自身で事業を営んでいたり、フリーランスとして活動していたりすると、確定申告の手続きが必要となります。
しかし、うっかり期日までに確定申告の手続きを忘れていたり、正しい額を納税していなかったりした場合には、追徴課税のペナルティを課されてしまいます。
そこで本記事では、追徴課税の概要や納税額の計算方法、注意点などについて詳しく解説します。
目次
追徴課税とは
追徴課税とは、本来納税すべき金額が正しく納付されなかった場合に未払い分の税金の支払いを課されることを指します。追徴課税にはいくつか種類があり、その内容次第では本来の納税額にプラスして税金を納めないといけません。
追徴課税の種類は、以下の通りです。
・過少申告加算税
・無申告加算税
・不納付加算税
・重加算税
・延滞税
・利子税
それぞれ詳しく解説します。
過少申告加算税
本来納めるべき税金が少なかったり、還付される金額が多かったりした場合には修正申告しなければいけません。
しかし、税務調査を受けるまでに修正申告を行うなど必要な対応をしなかった場合に課される追徴課税が過少申告加算税です。
過少申告加算税では、追加徴収の税額における10%分の金額を支払わないといけません。
ただし当初の申告税額と50万円のうちいずれか多い金額を超えていた場合、その部分には15%の過少申告加算税が課されます。
無申告加算税
確定申告は、毎年2月16日から3月15日 までに手続きしなければなりません。
しかし、期限までに確定申告しなかった場合に課される追徴課税が無申告加算税です。
無申告加算税は、納税額やどのタイミングで申告したかによって税率が異なります。
基本的には、納税すべき金額の50万円までの部分には15%、50万円を超えて300万円までの部分には20%、300万円を超える部分は30%をかけた金額が税率となります。
ただし、期限を過ぎた後でも税務調査が入る前に申告したケースでは、無申告加算税を5%に抑えられますので、忘れていた場合でも申告することをおすすめします。
また以下の2つの条件を満たしている場合には、無申告加算税の課税対象にはなりません。
・法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告を行っている
・期限後申告で必要な金額を法定期限内に納税しており、直近5年間に無申告加算税または重加算税を課されていない
早めに自主的に申告したり、税務調査が入る前に申告したりすれば無申告加算税を軽減できる可能性がありますので、申告が遅れてしまった場合でも早めに対応することをおすすめします。
不納付加算税
不納付加算税とは、源泉所得税を期限までに納付しなかった法人が対象となる追徴課税です。
本来納付すべき所得税に加えて10%が追徴課税されますが、税務署から指摘される前に納付した場合には5%に軽減されます。
ただし、以下の2つの条件を満たしている場合には、不納付加算税の課税対象にはなりません。
・納期する期限から1ヶ月以内に納付して過去1年間において期限後納付がなかった
・不納付加算税の金額が5,000円未満である
1日でも遅れると課税対象となりますので、源泉所得税の支払い期限には気をつけましょう。また延滞税も併せて課税されますので、要注意です。
重加算税
重加算税とは、申告内容を意図的に偽ったり事実を隠ぺいしたりするなどの不正事実が発覚した場合に課される追徴課税です。
具体的には二重帳簿を作っていたり、帳簿書類を隠ぺい・破棄したりしていた場合などが該当します。
重加算税に該当すると判断された場合、
過少申告加算税や不納付加算税を納付すべきケースだった場合にはそれらの税率に代わって35%の税率、無申告加算税を納付すべきケースだった場合には40%の税率を乗じた金額を納付しなければなりません。
延滞税
もし決められた期限内に各種税金を納付できなかった場合には、延滞税が課されます。原則として、法定納期限の翌日から納付の対象になりえます。
延滞税は延滞した日数分課されるので、期間が長引けばそれだけ余計に延滞税を支払わないといけません。
延滞税の税額は、(納税額×延滞税率×延滞した日数)÷365日という数式で算出されます。
延滞税の税率は、期限からどのくらいオーバーしたかによって変わってきます。
しかし、申告後にミスに気づいて再度申告を行っていた場合などには、一定期間を延滞税の滞納日数としてカウントしないという特例があります。
国税庁は、この特例を以下のように定めています。
『期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。』
出典:https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm
税率の詳細は、以下の通りです。
・納付期限の翌日から2ヶ月以内 7.3%(年率)
・(特例適用)納付期限の翌日から2ヶ月以内 2.4%(年率)
・納付期限の翌日から2ヶ月以降 14.8%(年率)
・(特例適用)納付期限の翌日から2ヶ月以内 8.7%(年率)
利子税
利子税とは、延納を申請した際に納める税金を指します。
国税の延納を申請して認められた場合には、年率で7.3%もしくは特例税率のうちいずれか低い方の税率が適用されます。
利子税は(納税額×利子税率×延納日数)÷365日で算出されます。
延納日数は延納の申請をして認められた日を起点として計算します。
所得税にかかる利子税の税率は、以下の通りです。
・納付期限の翌日から2ヶ月以内 7.3%(年率)
・(特例適用)納付期限の翌日から2ヶ月以内 0.9%(年率)
追徴課税が課された場合の対処法
もし何らかのトラブルによって追徴課税を求められた場合、早めに対応しなければなりません。具体的な対処法などを解説しますので、ぜひご覧ください。
早めの納付が基本
税務調査などで追徴課税を課された場合には、早めに納付しておきましょう。
一般的な税金では納付期限が設けられていますが、追徴課税には納付期限は設けられていません。
しかし、納付するまでの期間が長くなるほど課税額がどんどん大きくなってしまいます。
また納付しないでいると、税務署から督促や催告が来ます。それでも応じなかった場合には、差し押さえが執行される恐れも出てきます。
さらに銀行からの融資を受けている場合には、金融機関に対する税務調査が実施される可能性があります。
金融機関に迷惑をかけてしまうと信用を損なってしまうので、追徴課税が課された時点で早めに取引のある銀行に連絡することをおすすめします。
追徴課税は一括払い
追徴課税の支払い方法ですが、原則一括払いとなります。そのため、十分な資金が必要となる点に注意しましょう。
しかし、特例として分割払いが認められる可能性はありますので、一括払いが難しい場合には所轄の税務署に相談してみる方法もあります。
ただし、分割払いが認められたとしても、その分延滞税も加算されるので税負担が大きくなってしまう点に気をつけてください。
損金扱いにはならない
追徴課税は租税公課として計上できないので、損金として扱えません。
なぜなら、追徴課税は申告漏れや無申告に対するペナルティという性質があるからです。
ただし、企業会計では追徴課税を費用として計上することはできます。
例えば100万円の過少申告加算税を課された場合の仕分け処理は、以下のようになります。
まず借方として、「過少申告加算税」という勘定科目で処理します。また貸方はもし現金で支払った場合には、「現金」とします。そして金額は借方と貸方いずれも1,000,000円と記入しましょう。
不服申し立てができる
追徴課税を課せられたが、その内容に納得がいかない場合には不服申し立て手続きを行うことができます。この場合には、不足税額の修正申告は不要です。
修正申告を行わないときには、税務署が更正処分を行ったうえで納税通知書を送付します。このタイミングで不服申し立ての手続きを進めてください。
その後追徴課税が適切かどうか、再審査が実施されます。もし不服申し立てが受け入れられた場合には、追徴課税は適用されません。
追徴課税の対象期間
追徴課税が課される可能性がある期間は、おおむね3年間です。
なぜなら、税務調査は原則直近3期分の税務申告の内容について調べるからです。
しかし、もし過去に追徴課税を課された場合には5期分、重加算税を課されたことのある場合には7期分の税務申告が調査対象になります。
そのため、申告漏れや無申告があった場合には、できるだけ速やかに修正申告を行いましょう。
追徴課税が支払えない場合にはどうすればいい?
税務調査の結果、申告漏れや無申告が発覚した場合には何らかの追徴課税を課される可能性が高いです。
追徴課税の金額はその内容によりますが、数百万円や数千万円単位で課される場合もあります。
このようなケースへの対処法について詳しく解説します。
換価の猶予を利用する
換価の猶予とは、財産の売却や財産の差し押さえを猶予してもらえる制度を指します。また換価の猶予が適用されれば、延滞税の全部もしくは一部が免除されます。
もし追徴課税の納税をすると事業の継続や生活の維持が困難になる可能性があると判断されれば、認められます。換価の猶予が認められれば、1年間の追徴課税の分納が可能になります。
納税の猶予
納税の猶予とは、追徴課税の納税をいったん待ってもらえる制度を指します。納税の猶予が適用されている期間中は、換価の猶予と同様に延滞税の全部もしくは一部が免除されます。
納税の猶予が適用されれば最長1年間の分納が可能であり、正当な理由があれば最大2年間までの延長にも対応してもらえます。
自然災害や病気、けが、事業を廃業したなどの著しい経済的損失が認められれば適用されます。
自己破産しても免除されない
「追徴課税が支払えないのなら自己破産すればいい」と思っている方もいるかもしれませんが、これは誤りです。
自己破産すれば、ローンなどの債務の支払い義務はなくなりますが、非免責債権と言って支払い義務が継続するものもあります。
追徴課税などの各種税金は非面積債権に該当しますので、自己破産しても追徴課税の納税義務が免除されるわけではありませんので注意しましょう。
ミスが見つかった場合には、早めに修正申告しましょう
税務調査で申告漏れや無申告が発生した場合、追徴課税を課される可能性があります。
従来納めるべき税金よりも多額の納税額になってしまうので、正しく確定申告の手続きを行いましょう。
もし税務申告で何らかのミスが見つかった場合には、税務調査で指摘を受ける前に速やかに修正申告をしておくことをおすすめします。