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手形はかねてより商取引の中で用いられてきた決済法です。しかし、手形の仕組みやかかる税金について理解していなければ、実際に取り扱う場合に悩んでしまいます。
会社経営者や個人で取引先と金銭のやりとりが発生する方は、今後手形を作成する場合や受け取る場合も多くなるでしょう。そのため、手形の知識は必ず押さえておいた方がよい分野です。また、手形は印紙税の対象にもなるため申告漏れなどのリスクには注意が必要となります。
当記事では手形について、種類や税金などを幅広く紹介します。
仕事において発生する税金には、法人の所得に課される法人税や個人の所得に課される所得税などさまざまな種類があります。金銭をやりとりするうえで発生する契約書や領収書などの書類には印紙税がかかる場合もあります。
印紙税は契約書や領収書といった印紙税法により定められた文書(課税文書)の作成で発生する税金です。同じ契約書や領収書でも税金が発生する条件に違いがあるため、正しい知識を身につけておくことが必要となります。印紙税の納税には収入印紙を購入して、該当する課税文書に貼りつけることで納税の証拠とします。
印紙税は課税文書を作成する際にかかる税金ですが、その文書の一つに手形があります。
手形とは、規定の金額を期日までに支払う約束を記した証書のことで、商取引の中でも現金に代わる決済の手段としてはよく用いられる手法です。
一般的に手形を発行する人を振出人、手形を受け取る人を受取人と呼びます。手形にもいくつか種類があるため、それぞれの違いもふまえて以下で紹介します。
約束手形は、振出人が受取人に対して、支払い期日を記して約束した書類のことを指します。約束手形の特徴は、振出人と受取人の二者間での取引になる点にあります。
受取人は指定の支払い期日において、金融機関で手形を呈示することより現金化可能です。約束手形の発行には当座預金口座の開設が必要となります。開設には当座勘定契約を金融機関と結ぶ必要があるため、一定の信用がなければ手形は発行できません。
約束手形が振出人と受取人の二者間取引であるのに対して、間に支払人が入る三者間取引を行うのが為替手形です。振出人が支払人に依頼する形で、受取人に支払いを行ってもらう取引形態になります。
約束手形の発行に必要な当座預金口座が開設できていない場合や、取り立てを確実に行うために為替手形が利用されるケースが多いです。
書類に金額や日付を記載して相手に渡すやりとり自体は小切手も共通ですが、手形とは現金化できるタイミングが異なります。
小切手は振出人から受けとった直後に現金化が可能ですが、手形の場合は指定の期日にならなければ原則現金化ができません。また、振出人は預金口座に該当金額が入っていなくても手形を振り出せますが、小切手は残高不足の場合は振り出せません。
このように、振出や受取にも手形と小切手には違いがあるため、それぞれの特性は正しく理解しておきましょう。
約束手形も為替手形も、手形に記載された金額に応じて印紙税が課税される仕組みになっています。手形金額ごとの印紙税額は、以下の表をご覧ください。
スクロールできます出典:No.7103 約束手形又は為替手形|国税庁
記載された契約金額 税額 10万円未満のもの 非課税 10万円以上100万円以下のもの 200円 100万円を超え200万円以下のもの 400円 200万円を超え300万円以下のもの 600円 300万円を超え500万円以下のもの 1,000円 500万円を超え1,000万円以下のもの 2,000円
契約金額が1,000万円を超える手形も、金額に応じて税額が変わってきます。また、手形の振出時に金額を記載しない手形のことを白地手形と呼びます。振出の時点で金額が記載されていなければ非課税扱いとなり、金額が後から補充された際に補充者に該当金額分が課税されます。
印紙税の課税対象であるにもかかわらず、印紙を貼り忘れた場合は、ペナルティとして過怠税が発生します。通常の印紙税にくわえて2倍の金額、つまり元々の印紙税額の3倍の過怠税を支払わなければならないため注意しましょう。
仕事の取引などによる支払いをあえて手形で実施する目的は、さまざまなメリットがあるからです。以下に手形利用におけるメリットを紹介します。
手形取引では支払利息がかからないのが大きな特徴です。手形の振出時に記載していた金額だけが期日に現金化されるため、商品やサービスの購入時にわざわざ借金で利子を発生させる必要がなくなります。
手形取引は振出の時点で金銭的な支払いが行われた扱いになります。そのため、現金がない場合であっても、手形取引で商品やサービスの購入が可能です。
売上が入るタイミングで期日を設定するなどしておけば、ある程度会社の資金コントロールが可能です。クレジットカード決済のように、実際の支払いには猶予を持たせて商品を購入できるイメージとなります。
上記のような特徴から手形取引はよく利用されています。
約束手形では当座預金口座の開設が振出に必要なため、振出可能であることは金融機関から一定の信頼を得ている証拠にもなります。そのため、手形の振出が可能なことは社会的な信用を高める要素にもなるのです。
手形は指定の期日になったら当座預金口座から引き落とされて現金化、受取人のもとへ渡る流れになります。この期日になっても当座預金口座の金額が足りなかった場合は取引が正しく履行されず不渡りを出すことになります。
不渡りを6カ月以内に2回出してしまうと、振出側は金融機関との取引停止処分、またすべての金融機関に不渡りが通知され、2年間融資が受けられない事態に陥ります。そのため、融資を受けている企業は、この時点で事実上の倒産が確定してしまう大変な問題にまで発展しかねません。1回不渡りを出した場合でも取引先には多大な迷惑をかけるため、信用問題や損害のリスクは大きいです。
残高不足により支払い不能な不渡りは1号不渡りとも呼ばれます。手形の形式に不備がある場合は0号不渡りとして手形の効力も発揮されないためペナルティは課せられません。しかし、受取人からの信用低下のリスクはあるため注意しておきましょう。
前述した0号不渡りを発生させる原因のひとつが、手形の記載内容の不備です。手形の記載内容に漏れがないかは前もって振出人が確認しなければなりません。まった、受取人も受取後に必要な箇所がすべて記入されているかを注意深く確認する必要があります。
基本的に約束手形の場合は、以下の項目が必ず記載されているかを確認しておきましょう。
・約束手形であることの文言
・一定の金額を支払う約束の文言
・手形金額
・手形の決済日(満期)
・支払い地
・受取人の名前
・手形発行日と振出地
・振出人の名前
契約書や領収書と同様に、電子契約サービスを利用して振出された手形では印紙税は金額にかかわらず不課税になります。つまり、電子契約サービスによって作られた手形では印紙を貼りつける必要がなく、印紙税が発生しないことになります。
電子契約サービスでは複雑な仕事上の文書もまとめて管理可能でコスト削減にもつながります。まだ導入していない企業や個人の方は業務効率化のためにも積極的に導入を検討してはいかがでしょうか。
手形取引について、手形の種類やかかる印紙税額を紹介しました。手形の利用にはメリットが多いものの、印紙税額や不渡りを起こした場合のリスクについてよく理解することが必要です。問題が起こった後では取り返しのつかない事態になる可能性があります。
振出人も受取人も、どちらの立場になる場合であっても手形についての知識は正しく身につけておきましょう。また、可能であれば手形をはじめとする課税文書は電子契約サービスを用いて発行するとよいでしょう。紙ではなくデータとして作成することで、非課税によるコスト削減や一元管理による業務効率化などさまざまなメリットがあるためおすすめです。
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