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優越的地位とは?濫用にあたる行為を事例付きで解説!親事業者の義務や違反時の罰則についても紹介

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近年、優越的地位の濫用という言葉をよく耳にするようになりました。優越的地位の濫用とは、独占禁止法が関係する行為です。

ひと昔前であれば、大きな企業と取引する際に、多少無茶な要求をされることはよくありました。しかし、企業倫理が重視される現代、取引先に対して優越的地位にある企業が不当な要求をすれば、それはパワハラであり違法でもあるのです。

無茶な要求をされた際に、独占禁止法や下請法(下請代金支払遅延等防止法)に対する正しい知識があれば、どのように対応すべきか判断する助けになります。

目次

優越的地位の濫用の意味

優越的地位の濫用とは、取引先に対して、自社の立場を利用し、取引とは直接関係のない商品の購入を要請したり、従業員の派遣を要請したり、不当に不利益を与えることです。このような行為は、独占禁止法によって禁止されています。(独占禁止法第2条(6)、第3条)

第二条の二

(6) この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

引用元:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号) | 公正取引委員会

第三条

 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

引用元:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号) | 公正取引委員会

優越的地位の濫用にあたる行為は不公正な取引方法の1つとして、独占禁止法により禁止されています。優越的地位にある企業は、その競業企業に対し有利になります。また、行為を受けた事業者は、競争上不利になるため、公正な競争を阻害します。

優越的地位とは?

取引関係にあるA社とB社があるとします。B社にとってA社との取引がなくなると経営上大きな支障をきたす状態です。そのため、A社の要求が理不尽なものであっても受け入れざるを得ないような場合もあるでしょう。このような場合に、A社はB社に対して優越的地位にあるといえます。

また、銀行はお金を貸す機関であり、大きな力を持っています。中小企業からすると、融資が受けられなければ倒産する可能性もあります。企業の生死を握っている銀行は、優越的地位にあるといえます。

他にもフランチャイズチェーンの本社なども同じ原理で、加盟店に対して優越的地位にあります。優越的地位そのものが悪いわけではなく、優越的地位を濫用することが法律上禁止されています。

優越的地位の濫用にあたる行為の3つの事例

協賛金などの負担要請

優越的地位の濫用にあてはまるケースの1つめは協賛金などの負担要請です。たとえば、上司である総合スーパーの企画部長から、売上の良い商品の催事を行うように命じられました。ところが催事を行う予算がありません。そこで、企画部長から「取引先の納入業者に協賛金として、広告費を負担して貰えばよい」と言われました。

納入業者は、自社の商品の催事を行うわけではないため、協賛金を出す必要はありません。しかし、今後の取引を考えると出さないわけにはいかないと判断します。このようなケースで、協賛金を要求した総合スーパーは、優越的地位を濫用したといえます。

従業員などの派遣要請

2つめのケースは、従業員などの派遣要請です。ホームセンターの営業担当者は、新規店舗オープンのため、納入業者に対し「新規オープンの店に3名ほど手伝いをよこしてほしい」と要請します。

商品陳列や補充などの業務のため、納入業者は従業員を3名、それぞれ3日間派遣しました。この場合、従業員の派遣を要請したホームセンターは、優越的地位を濫用したことになります。

返品

3つめのケースは、返品です。衣料品販売のチェーン店では、シーズンオフになっても多くの商品が売れ残っています。衣料品メーカーの営業担当者を呼び出し、仕入れ担当者から「売れ残った商品は返品する」と伝えました。

販売店の仕入れ担当は、「返品できないなら、今後の取引は考えなければいけない」と高圧的な態度を取っています。衣料品メーカーは、しぶしぶ売れ残った商品を引き取ることになりました。この場合も、チェーン店は自己の優越的地位を濫用しています。

どの事例を見ても自分の会社の利益を優先するあまり、立場の弱い相手方に不利益な要求を行っています。このように従業員を派遣させたり、協賛金の負担を求めたりすることは、優越的地位の濫用となります。他にも支払いの遅延、受領拒否、買いたたきなどが優越的地位の濫用とされるケースです。

濫用と判断するのが難しい場合

なかには、優越的地位を濫用していると判断するのが難しいケースもあります。たとえば、商店を経営している個人事業主がコンビニのフランチャイズに加盟したとします。

店舗はコンビニに変わります。しかし、店主は「商品を仕入れてもどうせそんなに売れないだろう」と、商品の仕入れを抑制します。コンビニ本部は「倍仕入れるように」と要請し、強制的に仕入れさせました。これは優越的地位の濫用に見えます。

実際に仕入れた商品のうち25%は売れ残ったため、店主は損をしたともいえるでしょう。しかし、長期的に見れば、お客さんは常にたくさんの商品が並んでいる店と、棚が閑散としている店のどちらを選ぶでしょうか。結果は明らかに商品が並んでいる店です。

小売店にロスは付き物です。そのため、フランチャイズ本部は、ある程度強制的に「ロスを覚悟で仕入れなさい」と言います。長期的に見れば、結果的にこの店が繁盛するために必要なことを要請しているといえるでしょう。このようなケースが果たして優越的地位の濫用にあたるかは、判断が難しいところです。

下請法と優越的地位の濫用の関係

下請法は、下請代金支払遅延等防止法が正式名称であり、独占禁止法を補助する法令です。もともとは親事業者の下請けに対する対価未払いを防ぐために制定された法律となります。改正を経て親事業者が下請けを不当に扱う行為を禁止する法律になりました。

優越的地位の濫用とされる行為は、この下請法にも当然違反しています。下請法第4条では受領を拒むこと、支払いの拒否、対価の減額など、優越的地位の濫用にあたる行為を禁じています。

 (親事業者の遵守事項)
第四条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
  下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。
  下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。
  下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
  下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
  下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
  下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。
  親事業者が第一号若しくは第二号に掲げる行為をしている場合若しくは第三号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。
 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号を除く。)に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
  自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。
  下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
  自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。

引用元:e-Gov 法令検索|下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)

優越的地位の濫用は独占禁止法だけでなく下請法にも違反する行為です。また、違反すれば、公正取引員会の調査を受けます。

下請法による4つの親事業者の義務

下請法によれば、親事業者には下請けに対し4つの義務があります。1つめは書面交付義務です。三条書面をきちんと交付することが求められます。

親事業者と下請けの力関係上、下請けが不利益を被ることはよくありました。そのようなことを防ぐため、代金の支払期日や、下請け事業者が納入した商品を元請けが検査する期日などを決め、曖昧にすることを防いでいます。

2つめは支払期限を定める義務です。義務の3つめは書類の作成・保存義務です。そして最後の4つめは遅延利息の支払い義務です。下請けに対して支払いが遅れた場合は、必ず利息を払わなければなりません。

優越的地位の濫用をした場合の罰則は?

独占禁止法に違反した場合は、第89条により、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

第十一章 罰則

(私的独占、不当な取引制限、事業者団体による競争の実質的制限の罪)

第八十九条

 次の各号のいずれかに該当するものは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

一 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者

二 第八条第一号の規定に違反して一定の取引分野における競争を実質的に制限したもの

(2) 前項の未遂罪は、罰する。

引用元:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号) | 公正取引委員会

下請法違反の疑いがあれば、公正取引委員会や中小企業庁が調査に入ります。下請法に違反していると認められた場合は、下請代金支払遅延等防止法第10条により、50万円以下の罰金などの罰則を受けます。

  (罰則)
第十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。
  第三条第一項の規定による書面を交付しなかつたとき。
  第五条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。
第十一条 第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処する。
第十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

引用元:e-Gov 法令検索|下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)

下請法には、厳しい罰則があるため、違反行為を行わないように注意しましょう。公正取引委員会や中小企業庁の調査を拒否した場合も、罰金などの罰則を受けます。

もし、取引先から不当な要求をされたり、不利益を被る無茶な要求をされたりした場合は、公正取引委員会に苦情を申し立てることができます。また、同時に弁護士にも相談する方がよいでしょう。公正取引委員会に申し立てをする場合も、弁護士を通して申し立てできます。

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この記事を書いた人

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