事業者への粘り強い説明の成果もあり
入札契約(工事請負契約)のおよそ8割を電子化
- 愛知県豊田市役所
愛知県北部に位置し、人口およそ42万人を有する豊田市。トヨタ自動車の企業城下町として発展し、多くの中小企業が集まっています。そんな同市で電子契約を導入する議論がはじまったのが2021年のこと。実証実験を経て、2023年4月から運用を開始し、工事請負契約の8割の電子化に成功していると言います。電子での高い契約率を誇る理由について聞きました。
取材協力愛知県豊田市役所 総務部 契約課 主査 山田哲広さま
業種 | 契約類型 | ご利用プラン |
---|---|---|
市役所 | 工事請負契約、委託契約、物品購入契約、物品賃貸借契約、物品売払契約など | 契約印&実印プラン |
記事の要約
- 豊田市のDX戦略に基づいてデジタル化できる業務の洗い出し
- 工事請負契約に限定してスタートし、すでに契約の8割を電子化
- 電子申請も整備し、来庁する事業者が10分の1程度にまで減少
- 電子化するメリットを契約課から事業者に粘り強く説明
―豊田市で電子契約サービスを導入するに至った経緯を教えてください。
2021年1月の地方自治法施行規則の改正によって、民間事業者の立ち会い型電子契約が利用できるようになったことが導入を検討することになったきっかけの一つです。
また、同時期に豊田市ではデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していくための戦略・具体的な施策をまとめた「豊田市デジタル強靱化戦略」を策定しました。この戦略に基づいてデジタル化できる業務の洗い出しを行うなかで、契約事務については電子契約サービスを導入することで、早期にDX化が実現できるため、導入を検討していくことになりました。
―電子契約サービスを導入するにあたって、懸念点や不安はありましたか?
電子契約を導入することによって、どの程度、事務フローを見直す必要性があるのか、予想がつかず、不安に感じていました。
また、もし契約締結が予定よりも遅れてしまった場合の対応法についても、どうすれば良いのかわからず、検討課題になっていました。これらは、すでに電子契約を導入している他の自治体への聞き取りや、GMOサインからの提案によって解決することができました。
これ以外にも事業者への聞き取り調査で見られた、電子契約の利用に対する戸惑いの声も、運用がはじまるまで不安に感じていた点です。
―電子契約の事業者はどのように選定されたのですか?
まずは他の自治体での導入事例を調査することで、電子契約の基本知識や各社がどのようなサービスを提供しているのか、把握していきました。同時に豊田市としてどの業務・工程を電子化したいのか、明確にすることができたので、スピーディな導入に役立ちました。その後、2022年5月と6月に実証実験を行い、電子契約サービスの使い勝手や操作性を総合的に検証する機会を設けました。
実証実験では、前年度に契約をした事業者さまに、ご協力いただき、契約の流れを確認しながら、どれくらい工数が削減できるかについても、検証しました。参加していただいた事業者さまからは「こんな簡単に契約締結できるの?」と驚きの声があがったのを覚えています。その手軽さがむしろ不安だと感じる人もいたようですが、印紙代がいらないという点については概ね好評でした。
そして最終的には、一般競争入札によってGMOサインが落札したことで、採用となりました。
―電子契約を導入するにあたって、規則を変更した点はありますか?
電子契約の場合、署名を行なった日付がタイムスタンプとして、記録されます。その日付と契約日が異なるケースも考えられ、契約が遡及して効力を発生することを明示する必要がありました。そのため弁護士にも確認し、契約書に遡って法的拘束力が発生することを示す一文を追加する形で、遡及事項の規則改正を行いました。
―現在、どのような契約で電子印鑑GMOサインを利用されていますか?
電子契約の利用はまず工事請負契約に限定してはじめました。4月1日から8月4日落札決定時点で契約締結件数が88件でしたが、そのうちの約8割にあたる70件ほどが電子契約での締結になっています。
委託契約や物品購入契約などの工事請負契約以外の契約に関しては9月1日から電子契約の対象にするという2段階のスタートにしたのは、4月前半に契約が集中する事情がありました。その時期に新しい事務が追加され、紙の契約書と電子契約が混在すると、作業負担の増加によるミスも懸念されました。そこで工事請負契約の締結が落ち着いてから、その他の契約については電子化するという方針にしました。
また、電子印鑑GMOサインはLGWAN環境下で利用しています。
―電子印鑑GMOサインを導入したことで、業務はどのように改善しましたか?
電子契約では従来、契約書作成事務と発注依頼をする課で設計書などの書類を印刷していました。これが不要になったことで、印刷に要する時間やコストを削減することができました。ちなみに現在までに1万6000枚あまりの用紙が削減されています。
また契約締結で必要となる書類の提出も、デジタル(電子データ)で申請できる形になっています。そのため電子契約される受注事業者の方は、来庁せず手続きが可能です。そのため電子契約の導入以降、来庁する事業者が10分の1程度にまで減少している実感があります。
―電子契約を選択する受注事業者が8割ということですが、要因は何だと思いますか?
受注事業者さんに対して契約課から、電子化するメリットを丁寧かつ、何度もご説明しているからではないかと思っています。豊田市は愛知県のなかで最も広い市です。そのため、遠方の事業者になると、片道1時間半くらいかけて来庁する必要があります。電子契約ならその時間が不要になるため、「ぜひ別の業務に時間を当ててください」とお話しすることもあります。
そのほか印紙税が不要になる点や電子契約の証明書によって法的効力が担保されている点をしっかりお伝えすることで、ご理解いただいていると思います。運用がはじまって間もない4月〜6月はおよそ2割の受注事業者さんが紙での契約を選択されましたが、7月以降に紙で契約された件数は1件のみです。これも豊田市の事業者に電子契約が浸透してきている証かもしれません。
―電子印鑑GMOサインの利用に関する、今後の目標はありますか?
契約締結と、その後の提出書類をデジタル化することができましたが、それもまだ一部に過ぎません。今後は、内部業務の発注依頼から支払いまでの一連の業務がすべてデジタル化して、事業者の皆さまはもちろん、市の業務の両面で更なる負担軽減を図っていきたいと思っています。
―お忙しいところ、ご協力ありがとうございました。
- 感染症対策を実施の上、インタビューを行っております。
- 掲載している内容、所属やお役職は取材当時のものです。
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