契約書は企業活動において重要な役割を果たします。しかし、契約書の管理は煩雑な作業であり、多くの企業が頭を悩ませているのが実情ではないでしょうか。契約書の管理に利用されることも多いMicrosoft Excel(以下:エクセル)は、手軽に利用できるツールです。しかし、適切な方法で運用しなければ、リスクを招く可能性もあります。本記事では、エクセルで契約書管理を行うメリットとデメリット、具体的な方法、注意点、そして効率化のポイントについて詳しく説明します。
目次
エクセルで行う契約書管理とは
エクセルを用いて契約書情報を記録・整理し、一元的に管理する方法では、以下のような項目を表形式でまとめるのが一般的です。
- 契約書名(契約類型)
- 契約日
- 契約期間
- 契約金額
- 取引先名
- 担当者名
- 更新時期
- 契約内容
- 契約書の保管場所
- その他必要情報
エクセルは、多くの企業で日常的に使用されているツールです。既に導入されている企業の場合、導入などにかかる経費や手間が必要ありません。コストカットと業務効率化を両立しながら、契約書管理を進めることができます。
エクセルを使った契約書管理のメリット
エクセルを利用した契約書管理の主なメリットは以下の通りです。
導入コストが低い
契約書管理システム(※)は導入費用や月額費用がかかるものが多く、コストを抑えたい企業にとって負担となる場合があります。それに対し、エクセルは多くの企業がすでに導入しているツールであるため、追加費用が発生しません。これは、中小企業やスタートアップ企業にとって大きなメリットです。
※契約書管理システムとは?
企業が日々取り扱う多数の契約書を効率的に管理するためのサービス(製品)です。主な機能として契約書の検索や保管、契約更新時期のリマインダーなどがあり、契約書に関わる業務を自動化できることから、業務効率を改善できます。
最近はより便利な機能を備えたサービスもあり、検索機能や契約更新の管理機能以外に、契約書の自動アップロードや、紙の契約書のスキャンなども可能になっています。契約を扱う法務部門の負担を軽減できるでしょう。
次の記事では、おすすめの契約書管理システムについて徹底比較しています。契約書管理にお悩みの方は、ぜひご覧ください。
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操作がかんたん
エクセルは多くの人が使い慣れているツールであるため、特別な知識やスキル、研修などがなくても利用しやすい傾向にあります。一方、契約書管理システムは操作方法を習得する必要があるため導入に時間がかかったり、担当者に負担がかかったりする場合があります。
柔軟性が高い
自社のニーズにあわせて自由に項目を追加したり、レイアウトを変更したりすることが可能です。一方、契約書管理システムは機能が限定されている場合があり、自社のニーズに合わないケースも見受けられます。エクセルであれば、必要な項目を自由に設定し、使いやすいようにレイアウト変更も容易に可能です。
データ分析機能
エクセルのデータ分析機能を使って、契約書の傾向やリスクを分析することもできます。契約書の内容や金額、取引先などを分析することで、潜在的なリスクを早期に発見することが可能です。また、契約書の更新時期や支払期日などを分析することで、業務効率化にも役立ちます。
共有が容易
エクセルファイルはかんたんに共有できるため、関係者間で情報共有がスムーズなのもメリットといえるでしょう。一方、契約書管理システムは、アクセス権限の設定などが必要な場合、情報共有に手間や時間が必要なケースもあります。エクセルであれば、メールやチャットツールなどで手軽に共有が可能です。
エクセルを使った契約書管理のデメリット
エクセルによる契約書管理は、導入コストが低い、操作が容易といったメリットがある一方で、いくつかのデメリットがあります。
管理の手間
手動で入力や更新を行う必要があるため、管理に手間が必要です。契約書の数が増えると、情報の検索や更新が困難になり、ヒューマンエラーが発生するリスクも高まります。
検索機能の弱さ
データが大量になると、必要な情報を検索するのが困難になります。契約書の内容や条件を絞り込んで検索したい場合、エクセルの機能では不十分なケースもあるので注意が必要です。
セキュリティ対策が必要
ファイルの共有や管理次第で、情報漏洩のリスクも考えられます。アクセス権限の設定やパスワード管理など、適切なセキュリティ対策を講じる必要があると考えてください。
バックアップが必要
データ消失を防ぐために、定期的なバックアップを取ることが必要です。バックアップを怠ると、データ消失時に契約書情報が失われるリスクがあります。
複雑な契約書には不向き
複雑な条件や条項を含む契約書には、エクセルの機能だけでは不十分な場合もあります。高度な検索機能やバージョン管理機能などが必要となるケースでは、エクセルでは対応できない場合があることを、あらかじめ理解しておきましょう。
エクセルで契約書管理を行う流れを8ステップで解説!
ここでは導入のための、一般的な手順をご紹介します。
STEP
担当者を決める
契約書管理の責任者を決めることから始めましょう。その担当者が管理台帳の作成、情報の入力、更新などを担当します。
STEP
管理する契約書の種類を決める
すべての契約書を管理するのか、特定の種類の契約書のみを管理するのかを決めます。なお、おすすめは法務部門による一元管理です。企業によっては「契約金額が〇〇円以下の契約については部門ごとに管理すれば良い」などのルールを定めているケースもあります。しかし、社内ガバナンス強化の観点からも、すべての契約書を法務部門がチェックできる体制を整えるべきではないでしょうか。
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STEP
管理台帳を作成する
エクセルを使って、契約書情報の記録用の台帳を作成します。台帳には、
- 契約書名(契約類型)
- 契約日
- 契約期間
- 契約金額
- 取引先名
- 担当者名
- 更新時期
- 契約内容
- 契約書の保管場所
など、必要な項目を列挙します。エクセルで管理し始めた段階では、必要最低限の項目に絞って記録しておくのもおすすめです。はじめから入力項目があったり、複雑なフローを組んでいたりすると、契約書管理の継続が難しくなるケースもあります。まずは「継続すること」を第一目標に使いやすさを重視して管理台帳への入力項目を検討してみてください。
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STEP
台帳に入力する
既存の契約書の情報を入力します。手入力だけでなく、スキャンデータやPDFファイルを取り込むことも可能です。紙の契約書をデジタル化する際はOCR(AI-OCR)などの技術を活用するのもおすすめです。
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STEP
契約書管理ルールを定める
「誰が」「いつ」「どのように」台帳を更新するのか、契約書の保管方法や廃棄方法などを定めたルールを定めます。
STEP
関係者への周知を行う
作成した台帳と管理ルールを関係者に周知徹底します。
STEP
運用を開始する
台帳を使って、契約書情報を管理します。定期的に台帳を更新し、情報の最新性を保つことが重要です。
STEP
定期的な見直しを行う
運用状況を定期的に見直し、必要に応じて台帳やルールを改善します。
エクセルを使った契約書管理の注意点
ここでは、契約書管理の注意点をご紹介します。
セキュリティ対策
ファイルのパスワード設定やアクセス権限の設定など、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を徹底しましょう。データは定期的にバックアップを取ります。万が一情報漏洩が発生した場合の対応策も検討しておきましょう。
データの整合性
誤入力を防ぐために、データ入力のルールを定め、チェック体制を構築します。定期的にデータの整合性チェックも実施するようにしてください。また、バージョン管理機能などを活用して、データの変更履歴を記録しましょう。
運用ルールの明確化
「誰が」「いつ」「どのように」台帳を更新するのか、契約書の保管方法や廃棄方法などをルールとして定める必要があります。ルールが決定したら、それを関係者に周知徹底し、運用後も状況を定期的に確認しましょう。
管理体制の構築
契約書管理の責任者を明確にします。担当者への教育・研修を行い、定期的に運用状況を監査します。
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エクセルを使った契約書管理がおすすめできるケースとおすすめできないケース
ここでは、エクセルを使った契約書管理がおすすめできるケースとおすすめできないケースをご紹介します。
エクセルによる契約書管理がおすすめできるケース
エクセルによる契約書管理は、以下のケースにおすすめできます。
- 契約書数が少ない場合
- 契約書の種類がシンプルな場合
- 導入コストを抑えたい場合
- 担当者のITリテラシーが比較的高い場合
- エクセルの操作に慣れている場合
- シンプルな管理で十分な場合
- 複雑な検索機能や分析機能は必要ない場合
- すぐに始めたい場合
具体的にこのような方におすすめです
- 個人事業主や小規模企業で、契約書の数が多いわけではない。
- 契約書の内容が比較的シンプルで、高度な検索機能や分析機能が必要ない。
- コストを抑えたい。
- 担当者がエクセルの操作に慣れており、すぐに管理を始めたい。
エクセルによる契約書管理がおすすめできないケース
エクセルによる契約書管理は、以下のケースではおすすめできません。
- 契約書数が多い場合
- 契約書の種類が複雑な場合
- セキュリティレベルを高く保ちたい場合
- データの整合性を保ちたい場合
- 高度な検索機能や分析機能が必要な場合
- バージョン管理機能や監査ログ機能が必要な場合
- 複数人で同時に編集する必要がある場合
- 複雑な運用ルールが必要な場合
以下に該当する場合はエクセル管理以外の方法も検討しましょう
- 大企業で、膨大な量の契約書を管理しなければならない。
- 契約書の内容が複雑で、高度な検索機能や分析機能を必要としている。
- セキュリティレベルを高く保ち、情報漏洩を防ぎたい。
- 複数人で同時に契約書情報を編集する必要がある。
- バージョン管理や監査ログ機能を必要としている。
エクセルでの契約書管理が不安ならほかの方法も検討しよう
エクセル以外にも、契約書を効率的に管理する方法として、契約書管理システムと電子契約サービスがあります。
契約書管理システム
契約書管理システムは、契約書の作成、管理、分析などを一元的に行うためのシステムです。主な機能は以下の通りです。
- 契約書情報の管理
-
契約書名、契約日、契約期間、契約金額、取引先名、担当者名、更新時期、契約内容、契約書の保管場所など、契約書に関するあらゆる情報をデータベースに登録・管理できます。
- 検索機能
-
契約書名、取引先名、契約内容など、さまざまな条件で契約書をかんたんに検索できます。
- リマインダー機能
-
契約書の更新時期や支払期日などを事前に通知し、うっかりミスを防ぐことが可能です。
- バージョン管理
-
契約書の改訂履歴を記録し、過去のバージョンと比較できます。
- アクセス権限の設定
-
契約書情報へのアクセス権限を設定し、情報漏洩を防ぐことが可能です。
- 分析機能
-
契約書の内容や金額、取引先などを分析し、契約書の傾向やリスクを把握できます。
メリット | デメリット |
---|
契約書情報の管理の効率化検索機能やリマインダー機能などの便利な機能 セキュリティレベルの向上 契約書のさまざまな分析が可能 | 導入コストの負担 導入・運用に関する手間 システムの使い方が複雑な場合も |
契約書管理システムのメリットとデメリット
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電子契約サービス
電子契約サービスは、主にに電子署名という技術を用いて、紙の契約書と同等の効力を持たせて締結する方法です。
メリット | デメリット |
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契約締結の迅速化 印刷・郵送などのコスト削減 紙の使用量を減らすなどの環境への配慮 インターネット上で場所や時間を問わず契約可能 電子署名によって契約書の偽造や改ざんを防止 | 導入コストの負担 導入・運用に関する手間 システムの使い方が複雑な場合も |
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契約書管理システムと電子契約サービスの大きな違いは、電子契約の締結に関する仕組みが整っているかどうかです。契約書の管理という面に関しては、電子契約サービスであっても契約書管理システムと同等の管理システムを用意しているサービスも多く「電子契約サービスは契約締結のみ」というわけでは決してありません。
とくに電子契約サービス国内シェアNo.1(※1,2)の電子印鑑GMOサインは、標準機能として電子帳簿保存法対応の検索機能や関連情報の紐づけなど、さまざまな便利機能を提供しています。また、オプションパックをご利用いただくことで、従来の紙の契約書をデータ(PDF)化したものを電子契約書類とともに一元管理することも可能です。
さらに「契約レビューパック」を導入いただければ契約書の保管に関する部分だけでなく、契約書の作成やレビューなど契約締結前の管理における業務フローに関しても徹底した効率化ができます。
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※1 「電子印鑑GMOサイン(OEM商材含む)」を利用した事業者数(企業または個人)。1事業者内のユーザーが複数利用している場合は1カウントとする 。自社調べ(2023年11月)
※2 電子署名およびタイムスタンプが付与された契約の送信数(タイムスタンプのみの契約を除く。電子署名法の電子署名の要件より)。自社調べ(2023年12月)
まとめ:契約書管理方法はエクセルだけじゃない!契約書管理システムや電子契約サービスも検討を
エクセルによる契約書管理には、導入コストが抑えられる、操作が容易といったメリットがある一方、管理に手間がかかる、検索機能が弱いといったデメリットもあります。
一方、契約書管理システムは、自動化機能や検索機能など、エクセルにはない多くの機能を搭載しており、効率的に契約書を管理することが可能です。また、電子契約サービスでは、インターネット上で契約書の締結に必要な手続きが完結できます。契約書の印刷、郵送、押印などの作業が不要となり、大幅に時間と手間を削減可能。そのうえ、場所や時間に縛られることなく、いつでもどこでも契約を締結できます。
契約書管理体制を構築するためには、導入コストや機能性などを比較検討し、自社にとって最適な方法を選択することが重要です。電子契約サービスをお探しの方は、ぜひ電子印鑑GMOサインをご検討ください。