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コンサルタントが企業と契約を締結する際には、基本的にコンサルティング契約書を作成して、業務に対してどの範囲をどのようにアドバイスするのかを決めておきます。このときにコンサルティングの内容を詳細まで記述しておかないと、クライアントとトラブルに発展してしまう可能性もありますので、注意して作成しなければなりません。
そこで本記事では、コンサルティング契約書の作り方について詳しく解説します。コンサルティング契約書の不備によるトラブルを避けるために知っておきたいポイントをお伝えします。また記事内では、実際にコンサルティング契約書を作成する際の参考となる契約書のひな形(テンプレート)も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
コンサルティング契約とは、コンサルタントが依頼を受けた企業に対して、事業および経営に関するコンサルティング(アドバイス)を提供するために締結する契約です。コンサルティング契約を締結する最大のメリットは、外部からの視点を経営に取り入れられる点にあります。専門家による適切なアドバイスは、経営向上に大いに役立つでしょう。
また新しい事業を立ち上げる際などには、コンサルタントのアドバイスを利用できるメリットもあります。ただし、コンサルティング契約を締結する際には、コンサルティング業務の範囲および提供方法報酬などを明確に規定し、コンサルタントとのトラブルを防ぐことが重要です。
コンサルティング契約に類似している契約には、以下の2つが挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
アドバイザリー契約は、企業への経営に関するアドバイスを行います。そのため、おおむねコンサルティング契約と変わらないと考えて良いでしょう。これらの契約はともに具体的なアドバイス業務の内容などは契約の定めによって決まるため、業務内容をどのように設計するかが重要になります。
顧問契約は、企業経営に関して根幹的な部分まで介入できます。コンサルティング契約ではアドバイスや指導にとどまりますが、顧問契約はアドバイスだけでなく、契約書の作成や実務的なサポートなど幅広い範囲にわたって業務に介入します。
コンサルティング契約書とは、コンサルタントが委託者に対して経営や事業に対するコンサルティングを行う内容を記した契約書です。実はコンサルティング契約書の作成は義務ではありません。たとえ口約束を交わしただけでも、双方が内容に合意すればコンサルティング契約は成立します。
しかし、コンサルティングを提供してもクライアント側に良い結果をもたらせない場合や、コンサルタントが「その部分までのサポートは行えない」場合などがあるので、認識の違いからトラブルに発展する可能性も少なくありません。このような事態に備えて作られるのが、コンサルティング契約書です。
コンサルティング契約書ではどのようなシーンで報酬が発生するかといった内容を明確に文書に残しておくので、認識の違いによるトラブルの発生を防ぐために作られます。
コンサルティング契約は、主に以下の2種類に分けられます。
それぞれの契約について詳しく解説します。
準委任契約は、
法律行為でない事務の委託について準用する
引用元:民法第656条
と定められています。つまり、法律効果のない業務を依頼する契約です。
準委任契約では、委任規約の規定が準用されます。準委任契約の目的は何らかの業務を行うことであり、コンサルティングの契約を準委任契約で締結した場合には、事務に対するアドバイスを行ったり分析したり業務がメインとなります。
請負契約は、
当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法632条
と定められています。請負契約の場合では、仕事を完成させることをクライアントと約束する必要があります。
準委任契約では業務が完遂しているかどうかが問われることはありませんが、請負契約では完遂する必要がある点が異なります。
コンサルティング契約書のひな形(テンプレート)をご紹介しますので、ぜひご利用ください。
コンサルティング業務委託契約書
株式会社A(以下「甲」という)と株式会社B(以下「乙」という)は、甲が乙に委託するコンサルティング業務につき、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
(目的)
第1条 甲は、甲が運営する○○に関する助言、知識および技術の提供などのコンサルティング業務(以下「本業務」という)を乙に委託し、乙はこれを受託する。
第2条(委託業務の内容)
本契約において、乙が甲に対して提供する業務(以下、「委託業務」という)は次の通りとする。
(1)甲の〇〇事業に関する助言
(2)甲の〇〇事業に関する企画
(3)甲の〇〇事業に関する分析
(4)甲の〇〇事業に関する運用、改善に関する助言
(2)甲の〇〇事業に関する広告
(競業避止義務)
第3条 乙は、本契約期間中、事前に甲の承諾を得ることなく、甲の同業他社に対して、本業務と同一または類似する業務を提供してはならない。
(再委託の禁止)
第4条 乙は、甲の承諾を得ることなく、本業務を第三者に委託し、または請け負わせてはならない。
(契約期間)
第5条 本契約の期間は、令和○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日までとし、期間満了の3カ月前までに甲乙いずれからも相手方に対して本契約の継続拒絶の意思表示がなされなかった場合、期間満了日からさらに○年間自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
(報酬)
第6条 甲は、乙に対し、毎月○○日に本業務の委託料として○○円(税込)を乙の指定する下記金融機関の口座に振り込みによって支払うものとする。ただし、振込手数料は、甲の負担とする。
記
銀行名:○○銀行○○支店
口座種類:○○預金
口座番号:○○○○○○○
口座名義人:株式会社 B
(知的財産権の帰属)
第7条 委託業務の過程で作成された著作物の著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)および委託業務の過程で生じた発明その他の知的財産またはノウハウ等に係る知的財産権は、全て甲に帰属するものとする。乙は、甲に対して前記著作物について著作者人格権を行使しない。
(秘密保持義務)
第8条 乙および乙が使用して本業務を取り扱う従業員は、本業務の遂行に関して知り得た甲の技術上、業務上および営業上の一切の情報を甲の事前の承諾を得ることなく第三者に開示、漏洩しないものとし、本契約終了後も同様とする。
(契約の解除)
第9条 甲または乙は、次の各号の一に該当した場合、何らかの通知催告を要することなく、直ちに本契約を解除でき、損害賠償を請求できるものとする。
(1)本契約に違反し、違反状態が解消されないとき
(2)手形もしくは小切手または裏書した手形もしくは小切手が不渡りとなったとき
(3)第三者から差押、仮差押、仮処分などの強制執行もしくは競売申し立てを受けたとき
(4)公租公課の滞納処分を受けたとき
(5)破産手続開始、民事再生手続開始または会社更生手続開始の申し立てをし、またはこれらの申し立てがなされたとき
(6)解散、合併または営業の全部または重要な一部の譲渡を決議したとき
(7)監督官庁から営業取消、営業停止などの処分を受けたとき
(損害賠償)
第10条
甲または乙が、契約の相手方当事者に損害を与えた場合には、その直接かつ現実に生じた通常損害に限り、賠償する。ただし、乙が賠償する損害額は、受領した報酬額を上限とする。
(反社会的勢力の排除)
第11条
甲および乙は、その役員(取締役、執行役、執行役員、監査役またはこれらに準ずる者をいう。)または従業員において、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力等」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当せず、かつ将来にわたっても該当しないことを確約し、これを保証するものとする。
(1) 反社会的勢力等が経営を支配していると認められる関係を有すること
(2) 反社会的勢力等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
(3) 自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力等を利用していると認められる関係を有すること
(4) 反社会的勢力等に対して暴力団員等であることを知りながら資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
(5) 役員または経営に実質的に関与している者が反社会的勢力等と社会的に非難されるべき関係を有すること
2 甲および乙は、自らまたは第三者を利用して次の各号の一においても該当する行為を行わないことを確約し、これを保証する。
(1) 暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為
(3) 取引に関して、脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為
(4) 風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて相手方の信用を毀損し、または相手方の業務を妨害する行為
(5) その他前各号に準ずる行為
3 甲および乙は、相手方が本条に違反した場合には、催告その他の手続を要しないで、直ちに本契約を解除できるものとする。
4 甲および乙は、本条に基づく解除により相手方に損害が生じた場合であっても、当該損害の賠償義務を負わないものとする。また、当該解除に起因して自己に生じた損害につき、相手方に対し損害賠償請求できるものとする。
(合意管轄)
第10条 甲および乙は、本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。
(協議事項)
第11条 本契約に定めのない事項については、甲乙で協議して決定するものとする。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各1通を保有する。
令和○○年○○月○○日
甲 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
株式会社 A
代表取締役 ○○ ○○
乙 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
株式会社 B
代表取締役 ○○ ○○
コンサルティング契約書の主な記載事項は、以下の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
コンサルティング契約を行う際には、コンサルティング契約書に記載された内容がどのような契約なのかという目的に相当する「概要」を記載します。この目的条項に法律的な効果はありませんが、契約書自体の解釈の指針を示す点で重要な意味があります。
コンサルティング業務によって提供されるサービスの範囲を記載します。コンサルタントは、企業に対してアドバイスを行うことがメインの業務ですが、サービスを提供する範囲を明確にしておくことで、コンサルタントとクライアント間のトラブルを防げます。コンサルタントが提供するサービスをできる限り具体的に決めておくことが重要です。
コンサルティングを提供する方法には、様々な種類があります。例えば口頭で回答する場合や、レポートを作成してクライアントに提出するなどの方法が挙げられます。契約書でコンサルティングサービスの提供方法についてコンサルタントとクライアントで認識を共有しておけば、スムーズに業務が行えるでしょう。
クライアントは同業他社より高い売り上げや質の良いサービスを提供するために、コンサルティングサービスを利用します。また、コンサルタントはクライアントのノウハウや経験、実績など重要なデータを知ることができる立場なので、このような情報の他の企業への漏洩を防ぐ必要があります。このような事態を防ぐために、コンサルタントに競業避止義務を課す必要があるのです。
再委託では、第三者に教務を再委託できるかどうかというルールを定めます。コンサルタントは、専門外の業務を第三者に外注する場合があります。しかし、クライアントが業務の全てをコンサルタント自身で行うことを希望する場合には、再委託を禁止するケースも見られます。そこでこの条項では、再委託を可能にするかどうかを記載します。
コンサルタントとの契約方法が委任契約の場合には、契約は一定期間継続します。この場合には、「仕事の完成まで」など契約期間の終了の時期がはっきりしないケースがありますので、契約期間をあらかじめ契約書で定めておく必要があります。また、契約を長期間継続したい場合には、契約期間が終了しても自動更新を可能とする条項を盛り込むと良いでしょう。
報酬に関する重要なルールには、報酬額や支払方法、支払期限の3つがあります。これらの規定は、コンサルティング契約において非常に重要です。一般的なBtoBの契約の場合には、金融機関への振り込みを行い、その際に発生する振込手数料はクライアントが負担するのが通例です。また、報酬の支払方法には
の3つがあります。
コンサルタントが提供するアドバイスには非常に大きな価値があるので、知的財産権によって保護する必要があります。そのため、知的財産権に関する条項をコンサルティング契約書に盛り込んでおきましょう。
コンサルティング契約を締結して業務を開始した後には、クライアントは顧客管理や売り上げ、製品の製造方法など多くの個人情報や企業の機密情報をコンサルタントに開示する必要が出てきます。このような情報を他の人や企業に漏洩したり、目的外に使用されたりすることがないように、コンサルティング契約書には秘密保持義務が盛り込まれます。
コンサルティング契約の内容に違反する行為があった場合、契約解除ができる旨を定めておく必要があります。また、クライアントが破産または支払不能になるなど契約書に記された債務の履行が困難になったなど一定の要件がある場合にも、契約を解除できると明記しておくと良いでしょう。
契約上の債務不履行や不法行為によって、コンサルタントやクライアントに損害を与えた場合、損害請求が問題になるケースが考えられます。クライアントの事業規模やコンサルティング内容が大きい場合には、損害賠償の金額も高くなる可能性があるため、条項を定めておき損害賠償請求の範囲を限定することもあります。
コンサルティング契約書を作成する場合には、契約の内容によって印紙税(収入印紙)が必要になります。印紙税が必要なコンサルティング契約には、請負契約が該当します。記載された金額が1万円以下の場合には印紙税は必要ありませんが、それ以上の金額が記載されている場合には、国税庁が定める金額の印紙を貼る必要があります。
必要となる印紙税の金額は、国税庁ホームページの「印紙税額一覧表」でご確認ください。印紙税額一覧表は、以下のリンクからチェックできます。
参考:No.7102 請負に関する契約書|国税庁
コンサルタント契約書を作成する際には、以下の注意点があります。
これらの注意点について詳しく解説します。
コンサルティングでは、クライアントとの認識のズレによってトラブルが起こるケースが多々あります。このような事態を起こさないためには、契約書の作成時点で内容についてしっかりと業務内容や範囲、どのような場合にクライアントが責任を取るのかといった点を明確にしておく必要があります。
コンサルタントの役割は、クライアントにアドバイスやコンサルティングの結果の提出などによって業務や経営を改善することにあります。コンサルティングでは、対面でのミーティングや電話、メールなどを通じて提供しますが、その頻度は明確に決めておく必要があります。クライアントから頻繁に電話やメールで質問やアドバイスを求められたり、急な面談を求められたりするケースも少なくありません。このような事態になってしまうと業務量が増えてしまい、他のクライアントへの対応がおろそかになってしまう可能性がありますので、頻度を決めておきましょう。
コンサルタントがアドバイスを行っても、財務諸表の改善など目に見える形で成果が上がるとは限りません。そのため、コンサルティング契約を締結する際には、クライアントとコンサルタント間でどのような要素をコンサルティングの成果とするのかについて明確に決めておく必要があります。
コンサルティングを提供する際には、契約書にしっかりと内容を明記しておく必要があります。トラブルの発生防止やスムーズな業務遂行のために、きちんと記しておきましょう。
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