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ビジネスで取り交わされる文書の一つに「覚書(おぼえがき)」があります。覚書という文書は法律で定義されているわけではなく、さまざまな用途で用いられます。
覚書も契約書と同様に、一定の体裁や内容を満たしている場合は収入印紙を貼る必要があります。
本記事では覚書に収入印紙が必要なケースや、印紙代を節約する方法を解説します。
収入印紙について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
覚書(おぼえがき)とは、当事者間の合意を記録するための文書であり、契約書の一種です。ビジネスにおける慣習として契約書ほど正式な文書ではないとされていますが、当事者の合意を記録し法的効力を持つという意味では、契約書と違いはありません。
覚書にはさまざまな用途があります。まずは覚書がどのようなときに用いられるものか、具体的な例を紹介します。
覚書が用いられるケースとしてよくあるのが、契約書に定められた事項について追加、修正をする場合に取り交わすケースです。契約書の内容を大きく変更する場合は、新たに契約書を作り締結し直す方法もありますが、部分的な変更であれば、変更契約書として覚書を取り交わすことが多いでしょう。
この場合、特に定められたフォーマットはないため、自由に作成できますが、契約内容の変更を伴う重要な事項を記載する文書ですので、変更箇所や、変更の効力の発生する日付を明記しましょう。
「変更契約書」「変更確認書」などといった名称が使われることもありますが、効力に違いはありません。
業務を委託する場合に交わす業務委託契約では報酬額や作業範囲等を定める必要がありますが、契約締結時にはこれらの条件が確定できないケースも少なくありません。
たとえば、実際に作業に着手してみないと作業量や作業範囲がわからない場合です。このような場合に、契約締結時には「報酬額、業務の範囲、工数は別途協議のうえで定める」などと記載しておき、実際に作業を始めてから、報酬額や作業範囲を確定し、それらを文書化した覚書を作成する方法をとることがあります。
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覚書がさまざまな用途で用いられるものだということがわかりました。
それでは覚書を作成した際、印紙を貼る必要はあるのでしょうか。
収入印紙を貼る必要がある文書は「課税文書」と呼ばれます。
この課税文書は印紙税法によって定められているもので、該当する20種類の書類が国税庁のホームページで公開されています。
ここで注意が必要なのは、課税文書に該当するか否かは、文書の名称に関わらず、その文書の内容で判断されるということです。名称が「契約書」「注文請書」などではなく「覚書」だからといって、課税文書に該当しないわけではありません。
課税文書は第1号〜第20号に分類されています。
ここではその一部である、第1号、第2号に該当する文書とその課税額を紹介します。
国税庁の「印紙税額の一覧表」によると、以下に当てはまるものが第1号文書です。
第1号文書の印紙税額は以下の通りです。(令和4年4月1日現在)
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
第2号文書は、以下に当てはまるものです。(令和4年4月1日現在)
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1千円 |
300万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
課税物件表の課税文書に該当する場合であっても、非課税文書に該当する場合は、例外的に印紙を貼る必要はありません。たとえば、覚書が第2号文書に該当する場合でも、契約金額が1万円未満の場合は非課税文書に該当し、収入印紙は必要ありません。
また、課税物件表のどれにも該当しない文章は「不課税文書」となります。不課税文書は「委任契約書(無報酬)」「使用貸借契約書(無報酬)」「雇用契約書」「秘密保持契約書」「ソフトウェア利用許諾契約書」などが該当します。なお、どの文書に該当するかは文書の名称からではなく、文書の内容から判断されるのは上記と同様です。
「電子契約」は、紙の契約書と同じく法的根拠のある契約を交わすことができますが、契約の内容や契約金額の大小にかかわらず印紙を貼る必要がありません。
これは、印紙税法上、契約書を紙の書類で作成する場合に限り「課税文書の作成」と定義されるため、電子データを送付し、電子署名などで双方の合意を証明する電子契約書の場合、課税文書に該当しないからです。
契約金額が大きい場合や、契約書を多く交わしている会社では、電子契約への移行がもっとも収入印紙代を節約できる方法といえるでしょう。
また、電子契約で覚書を交わす際にはさまざまな注意点があります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
課税文書にあたる覚書に印紙を貼らなかった場合はどうなるのでしょうか。
まず、課税文書に印紙を貼らなかった場合は、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち印紙税額の3倍)に相当する「過怠税」がかかってしまいます。
また、印紙を貼ったものの消印を忘れてしまった場合でも、額面金額相当の過怠税がかかるので注意が必要です。
作成した覚書が課税文書に該当するか否かは、前述した印紙税法別表第一を確認するほか、判断が難しい場合は事前に管轄の税務署に相談することをおすすめします。
覚書に貼る印紙は、印紙税法で明確に定められています。節約する余地はないと思う方もいるでしょう。しかし、実は節約する方法があります。
ここではいくつかその方法を紹介します。
まず業務委託契約書によって1,000万円の業務を契約し、覚書によって委託報酬金額を増減する場合を考えてみましょう。
委託報酬金額を200万円増やす場合、覚書に「業務委託契約書に定める報酬額を1,200万円に変更する」と記載したとします。この場合、元の契約書である業務委託契約書の委託報酬金額が覚書の書面に記載されていないため1,200万円がこの覚書の契約金額とみなされ、印紙税は2万円となります。
しかし「業務委託契約書に定める報酬額1,000万円を1,200万円に変更する」と明記すると、増額した200万円の部分が契約金額となり、200万円分の印紙税400円で済むのです。変更前後の金額を明記しない場合、変更後の合計額が契約金額とみなされ、高額な印紙税となってしまうのです。
これは契約金額が減少した場合も同様です。具体的には、「報酬額1,200万円を1,000万円に変更する」と明記すれば、報酬額が減少するのでこの覚書の契約金額は言わばマイナスとなり、記載金額の記載がない2号文書に該当し、印紙税は200円となります。しかし「報酬額を1,000万円に変更する」と書くと1,000万円が契約金額となり印紙税は1万円となってしまいます。
このように、契約金額を変更する覚書には必ず元の金額と変更になった金額を併記することが重要です。
覚書は、その名称にかかわらず、内容や実態から課税文書に該当する場合には、収入印紙を貼る必要があります。作成した覚書が課税文書に該当するかわからない時は、税務署などに相談しましょう。
また、覚書に記載する金額の書き方によっては印紙税が高くなってしまいます。覚書で金額を変更するときは差額がわかるように、元の金額と変更後の金額を明記することが節約の第一歩です。
収入印紙を貼る必要がない電子契約への移行も検討してみましょう。電子契約GMOサインでは、電子契約サービスを8分で学べるオンデマンド もご用意していますのでぜひチェックしてみてください。
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