【事例紹介】DX化とは?IT化との違いから2025年の崖、メリット・デメリットを解説
近年、ビジネス環境の激変とともに「DX化」という言葉が注目されています。しかし、「DX化とは何か?」「自社で行うメリットは?」「どのように進めれば良いのか?」など、疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、DX化とは何かをわかりやすく解説し、導入のメリットと進め方のポイントについてご紹介します。
DX化とは
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。日本語では「デジタル変革」などと訳されることもあり、企業が事業や組織の根本的な仕組みをデジタル技術の活用によって変革していくことを指します。
従来の「IT化」とは異なり、単に業務をデジタル化するだけではなく、ビジネスモデルや組織構造、社内文化などを変革し、顧客体験の向上や新しい価値の創出を目指す点が特徴です。
IT化との違い
IT化とは、「Information Technology(インフォメーションテクノロジー)」の略称です。これは、業務や生活のなかで情報技術を活用していくことを指します。
DX化はIT化を包含する概念ですが、単に業務をデジタル化し業務を効率的に進めることだけに留まらず、ビジネスモデルや組織構造、社内文化などを変革し、顧客体験の向上や新しい価値創出を目指すというのが特徴です。
なぜDX化が注目されているのか?
DX化が注目されている背景には、主に以下の要因があるとされています。
2025年の崖
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」のなかで提唱された「2025年の崖」と呼ばれる問題解決の一助として、DX化は注目されています。このレポートは、2025年までに企業がDX化を進めなければ、海外企業との競争力低下や事業機会の損失など、大きな危機に直面する可能性があることを示しているものです。
デジタル化の加速による消費行動の変化
近年、スマートフォンやSNSなどの普及により、消費者の行動は大きく変化しています。消費者はいつでもどこでも情報収集や買い物ができるようになり、より便利で快適な体験を求めるようになりました。企業は、こうした消費者のニーズに対応するためにDX化を進め、デジタル技術を活用した新しい商品やサービス、ビジネスモデルを開発する必要があるでしょう。
リモートワークの普及
新型コロナウイルスの感染症対策として、リモートワークが急速に普及しました。リモートワークでは、場所や時間に縛られずに仕事ができるというメリットがある一方で、情報漏洩やセキュリティ対策、社内コミュニケーションの円滑化など、新たな課題も生まれています。企業は、こうした課題を解決するためにDX化を進め、デジタル技術を活用した新しい働き方やコミュニケーション方法を模索する必要があるでしょう。
IT人材の不足
DX化を進めるためには、ITに関する知識やスキルを持つ人材が必要です。しかし近年、IT人材の不足がしきりに叫ばれており、企業にとって大きな課題となっています。企業は、自社でIT人材を育成したり、外部から人材を獲得したりするなど、さまざまな対策を講じる必要があるでしょう。
経済・社会の変化への対応
近年、経済や社会は急速に変化しており、企業を取り巻く環境も大きく変わろうとしています。人口減少、高齢化、グローバル化など、さまざまな課題に対応するためには、企業はDX化を進め、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルを開発する必要があるのです。
DX化のメリット
DX化には、以下のメリットがあるとされています。
業務効率化・生産性向上
DX化による業務のデジタル化によって、紙の資料を使った作業の削減、ワークフローの自動化、データ分析による業務の効率化など、多くのメリットを得ることができます。また、AIや業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation、事業プロセスの自動化技術)などの先進的な技術を活用することで、さらに業務効率化を進めることも可能です。
- 紙の資料のデジタル化による、書類作成・共有・検索の効率化
- ワークフローシステムの導入による、承認手続きの迅速化
- データ分析ツールによる、顧客行動の分析や販売戦略の策定
- AIによる、顧客対応の自動化や商品開発の支援
- RPAによる、単純作業の自動化
コスト削減
DX化によって、業務効率化や生産性向上を実現することで、人件費や事務経費などのコストを削減できます。また、ペーパーレス化やクラウドサービスの利用などによって、オフィススペースや設備投資のコスト削減が可能です。
- 人件費(業務効率化による残業時間の削減、事務作業の自動化による人員削減)
- 事務経費(紙代、印刷代、郵送料などの削減)
- オフィススペース(ペーパーレス化によるオフィスの縮小、クラウドサービスの利用によるオフィススペースの削減)
- 設備投資(サーバーやパソコンなどの設備投資の削減)
顧客満足度向上
DX化によって顧客とのコミュニケーションを円滑化したり、新しい商品やサービスを開発したりすることで、顧客満足度の向上が期待できます。また、チャットボットやAIによる顧客サポートの導入により、顧客対応の迅速化や質の向上を実現することも可能です。
- 顧客とのコミュニケーションの円滑化(SNSやチャットツールの活用、顧客ポータルの導入)
- 新商品/サービスの開発(顧客データ分析に基づいた商品開発、AIによる商品提案)
- 顧客サポートの迅速化
- 質の向上(チャットボットによる24時間365日の顧客サポート、AIによる顧客対応の自動化)
新規事業の創出
DX化によって業務を効率化することにより、新たなビジネスモデルや商品・サービスを開発する時間を確保でき、新規事業創出が可能となります。また、ビッグデータやAIなどの先進的な技術を活用することで、従来では考えられなかったような革新的な事業の創出もできるでしょう。
- 新しいビジネスモデルの開発(シェアリングエコノミー、サブスクリプションサービス)
- 新商品・サービスの開発(AIスピーカー、ウェアラブルデバイス)
- ビッグデータやAIを活用した事業(医療・介護、金融、教育)
競争力強化
DX化によって業務効率化やコスト削減、顧客満足度向上、新規事業の創出を実現することで、企業の競争力を強化できます。また、デジタル技術を活用することで、新たな市場を開拓したり、海外進出を成功させたりすることも可能です。
- 国内外の競合企業との競争力強化
- 新規市場の開拓
- 海外進出
DX化の進め方
DX化は単にITツールを導入するだけでなく、経営戦略と組織改革を伴う変革です。そのため、計画的な進め方が重要と考える必要があります。
まず、経営層がDX化の目的とビジョンを明確にすることが必要です。DX化によって何を達成したいのか、どのような未来を実現したいのかを具体的に描き、関係者全員で共有することが重要と考えてください。
次に、自社の現状を分析します。現在の業務プロセスやITシステム、社内文化などを把握し、課題や強みを洗い出しましょう。この分析結果をもとに、DX化の具体的な施策を検討します。
DX化によって達成したい具体的な目標を設定します。目標は、SMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限がある)であることが重要です。
目標達成のための具体的な施策を検討します。たとえばITツールの導入、業務プロセスの改革、社内研修の実施などについて、具体的にどのように活用するかを考えてみてください。
施策をいつ、誰が、どのように実行していくのかを定めた実行計画を策定します。計画には、スケジュール、予算、責任者などを明記しましょう。
実行計画に基づいて、DX化を推進していきます。実行していくなかで定期的に進捗状況を評価し、必要に応じて計画を修正していくことも必要です。
DX化を成功させるためのポイント
DX化を成功させるためには、以下のポイントが重要とされています。
経営層のビジョンとコミットメント
DX化は単にITツールを導入するのではなく、事業モデルや組織構造、社内文化などを変革する取り組みです。まずは経営層がDX化の目的とビジョンを明確に描き、関係者全員で共有することが重要です。また、経営層はDX化を積極的に推進し、コミットしていく必要があります。
顧客視点に立ったDX化
DX化は、顧客体験の向上や顧客満足度の向上を目的とした取り組みであるべきです。常に顧客視点に立って顧客のニーズや課題を理解し、それに応えるような施策を検討する必要があります。
データに基づいた意思決定
DX化ではデータ分析を積極的に活用し、データに基づいた意思決定を行うことが重要です。ビッグデータやAIなどの技術を活用することで、従来では得られなかったような深い洞察を得ることができ、より効果的なDX化施策を推進できます。
人材育成と組織改革
DX化を成功させるためには、必要なスキルや知識を持つ人材を育成することが重要です。また、組織文化を変革し、新しい働き方や価値観を受け入れる体制を整えることも必要となります。
継続的な改善
DX化は、一度で完了するものではありません。変化する環境に応じて常に改善していくことが重要です。定期的に進捗状況を評価し、必要に応じて計画を修正していく必要があります。
DX化の事例
ここでは、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード 実践の手引」から、DX化の事例をご紹介します。
事例①:有限会社ゑびや/株式会社EBILAB(三重県・飲食業/情報システム開発販売業)
7年間かけてAIによる来客数予測ツールを開発するなどの取り組みを行いました。その結果、「世界一IT化された食堂」となり、客単価3.5倍、売上5倍、利益50倍に増加したそうです。
事例②:マツモトプレシジョン株式会社(福島県・精密機械部品加工)
従業員の可処分所得向上を目指し、システムプラットフォームCMEsを導入。自社事業にあわせた調整を行うことでDX化に取り組んでいます。CMEsは、「Connected Manufacturing Enterprises」の略称で、中小製造業向けの共通業務システムプラットフォームです。中小製造業向けに特化したテンプレートや機能を搭載しています。この導入により低コストで迅速に、最新の基幹業務システムを手に入れることができました。さらに導入ノウハウなどを公開し、地域の中堅・中小企業の生産性向上に貢献しています。
事例③:株式会社ヒサノ(熊本県・一般貨物自動車運送事業/機械器具設置工事業)
ITコーディネーターと競技し、デジタル技術を活用した業務改革を行いました。紙媒体で行っていた配車などのプロセスをクラウドでの運用に切り替え、各業務システムとデータ連携を行い、会社全体の業務を最適化。現在の目標は、5年後に総合物流業者として九州全域をカバーすることとしています。
中小企業が取り組みやすいDX化
中小企業にとってDX化は大きな課題であると同時に、大きなチャンスでもあります。近年は中小企業向けのDX支援サービスやツールも充実しており、比較的容易にDX化を始めやすい環境が整ってきています。中小企業にとっては、とくに今がチャンスです。以下、中小企業が取り組みやすいDX事例をいくつかご紹介するので、参考にしてみてください。
クラウドサービスの導入
クラウドサービスを利用することで、オフィスの場所や時間に縛られずに仕事ができるようになり、業務効率化やコスト削減につながります。また、最新のIT技術をかんたんに利用できるという点もメリットです。
- Office365やGoogle Workspaceなどのクラウド型グループウェアの導入による、情報共有やコミュニケーションの円滑化
- SalesforceやHubSpotなどのインターネット上で提供されるSaaS型CRMツール導入による、顧客管理や営業活動の効率化
- freeeやマネーフォワードクラウドなどのクラウド型会計ソフトの導入による、経理処理の効率化
- 電子印鑑GMOサインなどの電子契約サービスの導入による、契約業務の効率化
業務自動化ツールの導入
RPA(Robotic Process Automation)やAIなどの技術を活用した業務自動化ツールを導入することで単純作業や定型作業を自動化し、業務効率化や人件費削減につながります。
- RPAツールによる、データ入力や伝票処理などの単純作業の自動化
- AIチャットボットによる、顧客対応の自動化
- AI-OCRによる、請求書や領収書などの紙書類のデータ化
オンライン販売の導入
ECサイトやSNSを活用したオンライン販売を導入することで新たな顧客層を開拓し、売上拡大につながります。
- ShopifyやBASEなどのECサイト構築プラットフォームの利用による、ECサイトの開設
- InstagramやFacebookなどのSNSを活用した、商品やサービスの販売
- メルカリやラクマなどのフリマアプリを活用した、不用品の販売
データ分析の活用
顧客データや販売データなどのデータを分析することで、顧客のニーズや市場動向を把握し、経営戦略の策定やマーケティング活動の効率化につなげることが可能です。
- Google AnalyticsやAdobe AnalyticsなどのWeb分析ツールの利用による、顧客行動の分析
- ExcelやPower BIなどのデータ分析ツールの利用による、販売データの分析
- AI分析ツールの利用による、顧客データや販売データからの新たな知見の抽出
まとめ:DX化で業務効率アップ!新たなる一手を打つための時間を創出しよう
DX化は、企業が生き残るために必須の取り組みです。DX化が注目されている背景には、さまざまな要因があります。企業はこれらの背景を理解し、自社の状況にあわせてDX化を推進していくことが重要です。