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2021年5月にデジタル改革関連法が成立したことで、不動産のオンライン契約の需要増加が予想されます。本格的な運用開始直前に慌てないように、不動産事業者として社内のIT化を進めておくことが大切です。
今回は不動産のオンライン契約における最新の事情や、実施時の注意点などを解説していきます。
不動産のオンライン契約とは、すでに本格的に開始されている重要事項説明へのIT活用(IT重説)に加えて、電子署名サービス等を利用した電子書面交付によって契約を行うものです。不動産のオンライン契約の対象は、賃貸取引と売買取引となっています。
まずは不動産のオンライン契約が注目されている背景について、解説していきましょう。
不動産取引におけるオンライン契約が注目されている背景には、時代の変化による取引の実態が関係しています。
近年、消費者が物件の情報を収集する際、多くの人がポータルサイトを活用するなど、取引前の段階ではすでにオンライン化が進んでいます。
ポータルサイトで物件を検索し、メールやLINEなどのオンラインで不動産事業者に問い合わせ、スマホなどを利用したオンライン内見で物件を確認するなど、問い合わせから検討段階までオンラインで完結させるといったケースが増えています。
宅建業法では、消費者保護の観点から、宅地建物取引士が書面を交付した上で、対面で重要事項説明を行うことが義務とされています。しかし、先述のような近年における取引の実態を踏まえ、重要事項説明の対面原則の見直しや、書面交付のオンライン化が注目されるようになりました。
IT重説とは、スマートフォンやタブレット等の端末を利用し、テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明です。以下の通り、賃貸取引・売買取引ともに過去に社会実験が実施され、目立ったトラブルが発生しなかったことから、すでに本格的に運用が開始されています。
IT重説の社会実験と本格運用スケジュール
IT重説を行うことは、不動産事業者、顧客双方にメリットがあります。IT重説のメリットを解説していきましょう。
IT重説を実施するメリットは、以下5つです。
1.時間・コストを削減できる
2.スケジュールを調整しやすい
3.顧客の緊張が緩和される
4.本人が外出できない場合でも本人への説明が可能
5.録画によるトラブル防止
IT重説を実施することで、遠方に住んでいる顧客の移動時間・交通費の負担が軽減されるほか、多忙な顧客とのスケジュール調整がしやすくなります。また、IT重説ではトラブル防止の観点から録画が義務付けられています。録画することで、言った・言わないといったトラブルの早期解決にも繋がるでしょう。
賃貸取引と売買取引におけるオンライン契約は、すでに社会実験が始まっています。最新のオンライン契約の実施状況や、実施の流れを解説していきましょう。
不動産のオンライン契約は、すでに賃貸取引・売買取引ともに社会実験が始まっています。
賃貸取引の社会実験は2020年9月から実施されており、実施件数が少ないなどの理由から当面の間、延長されることになりました。また、売買取引の社会実験は、2021年3月10日から実施されています。
不動産のオンライン契約の本格運用開始時期は未定ですが、2021年5月12日に成立したデジタル改革関連法により、法律上、オンライン契約が可能になりました。
デジタル改革関連法の施行日は、一部を除き2021年9月1日です(一部については、交付から1年以内)。今後、不動産の賃貸・売買契約のオンライン化は急速に進むことが予想されるため、不動産事業者として、オンライン契約に対応できるように社内のIT化を進めておく必要があります。
不動産のオンライン契約の社会実験とデジタル改革関連法のスケジュール
2020年9月~ | 賃貸の社会実験開始 |
2021年3月10日~ | 売買の社会実験開始 |
2021年5月12日 | デジタル改革関連法が成立 |
2021年9月1日~ | デジタル改革関連法施行 |
不動産のオンライン契約の流れは、以下の通りです。
1.不動産事業者が重要事項説明書等の電子ファイルを作成する 2.電子認証サービスなどを利用して、宅地建物取引士が電子署名を行う 3.電子署名済のファイルを顧客に送付する 4.宅地建物取引士による電子署名済のファイルを顧客が受領する 5.ファイルが改ざんされていないことを顧客が確認する 6.電子書面を利用してIT重説を実施する |
電子書面の交付については、電子メール等の送信による方法と、サーバからダウンロードする方法があります。
電子メールで交付する場合は、作成したファイルに改ざん防止措置(暗号化)を施した上で顧客へ送付します。サーバからダウンロードする場合は、作成したファイルをクラウド上にアップロードし、改ざん防止措置(暗号化)を施したファイルを顧客がダウンロードして利用します。
不動産のオンライン契約を実施する際は、対面では生じないトラブルが起こる可能性があるため、個人(顧客)・不動産事業者ともに注意点を確認しておくことが大切です。
個人が不動産のオンライン契約をする際、使用機器や環境への留意が必要です。
IT重説を行っている間にトラブルが発生した場合は中止となり、改めて重要事項説明を行う必要があります。
時間が無駄にならないように、実施方法やインターネット環境等を、事前に不動産事業者と打ち合わせておくことが大切です。
IT重説を行う際に注意すべきポイントは、以下3つになります。
1.画面:宅地建物取引士証の写真、文字を明確に判別できる 2.音声:互いの説明・質問内容を十分に理解できる 3.インターネット回線:宅地建物取引士の説明、動画、音声が途切れることなく確認できる |
オンライン契約で使用する端末に指定はありませんが、不動産事業者が使用するツールに対応できることや、互いに説明や内容を理解できる環境が必要です。
不動産事業者がオンライン契約を行う際に注意すべき点は、以下の点です。
・事業者側だけでなく、顧客のインターネット環境を事前に確認しておく ・誤解が生じないように資料をわかりやすくする工夫をする ・電子署名サービスの要件を確認しておく ・顧客から事前に実施の同意を得ておく ・説明の相手方が契約当事者本人であることを確認する |
不動産事業者がオンライン契約で使用できる電子署名サービスには、以下の要件があります。
1.顧客がファイルを出力できる 2.ファイルに記録された重要事項説明書等について、改ざんが行われていないことを確認できる 3.宅地建物取引士本人が電子署名したことを検証できる |
また、オンライン契約を実施するためには、書面やメールなど、記録に残る形で顧客の同意を得る必要があります。
オンライン契約は、現時点(2021年8月)では電子書面の他に宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書等の書面(紙)による事前交付が必要です。ただし、2021年5月にデジタル改革関連法が成立したことによって、2022年5月をめどに書面(紙)による事前交付が不要になります。
デジタル改革関連法の成立によって、不動産のオンライン契約の需要は今後さらに高まることが予想されます。本格的な運用が開始される前に、不動産事業者として社内のIT化を進めておくことが大切です。
また、オンライン契約を実施することで、不動産事業者、顧客双方にメリットがあります。多様化している顧客のニーズに応えるためにも、早い段階で導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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