「信用取引はやめとけ!」とよく耳にしますが、実際どれくらい危険なのでしょうか。
信用取引は少ない資金で大きな利益を得られる可能性があり、魅力的に見えるでしょう。しかし、その魅力の裏には大きなリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。
今回は、信用取引の危険性やデメリットをわかりやすく解説します。
目次
信用取引とは、ハイリターンとハイリスクがセットになった取引方法
信用取引とは、証券会社などからお金を借りて自分が持つ資金以上の資金を使い株取引を行う取引方法です。ハイリターンを得られる可能性があり魅力的な一方で、大きなリスクを伴います。
例えば、100万円の資金で信用取引を行い200万円分の株を購入する場合は、証券会社から100万円を借りる形です。
信用取引は、少ない資金で大きな利益を得られる可能性がある一方で、損失も大きく膨らみやすいという特徴があります。
また、信用取引を利用するには、審査を経て信用取引口座を開設する必要があり、誰もが開設することはできません。よく理解した上で利用することが重要です。
信用取引を行うための条件
信用取引は、誰でもできるわけではありません。証券会社によって異なる点はありますが、一般的には以下の条件を満たす人が対象となります。
信用取引口座の開設審査を通過していること
信用取引口座を開設する際には、証券会社は顧客の財産状況や投資経験などを審査します。審査内容は会社によって異なりますが、一般的には、投資経験、信用情報、資産などが重要な判断材料となるようです。
ハイリスク・ハイリターンの信用取引は、ある程度の投資経験が求められます。一般的には、信用取引の経験、もしくは現物取引を 1 年以上経験していることを求められることが多いでしょう。
一定の資金力があること
自分の資金以上の金額で取引を行うため、ある程度の資金力が必要です。具体的には、証券会社によって異なりますが、最低でも数百万円以上の資金が必要になります。
リスク許容度が高いこと
損失が拡大する可能性も高い信用取引は、リスク許容度が高い人に向いています。
なお、信用取引を検討している場合は、以下の点を十分に理解し、慎重に判断しましょう。
- 自分の資金状況とリスク許容度を冷静に判断する
- 損失が拡大した場合の対策など、信用取引のリスクを理解する
- ファイナンシャルプランナーや証券会社の担当など、専門家の意見を聞く
信用取引は、ハイリスク・ハイリターンの株取引方法です。十分な知識と経験がない状態で、安易に信用取引を行うことは危険です。
信用取引が危険と言われる3つの理由
信用取引は高いリターンを狙える一方で、重大なリスクも伴います。ここでは、信用取引が特に危険とされる3つの主要な理由について詳しく解説します。
損失拡大のリスク
信用取引の最大の魅力は、自己資金以上の取引が可能になる点ですが、これが同時に損失を拡大させる要因ともなります。
- 自己資金のみの場合
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100万円の資金で株を購入し、株価が50%下落すると損失は50万円になります。残りの資金は50万円です。
- 信用取引を利用した場合
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100万円を保証金として信用取引を行い、300万円分の株を購入。株価が50%下落すると損失は150万円となり、自己資金の100万円を超える損失が発生します。この場合、追加で50万円の損失が出るため、最終的な負債は50万円となります。
このように、信用取引ではレバレッジを利用することで大きな利益を狙える反面、株価の変動によっては自己資金を超える損失が発生する可能性があります。このリスクを十分に理解し、慎重に取引を行うことが重要です。
追証(追加保証金)の発生リスク
二つ目の理由として挙げられる理由は「追証が発生しやすい」ということです。
信用取引では、証券会社に借入金額の30%以上を保証金として預けなくてはなりません(※委託保証金率、最低委託保証金維持率は、証券会社により異なります)。これは、損失が発生した場合に備えるためです。しかし、損失が拡大し、保証金が不足すると、追加で資金を支払う必要がある「追証」が発生する可能性もあります。
- 条件:
- 委託保証金率:30%
- 自己資金:100万円
- 取引額:200万円分の株
- 株価下落:株価が30%下落すると、損失は60万円になります。
- 保証金の状況:初期保証金100万円から損失60万円を差し引き、残りは40万円となります。保証金率は40万円 ÷ 200万円 = 20%に低下します。
- 追証発生:30%の保証金率を維持するためには、追加で20万円の資金を投入する必要があります。
追証が発生すると、追加の資金を迅速に準備しなければならず、資金繰りに大きな影響を与える可能性があります。
精神的な負担の増大
ここまで信用取引のリスクを読む中で、なんとなく想像できる方も多いでしょう。信用取引はハイリスクとハイリターンが付き物であり、常に損失拡大のリスクと隣り合わせのため、精神的な負担が大きい取引です。
株価が下落すると損失が大きくなり、場合によっては追加で資金を支払う必要があります。他にも損失が拡大すると、精神的に不安定になり、冷静な判断ができなくなる可能性も考えられます。
精神的な負担を軽減するためにできることは、以下のとおりです。
- 自分自身の資金状況やリスク許容度をしっかりと理解し、それに見合った取引を心掛けましょう。
- ファイナンシャルプランナーや投資の専門家からアドバイスを受けることで、冷静な判断をサポートしてもらいましょう。
- 信用取引に関する知識を深め、実践的な経験を積むことで、リスクに対する理解を高めましょう。
信用取引は適切な知識と慎重なリスク管理が不可欠です。十分な準備と計画を持って取り組むことで、リスクを最小限に抑えることが可能となります。
信用取引をおすすめできない方の特徴
信用取引は魅力的ですが、誰でも始められるわけではありません。証券会社の専用の口座開設審査を通過する必要があります。なお、たとえ審査に通ったとしても、以下に該当する人は信用取引を避けた方がよいと言えるかもしれません。
- 投資経験が浅い方
- 精神的に不安定な方
- 資金に余裕がない方
- 投機的な取引をしたいタイプ
信用取引は、少ない資金で大きな利益を狙える魅力的な取引方法ですが、同時に大きな損失のリスクも伴います。リスクを理解した上で慎重に判断することが大切です。
ハイリターン・ハイリスクの取引を行いたくなる心理的理由
「信用取引は危険」とよく言われますが、その潜在的な利益に惹かれ、挑戦したいと考える人は少なくありません。少ない資金で大きな利益を得られる可能性、それは誰もが憧れる投資の世界における究極のロマンです。しかし、その裏には、無視できないリスクが存在します。
信用取引に惹かれる心理には、主に以下の3つの理由があります。
少ない資金で大きな利益を得たいという欲求
「少ない資金で大きな利益を得たい」という願望は、多くの投資家にとって共通のものです。信用取引は、現物取引に比べて、少ない資金から大量の利益を狙える可能性があるため、特に資金が制約されている投資家にとって魅力的です。しかし、予想が外れて株価が下落した場合には、元本を超える損失を被るリスクもあります。ハイリスク・ハイリターンの特性を持つ信用取引は、この強い欲求を満たす手段となり、多くの投資家を惹きつけています。
より積極的に投資したいという意欲
「より積極的に投資したい」という意欲も、信用取引に惹かれる理由の一つです。信用取引は、現物取引に比べて積極的な投資を実現します。例えば、信用取引では空売りが可能です。空売りとは、株価が下がると見込んだ際に、証券会社から株を借りて売却し、その後株価が下がった段階で買い戻して差益を狙う方法です。現物取引ではこのような空売りはできませんが、信用取引は多様な投資戦略を展開できるため、積極的に市場の動きに応じたい投資家にとって魅力的な選択肢となります。
市場に迅速に対応したいという気持ち
「市場の動向に迅速に対応したい」という気持ちも、信用取引に惹かれる大きな要因です。市場の変動に素早く対応し、短期売買で利益を狙える性質を持つため、動きの激しい市場で積極的に取引を望む投資家には誘引となります。しかし、常にハイリスク・ハイリターンであることを念頭に置き、自身の資金状況やリスク許容度を理解しながら、慎重かつ戦略的にリスク管理を行うことが求められます。
信用取引の他にも検討してほしい選択肢:現物取引
現物取引とは、株式や債券などの有価証券を自己資金で購入し、自分の口座で保有する取引方法です。実際に証券を所有するため、信用取引や先物取引、オプション取引に比べるとリスクが比較的低く、投資初心者には特におすすめです。なお、手持ちの資金を超える取引や現物を保有していない状態での株式売却ができないため、損失は手持ち資金の範囲内に限定されます。
現物取引は株式投資の基礎となる方法ですが、株価の変動による損失の可能性はゼロではないことに注意する必要があります。
現物取引のデメリットには以下のものがあります。
- レバレッジが使えない:資金を借りてより大きな取引を行ったり、期待される利益を増大させることはできません。
- 利益が限定される:信用取引のように高リターンを狙えないので、手持ち資金以上の利益を得ることは難しいです。
しかしリスクが低く、安定した長期的な資産形成を目指せるため、投資を始める方にとっては非常に適した選択肢です。
まとめ:信用取引はハイリターンが見込めてもデメリットに要注意
信用取引は高リターンが見込める一方で、多くのリスクやデメリットには常に注意を払う必要があります。
投資の初心者であれば、まずは現物取引から始め、経験を積んでいくことをおすすめします。また、積立投資や投資信託などを用いて、毎月少しずつ資産を積み上げ、長期的な資産形成を進める方法も非常に有効です。