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親が高齢になり介護が必要になった際、自分で介護するのか、それとも施設に入所してもらうのかは非常に悩ましいテーマです。介護サービスの利用に対する費用面の問題はもちろん、介護と仕事の両立が果たして可能なのかなど、考えるべきことは多々あります。
「老老介護」や「介護離職」は今後ますます社会問題化するといわれています。なお、厚生労働省の雇用動向調査によると、2022年の1年間に介護や看護が理由で離職した人は7万人を超えるのことです。
本記事では、親の介護を施設に任せることについて、そのメリットや生じうる問題、費用負担をできるだけ軽くするための対策を中心に深掘り解説します。
現在介護業界ではDX化が急速に進んでいます。DX化の要素の一つ「電子契約」について、次の記事で詳しく解説しています。介護業界で業務改善に取り組まれている方必見の内容です。ぜひご覧ください↓
親の介護を施設に任せることで、以下のようなメリットがあります。
親の介護を施設に任せれば、施設の職員が日常生活の介護を行うことになります。施設の職員は、介護のプロです。介護に関する専門的な知識や技術を身につけており、高い対応能力があります。一般の人では対応が難しいような場面でも適切に対応してくれるため安心して任せられるのがメリットです。
また、自宅で自分が親の介護をする場合、仕事や家事などと並行して行うことも多く、介護の質が下がってしまう可能性が大いにあります。一方、介護施設に任せた場合は24時間365日手厚い介護を受けられるでしょう。
親の介護を自分で行う場合には、多かれ少なかれ自分の生活を犠牲にすることになります。自分だけでなく、配偶者や子どもにも負担をかけることになる場合もあるでしょう。
その点、親の介護を介護施設に任せることで、仕事や子育てへの影響を最小限に抑えることができます。
家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的に、2000年に創設されたものが介護保険制度です。
出典:厚生労働省「介護保険制度について」
介護施設に入居すると、ほかの入居者と交流を持つことができます。ほかの入居者も介護が必要な状態であることが予測されますし、同じくらいの年齢の入居者もいるでしょう。レクリエーションなどを通じて、仲良くなることも多い傾向にあります。お互いに会話をする機会を持てるため、症状の改善につながる可能性もあります。
また、介護施設によっては理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家がリハビリを行います。これにより身体的機能の回復も期待できるでしょう。
親の介護を施設に任せる際には、次のような問題が生じる可能性があります。
介護施設への入居にネガティブなイメージを抱いている高齢者は少なくありません。介護施設に入居してしまったら、もう人生の終わりが近いと考えている高齢者もいるでしょう。そのため、介護施設への入居を勧めると、あまり気が進まない反応を示される可能性があります。介護施設への入居を進めたことで、見捨てられたと捉えられてしまうこともあるでしょう。
比較的元気な状態のうちは、そのような反応を示すのはごく自然なことです。介護施設への入居は決してネガティブなことではなく、健康で長生きするためのことだと説明する必要があります。
もちろん「介護のことで家族に迷惑をかけたくない」と考えている方も多いでしょう。いずれにせよ、介護サービスや介護保険について知るきっかけにもなるため、できるだけ早い段階で将来のことについて家族で話し合っておくことは大切なことです。
介護施設へ入居するには、多額の費用がかかります。金銭的に余裕のある家庭でなければ、難しい面もあるでしょう。費用について、家族観で誰がどのくらい負担するのかという問題もあります。兄弟が多ければ、そのぶん1人あたりの負担額は小さく済みますが、揉め事につながるリスクも高くなります。親がまだ元気なうちに、介護費用に関することを話し合っておくのが望ましいでしょう。
介護施設を利用するかどうか検討する際に、大きな問題となる事柄の一つが「費用」です。
親の介護を施設に任せる場合には、入居時に一時金を支払う必要があります。そして、入居期間中は毎月月額費用を支払わなければなりません。
入居時一次金は施設によってかなり差がありますが、平均的には20万~30万円程度です。なお、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、原則として一時金なしで利用できるところもあります。
月額費用に関しても、施設による差が大きいです。要介護認定や所得の状況によっても変わってきます。安い場合は5万〜10万円程度、高い場合には20万~30万円程度になります
サービスが充実している有料老人ホームであれば、さらに高額になるケースもあります。
自分で親の介護をする場合には、次のような問題が生じる可能性があります。
親の介護が必要な人の年齢は主に40代から50代くらいが中心で、働き盛りの年代です。そのため、仕事をしながら介護をすることになるでしょう。しかし、介護の負担はかなり大きく、仕事との両立は難しいのが実情です。短期間であればこなせたとしても、長期にわたると続けられなくなることも考えられます。その結果、「介護離職」をしてしまうケースも少なくありません。
厚生労働省の雇用動向調査によると、1年間に介護や看護が理由で離職した人は7万人を超えるのことです(2022年)。
仮に介護離職をすると、1日中つきっきりで介護をすることになります。その結果、介護離職前よりも介護が負担に感じられることもあるかもしれません。そのうえ、一度離職をすると以前と同等の仕事内容や収入を得られる仕事に就くのは難しい傾向にあります。十分な貯蓄ができなくなり、自分の老後が危うくなってしまう可能性もあるのです。
介護休業制度の拡充など、介護離職を防ぐためのさまざまな対策が取られています。
介護は、肉体的にも精神的にもきついものです。一時的な怪我や病気と違って、終わりが見えず、親の介護を長期間続けていて介護うつになってしまう人もいます。介護者自身も自立した生活をするのが難しくなってしまうリスクもあります。
もしそのような状態にあれば、適切な介護を継続することは非常に難しくなるでしょう。
これまで仲が良かった親子でも、介護が始まったことで次第に嫌いになっていき、不仲になる例も少なくありません。「施設に入れるのは可哀想だから」という理由によって自宅で介護をしていたはずなのに、これでは逆効果です。仲良しだった息子や娘と、人生の終わりが近くなってから不仲になってしまうとしたら、お互いにとってたいへん不幸な結末となってしまいます。
介護の負担をめぐって兄弟で揉めることも少なくありません。施設に任せない場合には、同居している兄弟や近くに住んでいる兄弟に負担が集中する傾向にあります。遠方の地域に住んでいる場合には、なかなか介護に協力できず、兄弟から嫌な顔をされてしまうかもしれません。
これまでは仲の良かった兄弟でも、親の介護をきっかけに不仲になる可能性があります。さらに、親が亡くなると相続の問題が発生します。不仲になっていることから、揉めてしまう可能性も高くなるでしょう。
親の介護を施設に任せたくても、費用面で難しいケースもあるでしょう。介護施設に入居するには、多くの費用がかかります。親の貯蓄だけでは足りないこともあるかもしれません。とはいえ、子ども自身も生活が大変で、費用を捻出できないケースも多いでしょう。こうした場合には、次のような方法で対処できる可能性があります。
同一住所に住みながら住民票を分けることを世帯分離と呼びます。介護費用は世帯収入を基準にしているため、親の収入は年金のみの場合には、世帯分離をすることで介護費用が安くなる可能性があります。
しかし、別世帯として扱われることで国民健康保険料が高くなったり、扶養手当や家族手当が使えないなどマイナスに作用したりする面もあるため、世帯分離を行う前に、メリットとデメリットについてよく検討してから決めるのが望ましいです。
介護費用の負担を軽減するための助成金制度や減免制度がいくつかあります。その多くは申請をしないと利用できません。そのため、利用可能なものがないかどうか一度洗い出してみましょう。たとえば、次のような公的制度があります。
所得が低い世帯が介護サービスを利用した場合、これらの制度を利用できる場合が多いです。いずれも所得水準に応じた負担金額の上限が定められており、申請をすることで超過分が払い戻されます。
また、所得税の医療費控除が介護費用の一部について対象になります。所得金額や医療費の金額によっては大きな控除にはならないかもしれませんが、介護費用の足しにできるでしょう。
ほかにも自治体によっては独自の助成制度を設けている場合があります。住んでいる自治体のホームページをチェックしてみたり、窓口で相談してみることをおすすめします。
介護施設によって、入居の際にかかる一時金や毎月支払う月額利用料に大きな差があります。基本的に大きな駅に近いところにある介護施設だと、月額利用料が高めです。費用面で親の介護を施設に任せるのが難しい場合には、郊外の介護施設を中心に探してみましょう。利用可能な範囲の月額利用料を設定している介護施設が見つかるかもしれません。
親の介護を施設に任せると決めたら、次のような手順で手続きを進めましょう。
なお、事前に要介護認定の取得や自治体および地域包括支援センターへの相談、ケアプランの作成などが必要です。介護保険に関する詳しい情報については、次の記事をご覧ください。
最初に自宅近くや同じ市区町村内にどのような介護施設があるのかどうか調べてみましょう。そして、それぞれの介護施設のホームページなどを見て、どのようなところなのかチェックします。良さそうなところが見つかったら、資料請求などをしてみてください。資料請求すると、建物内の設備やサービス内容、利用料金などについてより具体的で詳細な情報を知ることができます。最終的には、2〜3施設くらいに候補を絞り込みましょう。
候補となる介護施設に実際に見学しに行ってみましょう。見学に行ってみると、職員の人や入居者がどのような様子なのかわかります。設備なども実際に見ることができるため、入居後の生活についてイメージしやすくなるでしょう。
また、わからないことや詳しく知りたいことなどがあれば、その場でスタッフに質問することも可能です。介護施設によっては、体験入居できるところもあります。
入居したい介護施設が見つかったら、契約をしましょう。面談をして、必要書類を提出すると入居審審査が行われ、無事に審査を通過すれば契約書と交わして入居決定となります。契約時には重要事項説明書なども交付されるため、しっかりと目を通しておきましょう。
提供されている介護サービスは、お住まいの地域によって大きく異なります。要介護認定を取得するところから始めるという方は、まずはお住まいの自治体窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。
親の介護は想像以上に大変です。もし親の介護が必要な状態になったら、頑張りすぎずに施設に任せることも検討してみましょう。施設なら、プロの手で手厚く介護してもらうことが可能ですから、安心です。
費用面でネックになることも多いですが、助成金制度や減免制度などを利用することで入居のハードルが下がるケースもあります。費用負担の少ない介護施設も存在します。どうしても費用の捻出が難しければ、自治体・社会福祉協議会などに相談してみてください。
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