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有給休暇は正社員でなければ付与されないと思っている人は少なくありません。しかし、非正規雇用であるアルバイトやパートでも、条件を満たせば有給休暇は付与されます。企業の人事や労務部門で働く人なら、アルバイトやパートに提供すべき有給休暇の条件や日数などについて精通しておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、アルバイトやパートの方が有給休暇を取得するための条件と日数や賃金の算出方法について詳しく解説します。
アルバイトやパートのような非正規雇用でも、以下の2つの条件を満たせば有給休暇が取得できます。
それぞれの条件について詳しく解説します。
アルバイトやパートでも、その職場で6カ月以上継続して勤務していれば有給休暇付与の対象となります。なお、この条件は、正社員として雇用されている人も同様です。
そのため、アルバイトやパートの従業員を雇用する際には、有給休暇についても雇用契約書で明記しておかなければいけません。書き漏れがあるとトラブルになりかねませんので、注意しましょう。
所定労働日数とは、雇用契約書によって規定されている出勤日数です。たとえば3カ月で50日以上の所定労働日出勤という契約内容ならば、その8割となる40日以上出勤していれば、有給休暇の付与対象です。
なお、出勤日には、遅刻や早退した日も含まれます。その他にも、産休や育休を取得していた日も出勤日としてカウントされます。
先述した前提条件を満たしたアルバイトやパートには、有給休暇が付与されます。ただし、有給休暇が何日付与されるかについては、継続勤務年数や年間当たりの労働日数によって異なります。
週30時間以上もしくは週5日以上のシフトが入っている人は、フルタイム相当の労働時間と考えられるため、有給休暇の日数は最初の6カ月間が過ぎた時点で10日付与されます。
継続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
有給休暇付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
週当たりの労働時間が30時間未満でシフトが週4日以下の場合には、週何日働いているかで付与される有給休暇日数が決まります。具体的には、週1日勤務の場合には働き始めてから6カ月が過ぎた時点で有給休暇が1日付与されます。また、週2日の勤務なら有給休暇は3日、週3勤務なら5日、週4日の勤務では7日付与されることになります。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数※ | 継続勤務年数(年) | |||||||
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | |||
有給休暇付与日数(日) | 4日 | 169~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
2日 | 73~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | |
1日 | 48~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
なお、勤続年数が長くなれば有給休暇の付与日数も多くなりますので(最大20日間)、長く勤務している方は自身にどれくらいの有給休暇が付与されるのか、担当者に聞いておくと良いでしょう。
所定労働日数は雇用契約書締結時点のものを採用します。たとえば、入社半年後の更新タイミングで雇用契約上、週に4日間働くことになっていれば、7日間の有給休暇が付与されます。その3カ月後の更新で週に2日に労働日数が変化したとしても、ただちに有給休暇日数を3日間に減らす必要はありません。有給休暇日数は、有給休暇が付与される基準日時点における雇用契約の内容を反映します。
アルバイトやパートに付与された有給休暇は、付与された日から2年間以内に使わなければ利用できなくなる点に気をつけましょう。
有給休暇を翌年に繰り越すのであれば、最低でも繰り越した分は翌年中に消化しないと権利が消滅してしまいます。
アルバイトやパートでも、有給休暇を取得している期間には給料が発生します。正社員の場合、計算方法がすでに確立されている企業が多い一方、アルバイトやパートのような非正規雇用では、どのように有給休暇分の給料を計算すればよいかわからないケースは少なくありません。
そこで、非正規雇用の有給休暇取得における給料計算の方法について解説します。
なお、計算方法は複数あり、それぞれの会社の就業規則で定められた方法で算出します。
はじめに紹介するのは、通常の勤務日に支払われる賃金の60%を最低ラインとして、算出する方法です。多くの場合、日給や時給で賃金が支払われるアルバイトやパートはこの方法で算出されます。具体的には次の2つの賃金(原則と最低保証額)のうち、高い金額が平均賃金として支払われます。
まずは、過去3カ月にその従業員へ支払った給料の合計を、その3カ月における具体的な日数(※)で割った平均賃金から計算する方法をお伝えします。
※カレンダー上の日数
たとえば、過去3カ月間に25万円稼いだ従業員を仮定します。その3カ月間の日数が90日だったとすれば、その従業員の平均賃金(原則)は
25万円÷90=2,777円
と計算できます。
次に給料の合計を実際に働いた日数で割ったものに0.6をかける方法を紹介します。
この方法の場合、従業員が過去3カ月間に30日間働き、支払った賃金の合計が25万円ならば、平均賃金(最低保証額)は、
25万円÷30日×0.6=5,000円(※1円未満四捨五入)
となります。
この場合、原則として計算した額(=2,777円)を最低保証額(=5,000円)が上回っているため、有給休暇分の賃金として最低保証額を採用します。
参考:厚生労働省「平均賃金について【賃金室】」
仮にその従業員が労働したなら、いくらの賃金が発生していたかという仮定に基づいて計算する方法もあります。たとえば、雇用契約で時給1,000円だと計算しており、1日当たりの労働時間を4時間と設定していたなら、有給休暇中の賃金は
1,000円×4時間=4,000円
となります。
アルバイトやパートの日額計算では、健康保険で保険料の金額を計算する際に採用している標準報酬額を使う方法もあります。これは、標準報酬額を30で割ることで日割り計算する方法です。
なお、この方法を用いる場合には労使協定を締結する必要があるため、必ずしもすべてのアルバイトやパートに適用されるわけではありません。
有給休暇は、労働者が有する権利です。その権利は、アルバイトやパートのような非正規雇用でも例外ではありません。そのため、非正規雇用に関する有給休暇について知っておかなければ、労働基準法に違反してしまう可能性があります。
そこで、アルバイトやパートの有給休暇に関する重要なポイントについて解説します。
労働者の勤続年数によっては、年間に付与される有給休暇の日数が10日以上となるケースがあります。この場合、雇用主は従業員に最低5日間は有給休暇を消化させる義務があります。また最低5日の有休消化は、付与されてから1年以内に消化することも定められています。
参考:厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」
有給休暇を私用で利用することをNGにする話を聞くこともありますが、アルバイトやパート、正社員にかかわらず、有給休暇を取得する理由を申告しなければいけない義務はありません。
理由次第で不許可にしてしまうと違法行為に該当してしまいますので、気をつけましょう。
アルバイトやパートが付与された有給休暇を取得したことを理由に、賃金を下げるといった処分を下すことは違法です。有給休暇の利用を理由に労働者にとって不利益な扱いをすることは、トラブルにとどまらず悪評の原因となりかねませんので、注意しましょう。
従業員に有給休暇が付与されても、現場の忙しさなどによってはアルバイトやパートが気軽に消化できるとは限りません。さまざまな理由や事情で、なかなか有給休暇を取得できないケースも考えられますので、労働者が付与された有給休暇を取得しなかった場合について解説します。
従業員が付与された有給休暇を取得しない場合には、次年度へ繰り越せると労働基準法で規定されています。しかし、繰り越せるのは1年だけであり、付与された日から2年が経過するとその分の有給休暇は失効してしまいます。
次年度へ繰り越せる有給休暇の日数は、最大で20日までです。勤続年数が長くなると年間に付与される有給休暇の日数は最大で20日となるため、年間当たり保有できる有給休暇の日数は多くても40日までとなります。
アルバイトやパートのような非正規雇用形態では、契約期間が6カ月間や1年間といった有限の場合もあります。この場合でも、契約が更新されれば、更新前に保有していた有給休暇はそのまま繰り越せます。
アルバイトやパートの有給休暇は、退職したら消滅してしまいます。また賃金に換算して支払われることもありません。
そのため、有給休暇を消化しきれていないアルバイトやパートの人が退職する場合には、有給休暇が消滅する旨も伝えたうえで退職前に消化してもらうと良いでしょう。
アルバイトやパートなど非正規雇用の場合、有給休暇が取得できないと思われがちですが、実際には、非正規雇用も含んだ労働者に認められた権利なので問題なく利用できます。しかし、有給休暇には本記事で説明したようにさまざまなルールが定められていますので、雇用主や従業員ともに理解しておく必要があります。ルールに則って、適切に有給休暇を使いましょう。
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