市場の競争を歪めるような行為をすると、消費者はより良い商品・サービスを、より安く手に入れることが難しくなってしまうのです。そこで独占禁止法は、私的独占、不当な取引制限(カルテル・談合)、不公正な取引方法などを禁止しています。

独占禁止法第1条
この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

本記事では、課徴金減免制度が適用される不当な取引制限(カルテル・入札談合)について、主に解説します。

カルテルとは?

「カルテル」とは、複数の企業や業界団体が連絡を取り合い、本来、各企業がそれぞれ決めるべき商品の価格や生産数量などを共同で取り決める行為です。

私たちの生活で考えてみましょう。トイレットペーパーを販売している店舗がヒソヒソと裏で話し合いを行い、「(みんな)3,000円で販売しましょう。」と決めて売るようになったとしたらどうなるでしょうか。事業者側は利益を得ることができますが、消費者は価格によって商品を選ぶことができなくなるばかりか、本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなります。

物価高が進む世界情勢の中で、原材料や燃料代、人件費などの高騰によって販売価格が値上がりすることはやむを得ない部分もありますが、企業間で価格や数量を取り決めること商品の価格を不当につり上げると同時に、非効率な事業者の温存につながります。

なお、口頭の約束などであっても、事業者間で何らかの合意があり、結果的にそれぞれが同一の行動をとればカルテルです。

入札談合とは?

「入札」とは、最も有利な条件を示す者と契約するために、契約希望者に内容や入札金額を書いた文書を提出させて、よりよい条件を出した契約希望者を契約者として選定するしくみです。入札は厳正な競争を行うために導入され、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に活用されることが多いのですが、入札に参加する事業者(契約希望者)たちが事前に相談して、受注事業者や受注金額などを決めてしまうことを「入札談合」といいます。

冒頭のニュースは、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会が発注した入札における談合疑惑に、公正取引委員会が調査に乗り出したというものですが、入札談合がなければ国、地方公共団体や大会組織委員会がより安く発注できた可能性が高いわけですから、入札談合は、税金のムダづかいを引き起こすものと言っても過言ではありません。

独占禁止法違反による課徴金納付命令と刑事罰

独占禁止法に違反する行為が行われている疑いがある場合、公正取引委員会は事業者への立入検査や事情聴取、調査を行います。調査の結果、違反行為が認められると、違反を行っていた事業者に対して排除措置を採るよう命じます。また、カルテルなどの悪質な行為については、課徴金や刑事罰などの厳しい措置が採られます。

(1)排除措置命令

違反行為を取り除くために必要な措置を命じる行政処分です。たとえば、価格カルテルの場合には、価格引上げ等の決定の破棄とその周知、再発防止のための対策などを命じます。確定した排除措置命令に従わない場合、その事業者には刑事罰が科されます。

(2)課徴金納付命令

カルテル・入札談合を行った事業者に対し、課徴金を納めるよう命じる行政処分です。違反行為をした事業者は、一定の算式に従って計算された金額を課徴金として国庫に納めなければいけません。

【参考】
課徴金の計算方法
(公正取引委員会)

(3)刑事罰

独占禁止法違反のうち、①国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質・重大な事案、②違反行為が反復して行われ、排除措置に従わないなど行政処分では法目的を達成できない事案について、公正取引委員会は刑事処分を求めて告発を行うことができ、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科されます。また、入札談合を実際に行った者のほか、事業者および事業団体に対しても5億円以下の罰金が科されます。

注意しなければならないのは、会社だけでなく、会社の担当者も処罰の対象となりえるということです。業務だからといってカルテルや入札談合に関与することは非常に危険です。絶対に避けてください。

課徴金減免制度(リニエンシー)とは?

冒頭でも触れましたが、公正取引委員会は、カルテルや入札談合の存在をどのようにして知ったのでしょうか。答えは、談合やカルテルの参加企業が、公正取引委員会にカルテルや入札談合の存在を自主的に報告したからです。

課徴金減免制度とは、事業者が自ら関与したカルテル・入札談合について、その違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合に課徴金が減免される制度です。すなわち、ぬけがけした者に褒美を取らせるしくみです。

日本での課徴金減免制度は、2006年の改正独占禁止法の施行で初めて導入されました。事業者自らがその違反内容を報告し、更に資料を提出することにより、カルテル・入札談合の発見を容易化し、事件の真相解明を効率的かつ効果的に行うことにより、競争秩序を早期に回復することを目的としています。

課徴金の減免額は、減免申請の順位に応じた減免率に、事業者の協力が事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率を加えた減免率が適用されます。驚くべきことに、公正取引委員会の調査開始前に申請順位が1位だった事業者は、課徴金がなんと全額免除となります。カルテルや入札談合を引っ張っていた企業であっても公正取引委員会への報告は可能です。カルテルや入札談合の誘いには、決して応じてはいけません。

【参考】
課徴金減免制度の適用事業者の公表
(公正取引委員会)

まとめ:カルテルや入札談合には絶対に応じないという毅然とした態度を

最近のニュースを題材に、独占禁止法と課徴金減免制度についてお届けしました。課徴金減免制度の導入により、公正取引委員会にカルテルや入札談合の情報が集まりやすくなりました。

厳しいビジネス環境の中でカルテルや入札談合に手を染めたくなる、魔が差すようなことがあっても、課徴金減免制度の導入や罰則の厳罰化が進み、カルテルや入札談合が隠し通せる状況ではありません。冒頭のニュースのように4社で1000億円規模の課徴金納付命令ともなると会社の業績に多大な影響を及ぼします。また、カルテルによる課徴金として約29億円の納付命令を受けた企業の株主が、役員等に対して会社への賠償を求める株主代表訴訟が起こり、役員に対して賠償命令が出たという事例もあります。株主やステークホルダーへの影響は計り知れません。

カルテルや入札談合には、決して応じないことが何より必要ですが、企業として従業員がもちかけられないようにする環境の整備や、もちかけられてしまった際の行動基準の作成なども重要です。また、直ちに法務担当や弁護士への相談できる体制も整えておきましょう。

独占禁止法のその他の規制などの理解を深めたい方には、下記の公正取引委員会のパンフレットは大変おすすめです。

【参考】
知ってなっとく独占禁止法
(公正取引委員会)

 

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この記事を書いた人

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