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定期建物賃貸借契約は、賃貸借の契約形態の一つです。この契約形態では、賃貸人(建物の所有者)と賃借人(入居者)の間で一定の期間にわたって建物を借りる契約が締結されます。
定期建物賃貸借契約では賃貸期間が明確に定められており、賃貸期間が満了すると、契約は自動的に終了となります。
しかし特約によっては、双方の合意に基づき再契約することも可能です。この契約形態では、賃貸人と賃借人の双方が、一定の期間にわたって安定的な関係を確保できます。賃借人は一定期間内に安定した住居を得ることができ、賃貸人は一定期間の賃料収入を確保することができるからです。
借地借家法第38条をみると、「期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り(省略)定めることができる」とあります。「公正証書による等」と明記されており、あくまで例示であるため必ずしも公正証書である必要はありません。
借地借家法とは、建物の所有を目的とした土地や建物の賃貸借について定めた法律です。
つまり、定期建物賃貸借契約を締結する際、公正証書以外の書面で契約を締結しても特に問題はありません。
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定期建物賃貸借契約を締結するにあたって、成立要件を理解しておくことは非常に重要です。なぜなら成立要件のうち1つでも欠いてしまうと、定期建物賃貸借契約は無効になってしまうからです。無効になり普通建物賃貸借契約になってしまうと、後々のトラブルにも発展しかねません。
そうならないためにも、定期建物賃貸借契約の成立要件について、しっかりと押さえておくことが重要です。
成立要件は、以下の4つになります。
定期建物賃貸借契約を締結する際には、これを書面で行う必要があります。なお、上記で説明した通り、必ずしも公正証書を作成する必要はありません。契約にあたり公正証書を作成することは必須ではなく、通常の書面にて契約することが可能です。実際に、公正証書を作成して契約する事例は非常に少ない傾向があります。
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普通建物賃貸借契約の場合は、必ずしも期間を定める必要はありません。しかし定期建物賃貸借契約の場合は、必ず期間を特定する必要があります。
定期建物賃貸借契約は基本的に期間の定められた契約です。そのため、「期間満了により契約は終了し、更新はないものとする」といった文言を、契約書の中に明示することが必要です。
しかし特約として、再契約についての文言を追加することは可能です。その際、「契約終了後、特段の事情がない限り再契約するものとする」というような、再契約することが原則という趣旨の文言を入れてしまうと、更新を否定する条項とは矛盾してしまいます。
この場合、定期建物賃貸借契約の成立要件が満たされず、定借としての契約が無効になってしまう可能性があります。再契約の文言を追加する場合は、「契約終了後、当事者が協議の上、再契約をすることができる」というように、あくまで当事者間が納得した場合のみ、再契約が認められる内容の文言にしましょう。
賃貸人は賃借人に対して、定期建物賃貸借契約を締結するにあたり、更新がない旨について事前に説明する必要があります。この事前説明がなされなかった場合には、定期建物賃貸借契約が無効になるため注意が必要です。そのため、契約書の書面以外に説明文を記載した書面を作成し、賃借人から署名押印をもらって控えとして保存するなど、工夫することが望ましいでしょう。
更新がない旨に関する事前説明は、本来は契約に先立って行われるべきです。ただし、事前に説明する機会を設けられなかった場合、契約締結と同時期であっても問題はないとされています。また、事前説明は賃貸人に課された義務であると同時に、仲介業者に課された義務でもあります。両者は本来区別して考える必要がありますが、仲介業者が賃貸人を代理として事前説明を行うことは認められています。一般的にはこのように、仲介業者が間に入って契約を行うことが多くなっています。
説明文書は、契約書とは別に作成して交付する必要があります。こちらも大切な書類になりますので、契約書といっしょに保管するようにしましょう。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の大きな違いは、更新がないことです。基本的には、契約期間の満了に伴い契約は終了し、賃借人は退去しなければなりません。定期建物賃貸借契約では賃貸人が賃借人に対して、契約時に更新がない旨を必ず説明することも義務付けされています。
ただし、特約として、「契約終了後、当事者が協議の上、再契約をすることができる」といった文言を追加することは可能です。その際は当事者間が納得した場合のみ、再契約が認められることになります。
一般的に賃貸借契約期間は2年と設定されることが多く、2年ごとに更新の手続きがあります。しかし定期建物賃貸借契約では、双方の合意に基づき、契約期間を自由に設定することができます。
通常の賃貸借契約では、賃借人はいつでも自由に解約を申し入れることができます。解約告知の期限は契約によって定められていますが、基本的には賃借人の意思で物件を退去することが可能です(一般的には、退去日の1か月前告知や2か月前告知が義務付けられていることが多いです)。
しかし、定期建物賃貸借契約では、原則として賃借人は定められた期間の途中で解約を申し入れることはできません。特約の有無や、やむを得ない事情によって解約が認められるケースについては、別途記載します。
通常の賃貸借契約では、賃貸人から解約を申し入れるには「正当な事由」が必要です。実質的には賃貸人から解約することはむずかしいケースが多く、その点は賃貸人にとってデメリットでした。
しかし定期建物賃貸借契約の場合は、契約期間の終了とともに確実に賃借人に退去してもらえます。契約期間満了の1年前から6か月前までに、賃借人に対して契約が終了する旨の通知をする義務はありますが「正当な事由」は必要ありません(万が一通知を怠ったり失念していた場合は、通知を行った日から6か月後の契約終了となります。その間、契約を終了することはできないので注意が必要です。)。
そのため、転勤などで一定期間だけ部屋を貸し出したいといった場合に、立ち退き料などの制約なく安心して部屋を貸すことが可能です。このように期間限定で部屋を貸したい賃貸人にとって、定期建物賃貸借契約は大きなメリットといえるでしょう。また、賃借人に問題がありトラブルに発展した場合でも、契約期間満了と共に契約は自動的に終了するため、揉めることなく退去してもらうことができます。
通常の賃貸借契約と違って更新がないため、更新料を収める必要がありません。通常は2年ごとに更新があり更新料が必要となるケースが多いのですが、定期建物賃貸借契約の場合、契約期間中は更新の手続きが発生しません。そのため手続きなどの煩雑な手間も省けますし、更新料も納める必要がなく賃借人にとっては大きなメリットとなります。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いについては、以下の表に記載します。
普通建物賃貸借契約 | 定期建物賃貸借契約 | |
---|---|---|
契約の目的 | 建物(事業用、居住用どちらも可) | 建物(事業用、居住用どちらも可) |
契約方法 | 書面・口頭どちらも可能 | 電子交付・書面による契約が可能※ |
契約期間 | 無(1年未満の場合、期間の定めのない契約となる) | 有(1年未満でも契約は有効) 契約期間の上限はない |
賃料増減額請求権 | 原則、請求する権利が認められる(減額の場合、特約による排除は無効になる) | 原則、請求する権利が認められる (増額・減額ともに特約による排除が有効になる) |
更新の有無 | 有(原則、更新する) | 無(期間満了により契約終了する) |
解約・中途解約 | 賃借人からの解約申し入れはいつでも可能。賃貸人からの場合、正当な事由が必要。 | 賃借人からの解約申し入れは原則不可。賃貸人からの場合、正当な事由が必要 |
再契約 | 特に定めなし(更新可能なため) | 特約により、定めることが可能 |
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これまで述べてきたように、定期建物賃貸借契約にはさまざまなルールが設定されています。契約の際にはそれらのルールを把握して、トラブルにならないよう気を付けましょう。改めて、注意すべき点について下記にまとめていきます。
定期建物賃貸借契約であることを書面で交付し、しっかりと説明するようにしましょう。期間満了になると自動的に契約は終了してしまうので、認識不足のまま契約が進むとトラブルの元になります。また、説明が行われないと普通建物賃貸借契約になってしまうので、注意が必要です。
普通建物賃貸借契約では、「賃料を減額しない」という特約は賃借人保護の観点から無効となります。
しかし定期建物賃貸借契約では、賃料の増減額において特約が有効となります。
特約が付けられていない場合は、賃料増減額請求権があるため増額・減額ともに請求することが可能です。
ただし、定期建物賃貸借契約では特約をつけることで、それらの請求権を排除することができます。
原則、定期建物賃貸借契約は中途解約ができません。残りの賃料を支払ったり、違約金が発生したりと非常に困難なことになる場合があるので、気を付けるようにしましょう。
以下のテンプレートを参考にしてください。
【参考】定期賃貸住宅標準契約書 – 国土交通省 (mlit.go.jp)
原則として、定期建物賃貸借契約では中途解約はできません。
定期建物賃貸借契約はそもそも期間を定めた賃貸借契約のため、中途解約を認めてしまうと「残存期間の賃料を受け取れない」など、賃貸人に不利な契約になってしまうからです。
しかし、以下の3つのケースに当てはまれば、例外として中途解約が認められる場合があります。
解約権留保特約をつけて契約をしていた場合、契約期間内であっても中途解約することが可能です。
事業用として契約を結ぶ場合に、話し合われることが多い条項になります。
残りの契約期間の賃料を支払うことによって、中途解約できる場合があります。賃貸人にとっても、「残りの賃料を受け取れない」というデメリットが解消されるので、双方で合意に至れば契約期間内であっても解約が可能となります。
契約時に解約権留保特約をつけていなくても、中途解約権を行使できる場合があります。
そのためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
・物件を居住目的で使用していること
・物件の床面積が200平方メートル未満であること
・やむを得ない事情が発生し、建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったこと
やむを得ない事情としては「転勤」「療養」「介護」などが挙げられますが、明確な定めはなく、双方の話し合いや裁判所の判断に委ねられます。「ほかに物件を購入したため」など、過去に認められないケースもありました。あくまで中途解約は例外です。万が一解約せざるを得ない事情が契約後に発生した場合は、これらのケースに当てはまるか確認することが必要です。
いかがだったでしょうか。
定期建物賃貸借契約とは期間の定められた賃貸借契約になり、さまざまな特徴やルールがあります。
それらをすべて把握して契約するのがむずかしい場合は、法律家や不動産仲介業者など、専門的な知識を持った方たちに相談し、適切な手続きを進めるように努めましょう。
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