印鑑は、国内のさまざまな手続きにおいて重要な役割を果たします。仕事においてもその役割は変わらず、契約の締結や各種手続きでは印鑑の存在が欠かせません。
会社で印鑑を利用する場合は、その会社の正式な印鑑である実印を用意するために、印鑑登録を行わなければなりません。その際に必要となるのが、印鑑届出書です。今回は印鑑届出書について、概要や提出時の書き方、書く際の注意点などをあわせて紹介します。これから法人設立を考えている方や法的な手続きを多く控えている方は、実印が必要になる機会が多くなります。ぜひ参考にご覧ください。
目次
実印作成に欠かせない印鑑届出書
印鑑届出書とは、法人もしくは個人が法的な手続きや何らかの取引で使用するために、法人または自身の代表とする印鑑情報を届け出るために作成する書類です。日本国内において、法人個人問わず、印鑑は意思表示の手段の一つとしてよく使われています。仕事の契約や手続き時には書類に印鑑を押すことで正式な同意と見なされ、署名代わりとなるケースが多いです。
印鑑も種類によっては誰でも手軽に入手できるため、契約や手続きにおいてこうした印鑑の利用が認められてしまうと、不正利用などのリスクが高まります。それを防ぐために、大切な契約のときに利用できる専用の印鑑、いわゆる実印を作成する必要があり、その際にこの印鑑届出書を提出します。印鑑届出書を提出することで、その印鑑の正式な所有者であることが法的に証明され、身元の保証や信頼性の担保につながります。
印鑑の種類
印鑑には数多くの種類があり、それぞれに用途や役割があります。なかには特定の印鑑でなければ意味を成さないケースもあるため、各印鑑の役割について正しく覚えておきましょう。
実印
法人・個人が公的手続きや仕事の契約で利用することになる、もっとも重要な印鑑の一つです。法人個人問わず、所有者の意思を示すものとして代表的なものであり、登記や重要な契約、公的な文書への押印には必要不可欠な印鑑です。
実印に使われる印鑑は彫刻の凹凸が鮮明になっており、印影がくっきりと押される特徴があります。この作りは、実印の不正コピーや改ざんの防止にも効果的です。
前述したとおり、印鑑届出書を提出することで実印を登録することになるため、実印としての取得後は慎重に管理しておかなければなりません。
銀行印
銀行口座の開設時に金融機関に登録する印鑑であり、その後の銀行や金融機関に関連する手続きで毎回利用することになるものです。預金の引き出しや振り込み、証書の作成などにおいて、印鑑の押印を求められた場合は基本的にこの銀行印を使うことになります。
個人の場合、実印として登録できる印鑑は1人につき1本ですが、銀行印の場合は口座ごとの登録になるため、複数の銀行印に分けて所有するケースも見られます。銀行印も実印と同様に重要な役割を持つ印鑑であり、適切に管理しておく必要があります。
銀行印と実印を同じ印鑑で運用することは法的に可能ですが、これはあまりおすすめしません。紛失した場合の再発行に手間がかかりますし、何より紛失時の悪用リスクも倍になります。万が一の被害を最小限に抑えるためにも、実印と銀行印はそれぞれ分けて、専用のものを作るようにしましょう。
認印
荷物の受け取り時や役所への届出、雇用契約書への押印など、さまざまな場面において利用頻度が高い印鑑です。実印や銀行印と違って、専門機関での登録は必要なく、スーパーや100円ショップでも手軽に手に入るのが特徴です。インク浸透式の印鑑として有名な、いわゆる「シヤチハタ」も、この認印として利用されるケースが多いです。
認印としての用途を想定した、こうした印鑑を実印や銀行印として登録することも可能ですが、手に入りやすいということはそれだけ偽造や不正利用のリスクも高くなります。認印として使う印鑑は、あくまで認印としての利用に留めることをおすすめします。
訂正印
厳密にいうと、訂正印という名称の印鑑があるわけではないのですが、文書の誤りを訂正する場合に用いられる印鑑です。修正したい文書の上や横にハンコを押して、自らが訂正したことを証明するために用いられます。
訂正印を利用する書類の別の箇所にも印鑑が押されている場合は、一般的にその印鑑と同じものを使います。そのため、実印を使用する書類には実印で、銀行印を使用する書類には銀行印で、同様の印鑑で訂正印を押すようにしましょう。
ゴム印
印鑑の文字部分がゴム素材でできている印鑑です。上記で挙げたような用途で使われることは少なく、あらかじめ会社名や店名、住所や電話番号が印字されているものが多いです。よく記載する文書の記載間違いを防ぎ、時短による業務効率化を図る目的で利用されます。重要な契約や手続き時の利用は推奨されていないため、注意しましょう。
印鑑届出書が必要な場面
印鑑届出書は、どの場面で提出することになるのでしょうか。必要なタイミングは意外に多いものです。以下のような場合にすぐ提出できるように、用意しておきましょう。
法人設立時
会社を立ち上げるとき、つまり法人設立時には、代表社印を作るために、法務局へ印鑑届出書を提出することになります。ただし、この提出は登記申請をオンラインで行う場合、令和3年2月15日より任意となりました。また、登記申請をオンラインで行う場合で印鑑届出書を提出するときは、従来は書面で提出する必要がありましたが、こちらも令和3年2月15日より、オンラインの電子証明書として作成し、一括送信が可能になりました。
登記申請の時点での印鑑届出書の提出は任意であるものの、法人の実印を登録する場合には印鑑届出書を提出しなければならないため、いずれにしろ作成する必要があることは覚えておきましょう。
登記申請も印鑑届出書の提出も、オンラインで一括送信が可能です。郵送の手間も省けるため、積極的に利用することをおすすめします。
会社の代表者が変更されたとき
法人が印鑑届出書を提出する場合、印鑑提出者となるのは基本的に会社の代表者です。その代表者に変更があった場合は、登記簿記載の内容を変更する手続きである変更登記が必要であり、この変更登記と同時に、印鑑届出書を再提出する必要があります。登録情報を変更する場合に提出する書類は「改印届出書」とも呼ばれます。フォーマットは印鑑届出書と同じです。
会社の解散後に清算人を選出した場合
会社を解散する場合は、解散後の清算業務を執行する清算人が選出されます。これは会社の代表が変更されたと見なされるため、清算人を代表者とした、新たな印鑑届出書を提出しなければなりません。ここでも、上記の代表者変更時と同じく、改印届出書という形で提出されるケースが多いです。
印鑑届出書のひな形と提出時の書き方
印鑑届出書は、法務省のサイトからフォーマットをダウンロードして記入することになります。各項目の書き方について、簡単にご紹介します。
届出印
法務局に登録したい印鑑をここに押印します。これが実印として登録されるため、にじみがないように、鮮明に押印しましょう。鮮明ではない場合、正確に登録できず、届出書が受理されないこともあります。
商号・名称
会社名や屋号などの名称を記入します。
本店・主たる事務所
会社や事務所がある場所の住所を記入します。
印鑑提出者
ここには資格・氏名・生年月日の記入欄があります。資格には、印鑑提出者つまり代表者の役職を記入します。代表取締役や取締役などは上部に記載されているため、丸で囲みましょう。氏名と生年月日も、それぞれ代表者の情報を記入します。
会社法人等番号
会社法人等番号を記入します。ただし、会社法人等番号は設立後に付与されるため、不明な場合は記入不要です。
印鑑カード引き継ぎの有無
印鑑カードとは印鑑登録後に発行されるカードで、印鑑証明の交付手続き時に必要になります。新たに会社を設立する場合は印鑑カードを新しく受け取るため、「印鑑カードは引き継がない。」にチェックを入れます。代表者変更などにより印鑑届出書を作成している場合は、「印鑑カードを引き継ぐ。」にチェックを入れましょう。
届出人
届出人の住所と氏名を記入して、横に個人の実印を押印します。届出人が代理人になる場合は、押印不要です。
記入時の注意点
記入項目は複数ありますが、そのなかでもとくに注意しておかなければならない点を紹介します。
届出印はサイズに注意すること
届出印として押印する印鑑のサイズには規定があります。印鑑届出書の注意書きにも記載されており、辺の長さは1cm超、かつ3cm以内の正方形に収まるものでなければなりません。この「辺の長さ」という定義については、円形の印鑑である場合は直径で算出します。サイズに合わない印鑑を使わないように気をつけましょう。
代理提出の場合は委任状の欄を記載する
代理人が印鑑届出書を提出する場合は、「届出人」の項目横にある「代理人」へチェックを入れ、下部にある委任状の欄を記入しましょう。住所と氏名を記入する箇所が2箇所ありますが、上側には代理人の住所氏名、下側には委任者の住所氏名を記載したうえで、委任者の実印を押印します。印鑑届出書を代理人が提出するケースが多くないとされていますが、それでも委任の仕組みがある以上、代理人の提出時には記入漏れがないように作成しましょう。
印鑑届出書はポイントを押さえて正しく作成
印鑑届出書は、これから仕事や重要な手続きに使う実印を登録するための重要な書類です。届出書がなければ正式に認められず、実印としての効力を得られません。
実印はビジネスをはじめ、さまざまなシーンで活用されます。必要な機会が出てきたら印鑑届出書をすぐに提出できるようにしておきましょう。印鑑届出書を作成する場合は正しく受理されるように、届出印を鮮明に押印すること、記入すべき情報を過不足なく記入することに留意しましょう。
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