「デシャップ」という言葉をご存じでしょうか？

おそらく飲食業界で長く経験を積んでいらっしゃる方であれば耳にしたことはあるものの、その具体的な意味や役割についてまで詳しく知っている方は少ないかもしれません。

実は、デシャップは飲食店の運営において非常に重要な役割を果たしています。本記事では、このデシャップの意味やそのメリットについて詳しく解説します。

デシャップという役割の理解が深まることで、飲食店の運営がスムーズになり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。ぜひ参考になさってみてください。

そもそもデシャップとは？

デシャップとは、キッチンで作った料理をホールスタッフに受け渡す場所、およびその場を仕切るスタッフのことです。主に飲食店で使用される用語で、キッチンとホールをつなぐ重要な役割を果たしています。

デシャップという言葉は、英語の「dish up（ディッシュアップ）」に由来しており、この言葉は料理を盛り付ける・提供するなどの意味合いで用いられる言葉です。現在では世界中の飲食店業界で使われる言葉になりました。

飲食業界におけるデシャップは、料理を作って顧客に提供するまでの間に、料理の品質や提供順序を最終確認するプロセスとしても重要です。

飲食業界以外でも、工場をはじめとする製造開発業界で、商品の品質チェックを行う人物を指す際にもデシャップという言葉が用いられることがあります。

飲食店におけるデシャップの役割

デシャップは料理を顧客の元へ届けるために必要不可欠な役割です。以下では飲食店において、どのような役割があるのかを解説します。

テーブル状況の確認

デシャップのもっとも重要な役割の一つは、テーブルの状況を常に把握することです。テーブルの状況を把握できていないと、最適なタイミングで料理を提供できなくなったり、キッチンの料理進行に悪影響を及ぼしたりします。

テーブルの状況を把握できていないと、「いつまでも注文した料理が来ない」「同じテーブルなのに料理が提供されるタイミングがバラバラ」などの問題が起こります。

こうした問題が起こらないようにするためにも、デシャップの役割においてテーブル状況の確認は重要です。

料理の提供状況を管理

デシャップは、各料理が適切なタイミングで提供されるように全体の状況を管理します。たとえば、あるテーブルがコース料理を注文している場合、前菜、メインディッシュ、デザートのような順番で、スムーズに料理が提供されるように調整します。

具体的には、キッチンとホールスタッフが連携を図りながら、適切なタイミングで提供されるように調整しなくてはなりません。注文された料理を一気に提供するのではなく、前菜が食べ終わったタイミングを見計らってメインディッシュを提供し、メインディッシュが食べ終わる頃にデザートを準備するなど、顧客が待ち時間を感じることなく食事を楽しめるようにします。

顧客によって、食事のスピードは異なります。ゆっくり味わって食べる方もいれば、比較的早く食べ終わる方もいるでしょう。こうしたテーブルの状況をキッチンに伝えることで、最適なタイミングでテーブルに新しい料理を提供できるのです。

料理の仕上がりを確認

デシャップは、キッチンから出てくる料理が注文通りに仕上がっているかを確認する役割も担います。たとえば、ステーキのオーダーが入っていた場合は適切な焼き加減であるか、サラダの場合は美しく盛り付けられているかなど、細部にわたるチェックを行います。

もし仕上がりに問題があった場合はキッチンに伝え、作り直すよう指示をするのも仕事です。こうしたチェックによって、ボリューム感や盛り付けなどが適切な状態の料理を顧客に提供できます。

デシャップで仕上がりをチェックすることによって、お店で提供する料理のクオリティが常に高く保たれるでしょう。

ホールスタッフへの指示

ホールスタッフに指示を出すことも、デシャップの重要な役割の一つです。本来であればテーブルの状況を確認するのが仕事ですが、状況によっては持ち場から動けない場合もあるでしょう。

この場合はホールスタッフに対して、代わりにテーブルの状況を確認してもらうよう指示を出さなくてはなりません。また、ホールスタッフが確認した内容を聞き取ったら、必要に応じてキッチンスタッフへ伝達します。

こうした指示を出すためには、ホールスタッフの様子も把握しなくてはなりません。ホールスタッフの手が回らない状況では、代わりにテーブルの状況を確認してもらうのが困難になります。

ある程度の作業量を把握できるよう、周囲をしっかり観察するのも、デシャップの大切な役割です。

クレームの防止

デシャップはクレームを防止する重要な役割も担っています。たとえば、正確な伝票管理や料理の最終チェックは、結果としてオーダーミスを防ぐことにつながります。注文された料理と異なるものを提供してしまうなどのミスを未然に防ぐためにも、デシャップの役割は非常に重要です。とくに高級レストランでは、その存在が必要不可欠といえるでしょう。

デシャップの適切な管理と対応により、クレーム防止が実現でき、顧客満足度の向上に貢献します。

デシャップが飲食店にもたらすメリット

デシャップは飲食店にさまざまなメリットをもたらします。以下で詳しく見てみましょう。

ホールの回転率を高める

デシャップを配置することで、ホールの回転率を高められるメリットもあります。デシャップによってテーブルの状況を把握し、効率的に料理を提供することで、テーブルの回転を早めることも可能です。

回転率が上がると、多くの顧客が短時間でサービスを受けられ、店の収益が向上します。これは比較的忙しいとされるランチタイムにおいても有効です。

たとえばランチタイムで忙しい時間帯に、デシャップが各テーブルの進行状況を管理するとします。あるテーブルが前菜を食べ終わりそうなタイミングだった場合、デシャップはキッチンへメインディッシュを準備するよう指示を出します。

このような動きによって、スムーズに次の料理を提供でき、顧客待たせることなく顧客に食事を楽しんでもらうことが可能です。テーブルの回転が早くなると、次の顧客をすぐに案内できるため、混雑状況も改善するでしょう。

顧客満足度が高くなる

デシャップの存在は、顧客満足度の向上にもつながります。先述したメリットによって料理の品質が保たれ、サービスがスムーズに行われることで、顧客は快適な環境で食事ができます。

また、デシャップがキッチンへ情報伝達をすることで、顧客の細かな要望にも対応が可能となり、顧客の期待に応えられるでしょう。

とくに記念日のお祝いは、顧客にとって大切な思い出に残る機会です。だからこそ、高品質な料理を適切なタイミングで提供しなくては、顧客にとって特別な1日が台無しになってしまいます。

デシャップの対応が適切であれば、顧客がリピーターになる確率も高くなります。さらには他の方にお店を紹介したり、口コミで高く評価したりしてもらえるケースもあるでしょう。

デシャップに向いている人の特徴

デシャップは飲食店にとって大切な存在です。以下ではどのような人にデシャップの役割が向いているのか、具体的な特徴を紹介します。

飲食店での経験が豊富である

デシャップには、飲食店での豊富な経験が求められます。経験が豊富だと、キッチンとホールの両方の業務を理解できているため、スムーズに対応することが可能です。

たとえば料理の仕上がりをチェックする際、盛り付けやボリューム感など、どのポイントに注意すべきかを瞬時に把握できるでしょう。結果として料理のクオリティを維持しやすくなります。

実際に数年間のホールスタッフ・キッチンスタッフの経験がある人は、料理の調理プロセスや提供のタイミングを感覚で理解しているため、デシャップの役割を効率的にこなせる傾向があります。

さらに、過去の経験を活かしてトラブル対応ができるため、予期せぬ事態にも迅速に対応できるでしょう。

管理職などで店舗の権限を与えられている

デシャップには、店舗全体を管理する権限がある人が向いています。管理職としてのノウハウを活かし、スタッフに対して適切な指示を出せば、店舗運営をスムーズにおこなえるでしょう。

ホールやキッチンなどにいるスタッフに対して指示をする役割でもあるため、他のスタッフよりも上の立場、もしくは権限のある人だと、スムーズにお店が回りやすくなります。

また、シフト管理やスタッフ教育を行った経験がある人は、スタッフの強みや弱みを理解できるため、最適な指示ができます。権限のある人がデシャップを担当することで、チーム全体が効率的に動き、顧客に高品質なサービスを提供できるでしょう。

スタッフから信頼を得ている

デシャップは、スタッフからの信頼を得ていることが重要です。スタッフから信頼されることで、指示がスムーズに伝わり、スタッフ全員が一丸となって業務に取り組めます。

信頼がないと指示がうまく通らない、情報伝達がスムーズにできないなどのトラブルが起こります。スタッフからの信頼を得るためにも、日々のコミュニケーションを積極的に取ることも大切です。

たとえば、スタッフが仕事で困っている場合、相談を聞いたりアドバイスをしたりするなど、相手に寄り添える人がデシャップに向いています。

日頃からコミュニケーションを積極的に取っている人物は、基本的に仲間からの信頼を得ているケースが多いです。このような人は、デシャップの立場としても立派に活躍できるでしょう。

一つ先を見越した行動をとれる

デシャップには、一つ先を見越した行動が求められます。現在の状況だけでなく、今後の展開を予測し、事前に対応策を考えることが重要です。

たとえば、ランチタイムが始まる前は、スタッフにテーブルの配置やオーダーの流れを確認しておきます。これにより、混雑時にも迅速に対応でき、顧客満足度を高めることができるでしょう。

先回りして行動できれば、不測の事態にもスムーズに対応できます。その結果クレームの件数が減り、回転率も上がるなど、お店に貢献できる要素は多くなるのです。

全体を見渡した上で行動がとれる

デシャップには、全体を見渡して行動する能力が求められます。顧客へスムーズな対応をするためには、キッチンとホールの両方の状況を把握し、全体の流れを管理しなくてはなりません。

デシャップが全体の動きをしっかり観察できていれば、顧客からのクレームも防げるでしょう。普段から周囲をよく観察し、適切な行動をとれる人が、デシャップに向いています。

たとえば料理の仕上がりのチェックで忙しく、テーブルの様子をチェックできない場合は、ホールスタッフへ代わりにテーブルの様子を確認するよう伝えます。また、その際はホールスタッフの手が空いているかも観察するなど、全体を細かく見渡さなくてはなりません。

臨機応変に対応できる

デシャップには、臨機応変に対応できる能力が必要です。飲食店では、予期せぬトラブルや緊急事態が発生することがたびたびあります。こうした状況で冷静に判断し、適切な対応策を考えられる人物が、デシャップに向いているでしょう。

たとえば急に団体の予約が入った場合、スムーズに料理を提供するために適切な指示を出し、迅速に対応する必要があります。また、一つひとつの料理のクオリティが適切かを確認します。

臨機応変な対応ができるデシャップは、トラブルを最小限に抑え、顧客に安心感を与えることが可能です。結果として顧客満足度向上にもつながります。

まとめ：デシャップの適切な対応で顧客満足度が高いお店に

デシャップはキッチンとホールのつなぎ役のような立場です。出来上がった料理の仕上がりをチェックしたり、テーブルの状況を確認したりなど、大切な役割があります。

管理職や社員など権限がある人、臨機応変に対応できる能力を有しているなど、デシャップが向いている人の特徴もさまざまです。デシャップが適切に対応できれば、顧客満足度向上にもつながるため、スキルや特性を活かしてチャレンジするとお店に貢献できるかもしれません。

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