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近年、採用活動において「リファレンスチェック」が注目されています。リファレンスチェックとは、中途採用の選考過程において、候補者の実績や人柄などを前職や現職の関係者から情報収集することを指します。
書類や面接だけでは見えてこない、候補者の人となりや真のスキルを知ることができるため、ミスマッチを防ぎ、採用を成功に導くための重要なツールとして活用されることも多いです。しかし、リファレンスチェックは、実施方法や依頼する相手を誤ると、思わぬトラブルを招きかねません。
そこで本記事では、リファレンスチェックの概要から採用担当者向けのポイントまで詳しく解説します。
リファレンスチェックは、企業が採用過程の一環として行われるもので、候補者の過去の職務経験やパフォーマンスについて、前職の上司や同僚などから情報を収集することです。
リファレンスチェックによって、履歴書や面接だけではわからない、候補者の能力、仕事に対する姿勢、協調性、リーダーシップなどの情報を得ることができます。具体的には以下のような情報が収集されます。
これらの情報を通じて、企業は、候補者が新しい職場で成功する可能性を多角的に評価します。
エンワールド・ジャパン株式会社が2021年1月に実施した調査によると、中途採用においてリファレンスチェックを実施しているかどうかの質問に対し、外資系企業は58%が、日系企業は23%が実施していると答えました。
近年、採用までのプロセスにリファレンスチェックを挟む企業が増えていると言われていますが、とくに日系企業においては広く浸透しているとまでは言えないようです。
一方、「リファレンスチェックを実施している」と回答した企業のうち約7割が、「採用の判断に影響している」(大きく影響している、少し影響している)と回答しています。リファレンスチェックが採用判断に大きく影響していることがわかります。
出典:【中途採用における、リファレンスチェック実施状況調査】実施率は外資系企業 58%、日系企業23% 7割が「採用判断に影響」 | エンワールド・ジャパン株式会社
リファレンスチェックは、主に以下の4つの目的で行われます。
書類選考や面接では、経歴詐称を見破るのは難しい場合があります。リファレンスチェックでは、候補者の前職での勤務状況や実績などを第三者から確認することで、経歴詐称を防ぐことができます。
書類選考や面接だけでは、候補者の性格やスキルを十分に把握することはできません。リファレンスチェックでは、候補者の人となりや実際の仕事ぶりなどを第三者から聞くことで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
リファレンスチェックでは、候補者の良い評判だけでなく、悪い評判も聞くことができます。企業は、これらの情報を参考に、より客観的に候補者を選考できるのです。
リファレンスチェックでは、候補者の仕事以外の人柄についても知ることができます。企業は、これらの情報を参考に、社風やチームに合致する人材かどうかを判断できます。
採用の過程でリファレンスチェックを受けることに、ネガティブな印象を持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、実はキャリア構築における強力な味方となり得ます。
以下に、採用候補者がリファレンスチェックを受けることで得られる主なメリットを詳しく解説します。
リファレンスチェックを受け入れることで、候補者の経歴や実績に対する信頼性が大きく向上します。第三者からの客観的な評価は、候補者の主張に強力な裏付けを与えるのです。採用担当者は候補者の能力や経験を、より確信を持って評価でき、採用の可能性が高まります。
リファレンスチェックは、候補者の強みや成果を第三者の言葉で伝える絶好の機会です。適切なリファレンス提供者を選ぶことで、もっとも優れた点や具体的な貢献を効果的にアピールできます。面接や履歴書だけでは伝えきれない側面を強調する貴重なチャンスとなるでしょう。
リファレンスチェックに積極的に協力することで、採用プロセスをスムーズに進行させられます。これにより採用決定を迅速化できる可能性が高まるでしょう。
候補者にはリファレンスチェックを拒否する権利があります。個人情報の提供は基本的に自発的なものであり、法律上、候補者が強制されることはありません。しかし、拒否する権利があるからといって、それが賢明な選択とは限りません。多くの企業にとって、リファレンスチェックは候補者の適性を判断する重要なツールです。拒否することで、採用担当者に「何か隠したいことがあるのではないか」という疑念を抱かせる可能性があります。
そのため、完全な拒否ではなく、代替案を提案することが効果的な場合もあります。たとえば、現職の代わりに以前の職場のリファレンスを提供したり、直属の上司ではなく他の管理職や同僚をリファレンス提供者として提案したりすることができます。また、業績評価書や推薦状など、他の形式の証明を提供する方法もあるでしょう。
リファレンスチェックの拒否を検討する理由としては、現在の雇用主に転職活動を知られたくない場合や、過去の職場での問題や軋轢がある場合などが考えられます。このような場合、その事情を採用担当者に丁寧に説明し、代替案を提案することが重要です。多くの企業は、候補者の事情を理解し、柔軟に対応する姿勢を持っています。候補者としては、可能な限り企業側と率直にコミュニケーションを取り、お互いに受け入れられる解決策を見出すことが重要です。それにより、自身の懸念事項に対処しつつ、採用プロセスにおいてポジティブな印象を維持できるでしょう。
基本的にリファレンスチェックは、推薦者(リファレンス提供者)を絞った上で、候補者の承諾を得て実施されるため、転職活動をしていることを現在の勤務先の人事部などに知られることはありません。
ただし、リファレンス提供者となってもらう同僚や上司などには、転職活動中であることを事前に話しておく必要があります。応募先の企業からリファレンスチェックの実施を伝えられた場合、信頼できる同僚や上司に頼みましょう。また、現職の同僚・上司から推薦者を探すのが難しければ、前職の同僚・上司へ依頼しても良いでしょう。
転職候補者に無断でリファレンスチェックが行われることはありません。
リファレンスチェックの過程は採用企業によって多少の違いがありますが、基本的な流れは以下の通りです。
採用プロセスの最終段階に近づくと、企業は候補者にリファレンスチェックを行う意向を伝えます。この段階で、候補者にリファレンス提供者のリストを準備するように依頼します。
候補者は通常、2〜3名のリファレンス提供者のリストを作成し、採用企業に提出します。このリストには主に以下の情報が含まれます。
採用企業の人事担当者は、提供されたリストを基にリファレンス提供者に連絡を取ります。通常、電話やメールで初回のコンタクトを行い、以下の内容を伝えます。
主に以下の2つの方法で行われます。
用意した質問リストに基づいて、人事担当者がリファレンス提供者に直接質問します。
質問票をメールで送付し、リファレンス提供者に記入してもらいます。回答期限を設定し、必要に応じてリマインダーを送ります。
リファレンスチェックでは、以下のような情報を収集します。
収集した情報を整理し、以下の観点から分析します。
リファレンスチェックの結果は、他の選考プロセス(面接、スキルテストなど)の結果とあわせて総合的に評価され、最終的な採用判断に反映されます。
リファレンスチェックを含むすべての選考プロセスが完了した後、企業は候補者に最終的な採用決定(内定または不採用)を通知します。
リファレンスチェックは採用プロセスの重要な部分ですが、時に候補者からの拒否に直面することがあります。このような状況に適切に対応することで、採用プロセスの質を維持しつつ、優秀な人材を逃さないようにすることが重要です。以下に、リファレンスチェックを断られた際の効果的な対処法を解説します。
候補者の懸念に配慮しつつ、以下のような代替案を提案することを検討しましょう。
直近の職場からのリファレンスが得られない状況は、採用プロセスにおいてしばしば発生します。このような場合、まず、候補者と率直に話し合い、直近の職場からリファレンスが得られない理由を理解することが重要です。
その後、直近の職場以外から、信頼性の高いリファレンスを得る方法を探ります。
リファレンスチェックは、候補者の適性を多角的に評価する重要なプロセスです。以下に、効果的なリファレンスチェックを行うための主要なポイントを解説します。
リファレンスチェックを開始する前に、候補者から書面や電子メールなどで同意を取得します。これはプライバシー保護の観点からも重要です。また、候補者に過去の上司、同僚、部下など、職務に関連するリファレンス提供者の連絡先を提供してもらいます。リファレンス提供者が候補者の仕事ぶりを正確に伝えられることが重要です。
ファレンスチェックの目的に応じて具体的な質問リストを作成します。たとえば、以下のようなカテゴリごとに質問を準備するのがおすすめです。
例:「候補者はどのような業務を担当していましたか?」
例:「候補者はチーム内でどのようにコミュニケーションを取っていましたか?」
例:「候補者はどのようにリーダーシップを発揮しましたか?」
例:「候補者が直面した最大の課題は何でしたか?」
また、オープンエンドの質問を用意し、リファレンス提供者が自由に回答できるようにします。こうすることで、提供者が具体的なエピソードや詳細な情報を共有しやすくなるでしょう。
リファレンスチェックの信頼性を高めるために、客観性を保つことが重要です。複数のリファレンス提供者からの情報を比較し、個人的な印象や感情に左右されず、事実に基づいて評価することが求められます。また、肯定的・否定的コメントのバランスを考慮することで、より公平な評価が可能になります。
リファレンスチェックを行う際は、法的・倫理的な観点からの配慮が不可欠です。差別につながる質問(年齢、性別、人種、宗教など)を避け、個人情報保護法を遵守することが重要です。また、リファレンス提供者の守秘義務を尊重し、収集する情報の範囲と使用目的を明確にすることで、適切なプロセスを維持できるでしょう。
リファレンスチェックは、採用プロセスにおいて候補者の適性を多角的に評価するための重要なツールです。転職者にとっては、自身の強みを効果的にアピールする機会となります。一方、採用側にとっては、客観的な情報を基に適切な人材を選考し、組織にフィットした人材を確保するための貴重な手段となるでしょう。
採用担当者は、リファレンスチェックのプロセスをしっかりと準備し、公正かつ透明性を保ちながら実施することが求められます。これにより、採用の成功率を高め、企業の成長に貢献できます。転職者と採用担当者の双方が、リファレンスチェックの意義と方法を正しく理解し、相互に建設的なプロセスとして活用することで、より良いマッチングとなり、採用の成功につながるでしょう。
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