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仕事で作成する契約書は、状況によっては印紙税法によって収入印紙の貼りつけが義務付けられる場合があります。契約書において、どれが課税文書となるのか、税額はいくらなのかといった知識がなければ、作成の際に困ってしまいます。
請負契約は、自社業務を外部委託する際の契約形態のひとつです。請負契約時に交わす請負契約書にはさまざまな種類があるため、印紙税の仕組みとあわせて覚えておくとよいでしょう。
当記事では請負契約書の種類や、かかる印紙税について紹介します。これからの仕事で請負契約書の作成や、受け取る予定がある方も、ぜひ参考にしてください。
印紙税とは、契約書をはじめとする領収書や手形など、経済取引に際して作成される文書に課せられる税金のことを指します。これらの文書に課税される税金は印紙税法で金額が定められており、指定の額に応じた収入印紙を文書に貼りつけることで納税の証明になります。どんな文書に印紙税が発生するのか、また金額ごとの納税額にも差があり、貼りつける収入印紙も異なってきます。そのため、過誤納などを防ぐためにも正しい知識を身につけなければなりません。
印紙税は税金であるため、税務調査時には契約書をはじめとする書類も当然調査されることになります。通常の税務調査はもちろん、印紙税の納税状況のみを単独で調査するケースも存在します。その際、印紙税の未納が発覚した場合は、他の税金の未納時と同じくペナルティが課せられるため注意が必要です。
印紙税の課税対象になる文書は、印紙税法で定められたものに限られており、以下3つの項目のすべてに当てはまる文書のことを指します。
(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
出典:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁
基本的に仕事でよく交わされる契約書や領収書はほとんどが課税文書になりうると認識しておきましょう。
課税文書はその種類に応じて、納税義務が成立するタイミングも異なってきます。納税義務の発生は領収書の場合は交付された時、契約書の場合は双方が署名または押印し、意思の合致の証明があった時です。いずれの場合も課税文書の作成者が納税義務者になります。
仕事においては契約書や領収書をはじめ印紙税の納付対象となる文書を多数作成する機会があります。そのため、それぞれの文書に対して、印紙税の納付義務があるのかを確認しなければならず、収入印紙の貼り忘れなども多くなってしまうでしょう。契約書それぞれにかかる金額や課税文書かどうかは必ず事前に押さえておかなければなりません。
課税文書のひとつである契約書は、仕事上の取引において、たびたび作成される文書です。そのため、契約書にかかる印紙税について正しく理解しておかなければ、税務調査時に未納のペナルティを多数受けてしまう場合があります。
文書が多くなればなるほど、後になってからの確認に手間がかかってしまいます。1枚1枚を適切に処理して管理することを心がけましょう。
次項からは、請負契約時に交わされる請負契約書について紹介します。
工事請負契約書は文字通り、工事の実施に伴い交わす契約書です。一方が工事の完成を約束、もう一方が完成に際して規定の報酬を支払う約束を締結するものとなります。
契約書の作成は、当事者であればどちらが作成しても問題はありません。工事請負契約書が作成される場面としては、住宅の建設やリフォームなどの工事を元請けから発注するといったケースです。
請負契約は仕事の完遂が目的のため、仕事が完成しさえすればその過程について問われることはありません。しかし、工事が完成しない場合は報酬を受け取れない契約となっているため、お互いの認識にずれがないことを確認したうえで作成しなければなりません。
発注者が契約内容を記載した注文書を受注者側に送って、受注者側がその注文を受けることを約束するために作成する文書が注文請書です。注文請書は必ず作成しなければならない義務はありませんが、受注したことを書面上に残しておくことで、契約後の認識齟齬によるトラブルなどのリスクを軽減できます。
注文請書は、請負契約で交わされる場合は印紙税の課税対象になります。注文請書が交わされるケースとしては、物の売買を行う売買契約もありますが、売買契約の場合には印紙税の課税対象になりません。同じ注文請書でも課税・非課税が分かれてくるため、請負契約時は金額次第で印紙税が発生することを覚えたうえで文書を発行しましょう。
広告の取引に関する契約が記載された文書で、広告主と広告会社の間で契約が交わされる際に作成されるケースが多いです。新聞やテレビ局といったメディアが広告を作成する際の取引もこれに該当します。広告を作成するための請負に該当する場合には、広告契約書にも印紙税が課されます。
企業と、企業の会計監査を行う監査人との間で交わされる契約書です。企業の会計監査は監査法人の公認会計士が行うものであり、会計監査という業務の完遂よって報酬が支払われる請負契約に該当するため、印紙税の課税対象となります。
前述した注文請書と同様に、物品加工注文請書も印紙税が発生します。物品加工注文請書は、文字通り物品の加工を注文する際に作成される注文請書であり、請負契約として交わされるため印紙税の課税対象です。
俳優や脚本家、スポーツ選手などが自身の技術を提供することを目的に事務所やチームに所属する際に交わすのが専属契約書です。与えられた仕事を自身の技術をもって遂行するため請負契約とみなされ、印紙税の課税対象になります。
請負契約書を交わす際に必要となる印紙税額は、契約金額によっても異なります。収入印紙を貼りつけていても、契約金額に対する税額として相応しくない印紙であれば未納扱いになってしまうため注意が必要です。
以下の表は、契約金額ごとに課せられる税額をまとめたものになります。
スクロールできます出典:No.7102 請負に関する契約書|国税庁
記載された契約金額 税額 1万円未満のもの 非課税 1万円以上100万円以下のもの 200円 100万円を超え200万円以下のもの 400円 200万円を超え300万円以下のもの 1,000円 300万円を超え500万円以下のもの 2,000円 500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円 1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円 5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円 1億円を超え5億円以下のもの 10万円 5億円を超え10億円以下のもの 20万円 10億円を超え50億円以下のもの 40万円 50億円を超えるもの 60万円 契約金額の記載のないもの 200円
上記のように、契約金額が1万円未満であれば非課税となり、1万円以上の契約金額から印紙税が発生します。該当の金額分の収入印紙を貼りつける必要があるため、注意しておきましょう。
建設工事請負契約書に関しては印紙税の軽減措置があります。
これは租税特別措置法によって定められた軽減措置で、契約金額が100万円以上かつ平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成された建設工事に関連する契約書が対象になります。請負契約の締結当初に作成された契約書をはじめ、途中で金額変更や請負内容の追加などで作成される変更契約書・補充契約書も軽減措置対象となるため覚えておきましょう。
軽減措置対象の契約書にかかる税額は以下の表の通りです。
スクロールできます出典:建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置|国税庁
契約金額 本則税率 軽減税率 100万円を超え200万円以下のもの 400円 200円 200万円を超え300万円以下のもの 1千円 500円 300万円を超え500万円以下のもの 2千円 1千円 500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円 1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円 5千万円を超え1億円以下のもの 6万円 3万円 1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円 5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円 10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円 50億円を超えるもの 60万円 48万円
上記のように本則税率と比べて5割、金額の高い契約書でも2割の税率が軽減されます。期間中に建設工事請負契約書を作成する場合は、軽減措置があることを覚えておきましょう。
気を付けておかなければならないのが、どのような工事が建設工事に該当するかです。国土交通省のホームページには、建設工事の種類について以下のようにまとめています。
スクロールできます出典:建設業法第二条第一項の別表の上欄に掲げる建設工事の内容|国土交通省
建設工事の種類 建設工事の内容 土木一式工事 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。) 建築一式工事 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 大工工事 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 左官工事 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 とび・土工・コンクリート工事 イ 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、工作物の解体等を行う工事ロ くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事ハ 土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事ニ コンクリートにより工作物を築造する工事ホ その他基礎的ないしは準備的工事 石工事 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 屋根工事 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 電気工事 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 管工事 冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 タイル・れんが・ブロツク工事 れんが、コンクリートブロツク等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロツク、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 鋼構造物工事 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 鉄筋工事 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 ほ装工事 道路等の地盤面をアスフアルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等によりほ装する工事 しゆんせつ工事 河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事 板金工事 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 ガラス工事 工作物にガラスを加工して取付ける工事 塗装工事 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 防水工事 アスフアルト、モルタル、シーリング材等によつて防水を行う工事 内装仕上工事 木材、石膏ボート、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペツト、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 機械器具設置工事 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 熱絶縁工事 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 電気通信工事 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 造園工事 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事 さく井工事 さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 建具工事 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 水道施設工事 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 消防施設工事 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 清掃施設工事 し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事
上記表に該当しないものは建設工事とみなされず軽減税率の対象にはならないため、契約書を交わす時点で業務内容について明確に確認しておきましょう。
東日本大震災と、平成28年4月1日以降に発生した自然災害の被災者が作成する契約書についても、状況に応じて印紙税が非課税となるケースがあります。非課税対象となる契約書は、消費貸借に関する契約書と不動産の譲渡に関する契約書、建設工事の請負に関する契約書です。
いずれも対象の契約書を作成した期間などで非課税の対象になるかも変わってくるため、よく確認のうえ非課税の是非を判断しましょう。
契約書の金額が課税対象であるにもかかわらず収入印紙を貼り忘れる場合もあり得ます。税務調査で貼り忘れが明らかになった場合は、収入印紙代にくわえて過怠税のペナルティが発生します。
過怠税の額は本来の印紙税額とその2倍、つまり合計で3倍に相当する金額を支払わなければなりません。ただし、税務調査前に自己申告で印紙税の未納を申告した場合は、過怠税は本来3倍のところが1.1倍へと減額されます。
しかしこの減額は、単純な貼り忘れや課税文書だと認識していなかったと正当に判断されたケースにしか適応されません。意図的な未納や何度も繰り返されている場合は適応されない可能性が高いです。貼り忘れのないようにで、契約書の金額が課税対象かを必ず確認してすぐに収入印紙を貼りつけましょう。
請負契約書は契約金額に応じて印紙税が発生し、収入印紙の貼りつけなど常に注意する必要があります。しかし、電子契約であれば、印紙税は課せられません。これは、電子契約を締結し、相手方に電子データを送付する行為が交付に該当せず、課税文書を作成したことにならないためです。
国税庁も以下のように、電子契約で交わされた契約書については課税文書を作成したことにはならないと見解を示しています。
印紙税法上の「契約書」とは、印紙税法別表第一の「課税物件表の適用に関する通則」の5において、「契約の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。」と規定されている。
出典:(別紙)|福岡国税局
また、印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。
上記規定に鑑みれば、本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。
上記のように、電子契約であれば契約書も金額にかかわらず課税対象にはなりません。コストや書類管理の手間を削減して業務効率化を図るためにも、積極的に電子契約を導入することをおすすめします。ただし、電子契約として課税文書の対象とはならないのはあくまでデータ上のみで、それを印刷するなどして現物の交付がなされた場合は課税文書の作成に該当するため印紙税が課せられることは覚えておきましょう。
電子契約サービスはさまざまな種類があります。いずれのサービスも使いやすさやセキュリティ性などを高めて多くのユーザーを獲得していますが、自社の状況に応じて適するサービスは異なります。そのため、自社にかかるコストや業務効率化の度合いなどを比較したうえで、電子契約サービスを選択するとよいでしょう。
請負契約書の種類や金額ごとにかかる税額、印紙税のかからない電子契約について紹介しました。印紙税は税金の中でも特に見落としが多くなっており、税務調査時になって未納が発覚するケースはとても多いです。単純な貼り忘れから、貼りつけた収入印紙の金額ミスまで、多くの企業や個人が認識を誤って過怠税を支払っているのが現状です。従来通り紙で契約書のやりとりを行う場合は、契約金額に応じた正しい印紙税額について理解して、貼り忘れのないように気を付けましょう。
また、仕事上で請負契約書を交わす機会が多い企業や個人については、将来的なコスト削減や業務効率化につなげるためにも電子契約サービスの利用をおすすめします。電子契約サービスにもさまざまな種類があるため、コスト面や使いやすさ、セキュリティ面など自社にあったサービスを吟味して積極的に導入を検討しましょう。
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