株主総会は、株式会社の最高意思決定機関です。毎年6月には、多くの会社の株主総会が開催されています。
株主総会の開催にあたっては、さまざまな準備が必要です。その中の一つに、参加した株主へのお土産の問題が存在します。
株主総会へは、遠方からの参加者も多くなっています。参加の労に報いるためにも、何かお土産を渡したいと思うものです。
当記事では、株主総会におけるお土産について解説を行っています。昨今の株主総会におけるお土産事情などを把握して、今後の参考としてください。
目次
株主総会におけるお土産の役割とは?
株主総会で参加者にお土産を渡す企業は昔から存在します。しかし、なぜお土産を渡すのでしょうか。
お土産にはいくつかの目的があります。また株主には株主優待という特典も存在します。しかし、株主優待とお土産の違いについては、良くわからない方も多いでしょう。
総会への参加を促すため
株主総会でお土産を渡す目的として、株主の参加を促すことが挙げられます。何かお土産がもらえるのであれば、参加したいと思う株主も多くなるでしょう。多くの株主が総会に参加すれば、盛況になります。また、株主と良好な関係を構築していることのアピール効果も期待できます。
近年、日本では資産運用の動きが活発です。そのため、個人投資家も増加しています。そのような事情を背景に、個人投資家の獲得に力を入れている企業も多くなっています。
個人投資家の興味を惹くお土産を渡せば話題になります。また、話題に上れば更なる個人投資家の獲得が期待でき、好循環となります。
自社製品の販促のため
株主総会のお土産として、自社製品を渡している企業も少なくありません。これは自社製品の販促が目的です。株主に自社製品を良く知ってもらいたい、実際に使ってほしいという思いから自社製品が選択されています。
近年では、誰もがSNSなどで情報発信できる時代です。もし商品を気に入ってもらえれば、その人がSNSで情報発信してくれるかもしれません。自分たちが何もしなくても、ユーザーが勝手にPR活動してくれるかもしれないわけです。
株主優待との違い
株主には、株主優待を受ける権利があります。これを目的に株式運用している個人投資家も少なくありません。株主優待とは一定の株式を保有している株主を対象に、自社製品やサービス券などを渡す制度のことです。
株主優待とお土産には違いがあります。まず誰に渡すかですが、お土産の場合、実際に株主総会に参加する株主だけに渡されます。しかし、株主優待は一定数の株式を持っている株主であれば、誰でも受け取れます。株主名簿の情報にもとづき、企業が条件を満たした株主全員に渡します。
また株主優待は、一定条件を満たした株主の持つ権利といえます。一方お土産に関しては、そのようなルールはありません。あくまでも企業側のサービスという側面があります。実際に株主総会を開催しても、何もお土産を渡さない企業も多く存在します。
お土産の適切な予算は?
株主総会を開催するにあたって、株主にお土産を渡したいと考える担当者の方も多いでしょう。一例として、2020年に開催された株主総会におけるお土産の概要についてみていきますので、参考にしてください。
お土産の予算について
東京株式懇話会の2020年度全株懇調査報告書によると、最も多かったお土産は、「他社製品で2,000円未満」で39.0%でした。続いて「他社製品で1,000円未満」が20.8%で続きます。この結果からわかることは、自社製品をお土産として配っている企業は少ない点です。自社製品を配ったと答えた企業は全体の3割強でした。
また、高額なお土産を渡していないこともわかります。自社・他社関係なく予算だけで比較すると2,000円未満が最も多く、52.1%と過半数を占めています。一方3,000円以上のお土産を株主に渡したと答えた企業は全体の3.6%にすぎません。つまり、それほど高額な商品をお土産にする必要はなく、無理のない範囲で予算を考えれば良いでしょう。
お土産の個数について
1人に何個お土産を渡したかというアンケート調査も行われています。結果としては、1人1個としている企業が78.8%と多数を占めました。従来からと今回からを合わせると79.6%と8割近くになっています。
一方で行使書などの枚数をベースにしている企業も一部で存在します。従来と今回両者を合わせると19.3%となっています。もし渡す個数で悩んでいるのであれば、1人1個をベースにして考えると良いでしょう。
お土産はいつ渡すべき?
お土産を渡すタイミングで迷うこともあるでしょう。タイミングについては、受付時と退場時が渡すのに自然だといえます。調査において、多かったのは受付時となっており、65.3%とほぼ全体の2/3を占めています。一方の退場時も34.7%と1/3程度を占めました。
株主総会には参加しないが、お土産は受け取りたいという株主の方もいるようです。そこで企業の中には、お土産目的で来場した株主専用の受付を設ける企業も多くなっているようです。先ほどの報告書の中で、受付を設置している企業は全体の12.7%で1割以上を占めています。特に上場企業で、専用の受付を設置している場合が多くなっているようです。
人気のお土産は?主要企業の事例を紹介
株主総会でお土産を渡すにあたって、何を渡せば良いかわからないこともあるでしょう。どのようなお土産が人気なのか、大手企業の事例について紹介します。ぜひお土産選びの参考にしてください。
食べ物が人気
株主総会のお土産で定番かつ人気の商品としては食べ物が挙げられます。食べ物は、世代関係なく高い支持を集めるからです。
食べ物を土産として渡している企業を見てみると、食品メーカーが中心です。自社製品を配っている企業も少なくありません。食品メーカーであれば、自社製品をお土産として渡すことを検討してみても良いでしょう。
株式会社不二家
たとえば不二家は2020年にはカントリーマアムやミルキーなどの、自社製品でも人気の高いお菓子をお土産に選んでいます。
江崎グリコ株式会社
江崎グリコもプリッツやビスコ、コロンなどのロングセラー商品をお土産として選択しました。
キユーピー株式会社
お菓子メーカー以外にもキユーピーが自社製品をお土産として渡しています。マヨネーズや各種ドレッシングなどの自社製品がお土産となっています。
日用品も人気
株主総会のお土産として、日用品を配布している企業も少なくありません。日常生活で必要な商品は、誰もがもらって困りません。実用性を重視しているのであれば、日用品で需要の高いアイテムの中からピックアップすると良いでしょう。
株式会社キャンドゥ
たとえば日本全国に100円ショップを展開しているキャンドゥでは、インソールや洗濯ネットなどを過去に配布した実績があります。靴のインソールはあって困るものではありません。また洗濯ネットも傷みやすい衣服を洗濯するときにあると便利です。しかし、自分で購入する必要はないと考える人も多いでしょう。そのようなお土産がもらえるのであれば、株主総会に参加してみようかと思う株主も出てくるかもしれません。
株式会社資生堂
資生堂は自社の化粧品をお土産として渡しています。スキンケアに関心のある方にとっては興味深いお土産となるでしょう。洗顔料やパーフェクトホイップ、クレンジングシートなどスキンケアに欠かせないグッズをお土産としています。
通常、株主総会のお土産は受付時もしくは退場時に渡すのが一般的です。しかし、資生堂は後日送付のスタイルをとっていることが特徴的です。議決権を行使した株主全員に郵送する形でお土産を配っています。
スギホールディングス株式会社
スギホールディングスは、ドラッグストアであるスギ薬局を全国に展開している企業です。同社では、自店舗で取り扱っている日用品の詰め合わせを株主に対して配布しています。過去のデータを見てみると、粘着テープや温泉の素、ラップ、ばんそうこうといった日用品をお土産にしています。いずれも自宅で使えるものなので、株主にとっては魅力的なお土産となるでしょう。
チケットを渡しているところも
株主総会のお土産として、チケットや金券などを渡している企業も少なくありません。
松竹株式会社
たとえば、松竹株式会社では映画観賞券をお土産として配布しています。映画を数多く制作している松竹ならではのお土産といえます。鑑賞券の配布には、自社制作の映画を多くの人に見てもらえるメリットがあります。
同社では、そのほかにもユニークなサービスをお土産として提供しています。早めに受け付けを済ませたら、株主総会開始まで本社1階にある喫茶店でドリンクが無料になります。さらに株主総会の日に映画館に行けば、フリーパスで入場できるなどユニークなお土産が充実している企業です。
イオン株式会社
イオン株式会社では、日本全国のイオンで利用できる優待チケットセットをお土産として配っています。イオンは日本全国に店舗を展開しているため、近所に店舗があるという方も多いでしょう。もし近くにイオンがあれば、優待チケットでお得にショッピングできるため魅力的です。500円分の飲食券や食料品が5%割引になるチケットなどは魅力的なお土産です。
お土産は廃止傾向に
株主総会の参加者を対象にしたお土産は、多くの企業が行っていました。ところが近年、お土産を廃止にする企業が出てきています。その理由として、不公平感の払しょくが挙げられます。
お土産は、株主総会に参加した株主だけが受け取れます。しかし、何らかの事情で出席できない株主はもらえません。また、運営負担が大きいことも、お土産が廃止方向に進んでいる理由の一つです。
株主総会に出席する株主が増えればお土産代だけでなく、会場確保に要するコストも増大してしまいます。今後も廃止の動きが加速する可能性があるでしょう。
まとめ
株主総会の参加者向けにお土産を提供している企業も少なくありません。特に人気なのは、食料品や日用品など老若男女誰もがうれしいものです。
しかし、株主総会の土産は廃止方向にかじが切られつつあります。コスト面の問題や株主総会の出席・欠席によって、不公平感が出てしまうからです。
今後の株主総会では、お土産の取り扱いをどうするかについても検討しておきましょう。