実印とは、法律行為や公的な手続きにおいて、本人の認証や意思表示を示すために使用する印鑑であり、マイホームの購入や自動車ローンの申し込みなど、生における重要な場面で必要不可欠なものです。実印を利用したい場合には、はじめにお住まいの自治体の役所にて「印鑑登録」という手続きをしなければなりません。
本記事では、印鑑登録とは何か、なぜ必要なのか、そしてどのように登録するのかについて、わかりやすく解説します。登録時に用意すべきものや引っ越しの際の対応方法、印鑑登録の抹消手続きについても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
印鑑登録とは
印鑑登録とは、自らが所有する印鑑を市区町村の役場に登録し、「この印鑑は本人であることを証明するものである」と公的に認められる制度です。登録された印鑑は「実印」と呼ばれ、重要な場面で本人確認や意思表示のために使用されます。
実印は、本人であることを証明する書類としての役割を果たすため、偽造や不正使用を防ぐ効果があります。また、本人確認を容易にすることで、取引の円滑化にもつながるでしょう。
印鑑登録は、マイナンバーカードと同様に、本人確認のための重要なツールといえるでしょう。
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印鑑登録の必要性
印鑑登録をした人は、登録をした役場から「この実印が、この人物の正式な印鑑である」と証明する印鑑登録証明書を発行してもらえます。
印鑑登録証明書は、マイホームの購入や自動車ローンの申し込みなど重要な場面で本人確認や意思表示を行うために必要です。具体的には、以下のような場合に印鑑登録証明書が必要となります。
自動車購入・譲渡
- 自動車購入契約書への署名捺印
- 車検証への住所/氏名の変更
印鑑登録をしないとどうなる?
印鑑登録をしないと、以下のようなデメリットが考えられます。
重要な手続きが進められない
不動産の売買、自動車の購入、銀行からの融資、会社設立、遺産相続など重要な場面で本人確認や意思表示を行うために印鑑登録(実印の押印)が必要です。印鑑登録をしていないと、これらの手続きを進めることができません。
印鑑登録によって安全性や本人性は高まるのか?
印鑑登録をすることで安全性や本人性が高まるのかについては、一概にイエスとはいえません。先述した通り、不動産の売買やローン契約など重要な場面で、実印が必要となるケースはたしかにあります。
しかし、印鑑登録をすることによって本人は実印を持っている状態になるわけですから、万が一実印や印鑑登録証(印鑑登録カード※印鑑登録をすることで役所によって発行されるカード)、本人確認書類が盗まれてしまえば、不正利用されるリスクもあります。そのため、必要がないなら印鑑登録をすべきでないという考え方もあるのです。
また、本人性に関しては、基本的に実印でなくとも認印やそのほかの印鑑の押印が証拠力を持つことは既知の事実です。そのため一般的な契約の場面では、実印を必要とせず、認印の押印で十分とされています。ただし実印として販売されている印鑑は、通常認印として販売されている印鑑と比べ複雑な彫刻がされていることがほとんどであり、その意味では認印と比較してより高い本人性を確保できるといえるでしょう。
実印であっても認印であっても、重要なのはその管理がしっかりとされているかです。
印鑑登録の方法
印鑑登録は、住民票のある市区町村の役場で行うことができます。15歳未満および意思能力のない人は印鑑登録を行えません。具体的な方法は、以下の通りです。ここでは、本人が行う場合をご紹介します。
STEP
印鑑登録に必要なものを準備する
印鑑登録には、以下の書類が必要です。
- 申請書(役場で配布しているものを使用します)
- 登録する印鑑(実印用として販売されている印鑑がおすすめです)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 登録手数料
STEP
役所(役場)へ行き、窓口で申請する
上記書類を準備したら、お住まいの市区町村役場へ行きましょう。窓口で申請書に必要事項を記入し、登録する印鑑と本人確認書類を提示します。
STEP
印鑑登録証(印鑑登録カード)を受け取る
申請が受理されると、印鑑登録証(印鑑登録カード)が発行されます。印鑑登録証は、次回以降の印鑑登録証明書の発行時に必要となるので、大切に保管しておきましょう。
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登録できる印鑑
登録できる印鑑は1人1個と定められています。すでに登録されている印鑑を、別の人が登録することはできません。また、住民票に記載されている氏名、もしくは氏または名、氏と名の一部で組み合わせたものである必要があります。また以下の決まりがあります。
- 印影の大きさが、一辺の長さ8ミリ以上25ミリ以下の正方形に収まるもの
- 氏名のほか職業・肩書きなどをあらわしていないもの
- 氏名の文字が極端に図案化されておらず、照合が容易なもの
- 逆彫りでないもの
なお、認印などとして一般的に販売されている三文判でも、上記条件などを満たせば実印登録ができる場合もあります。しかし、おすすめはできません。同じ彫刻の印鑑が大量生産されていることを考えれば、印鑑登録に用いる印鑑は、彫刻が複雑で同じものが存在しない実印用として販売されている印鑑です。
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代理人が申請を行う場合
病気やその他のやむを得ない理由で、本人自身が印鑑登録申請できない場合は、代理人に申請を依頼できます。ただし、以下の点に注意する必要があります。
委任状が必要
代理人が申請を行うには、本人から委任状が必要です。委任状には、以下の事項を記載する必要があります。
- 本人の氏名、住所、生年月日
- 代理人の氏名、住所、生年月日
- 登録する印鑑の種類、サイズ、模様
- 申請手続きを代理人に委任する旨
- 本人の署名
- 押印
代理人の本人確認書類が必要
代理人は、本人確認書類を提示する必要があります。本人確認書類としては、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどが利用できます。
即日登録はできない
代理人が申請する場合、即日登録はできません。2回行く必要があります。
1回目に必要なもの
- 登録する印鑑
- 印鑑登録者本人の自署した委任状
- 代理人の本人確認書類
2回目に必要なもの
- 必要事項を記入した回答書
- 登録する印鑑
- 印鑑登録者本人の自署した委任状
- 印鑑登録者本人の本人確認書類
- 代理人の本人確認書類
出典:さいたま市「印鑑登録・印鑑登録証明書」
印鑑証明を発行するために必要なもの
印鑑登録後、印鑑登録証明書を発行するために必要なものは下記の通りです。
印鑑登録証(印鑑登録カード)
印鑑登録証(印鑑登録カード)は、市区町村役場で印鑑登録をした際に発行されるカードです。印鑑登録証には、印鑑証明の発行に必要な登録番号などが記載されています。
役所(役場)の窓口で印鑑証明を発行するには、印鑑登録証が必要です。ただし、証明書コンビニ交付サービスを利用してコンビニのマルチコピー機で印鑑証明を取得する場合はマイナンバーカードがあれば取得可能です(印鑑登録証は必要ありません)。
なお、印鑑登録をした実印自体を持参する必要はありません。
本人確認書類
運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認ができるものを持参しましょう。
印鑑登録証明書交付申請書
お住まいの自治体の役所に用意されているため、申請前に記入しましょう。なお、役所のホームページからダウンロードすることで入手できる場合もあります。
発行手数料
印鑑証明の発行には通常300円の手数料が必要です。なお、コンビニのマルチコピー機で発行する場合は、200円程度(自治体によって異なります)と窓口交付よりも低く設定されているのが一般的です。
2024年6月現在、渋谷区の場合、コンビニでの印鑑証明の発行手数料はなんと10円です!
参考:【4月1日】証明書交付手数料の減額・無償化を開始 | 報道発表 令和6年(2024年) | 渋谷区ポータル
引っ越しをした場合、印鑑登録はどうなる?
引っ越しをした場合は、印鑑登録の住所変更手続きが必要です。手続き方法は、引っ越し先と引っ越し前の状況によって異なります。
同じ市区町村内へ引っ越した場合
同じ市区町村内で引っ越した場合、転居届を提出することで、印鑑登録の住所も自動的に変更されます。基本的に印鑑登録証はそのまま使用できるため、手続き不要です。
別の市区町村へ引っ越した場合
別の市区町村へ引っ越し、登録した市区町村に住所登録がなくなった場合、自動的に登録が廃止されます。そのため、印鑑登録証を返納しましょう。
また、新住所の市区町村で印鑑登録を行います。新住所の市区町村役場へ行き、あらためて印鑑登録申請を行いましょう。
印鑑登録を抹消(廃止)したい場合
印鑑登録を抹消(廃止)したい場合は、お住まいの市区町村役場へ申請する必要があります。抹消手続きには、以下の書類が必要です。
- 印鑑登録抹消(廃止)申請書(役場で配布しているものを使用します)
- 印鑑登録証(印鑑登録カード)※紛失した場合は窓口に申し出る必要があります。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
なお、代理人が抹消申請する場合は、別途委任状の作成が必要です。
まとめ
印鑑登録は、押された印鑑が本人のものであることを証明する重要な公的制度です。不動産売買や会社設立などの重要な場面で、本人確認や意思表示を行うために、印鑑登録がされた実印を用います。
印鑑登録を行うことで、登録者の氏名、住所、生年月日などと実印が自治体によって紐付けられるため、より高い本人性を担保できます。印鑑登録は登録書類などに不備がなければ基本的に当日中に行えますが、なんらかの理由で登録に数日かかる場合もあります。実印が必要なことが判明した場合は、お早めにお住まいの自治体役場で手続きを行うのがおすすめです。