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IT関連業界や製造業などでは元請けと下請けと呼ばれる関係性が存在します。
下請業者に仕事を請け負わせることで、元請業者は規模が大きな仕事を遂行できます。元請業者はその優越的な地位を振りかざし、下請業者が不利になるような契約を締結する場合があります。しかし、そのような理不尽な行為は許されるものではありません。
当記事では下請法(下請代金支払遅延等防止法)について、概要などをまとめています。仕事を発注する元請業者はもちろん、下請けとして仕事を受けている人も必見です。
下請法は、下請代金支払遅延等防止法が正式な名称です。下請法は、一つの仕事の遂行のために、個人事業主や中小企業といった資本力が小さい事業者に対して、大きい資本の企業が発注を行う際に適用される法律です。
独占禁止法を補完するべく、不公正な取引方法の規制の特別法と位置づけられ、昭和31年に制定されました。
下請取引に関してはどうしても、発注側の元請事業者と仕事を請け負う下請事業者の間で力関係が生まれてしまいます。
下請法は、元請けが優越的な立場を利用して不当な取引を行うことを禁じ、下請業者との間で公正な取引を行うための法律として定められました。
第12章 下請法に関する業務
第一 概要
下請法は,経済的に優越した地位にある親事業者の下請代金支払遅延等の濫用行為を迅速かつ効果的に規制することにより,下請取引の公正化を図るとともに下請事業者の利益を保護する目的で,独占禁止法の不公正な取引方法の規制の特別法として昭和31年に制定された。
下請法では,親事業者が下請事業者に物品の製造又は修理を委託する場合,親事業者に対し下請事業者への発注書面の交付(第3条)並びに下請取引に関する書類の作成及びその2年間の保存(第5条)を義務付けているほか,親事業者が,(1)委託した給付の受領拒否(第4条第1項第1号),(2)下請代金の支払遅延(同項第2号),(3)下請代金の減額(同項第3号),(4)返品(同項第4号),(5)買いたたき(同項第5号),(6)物品等の購入強制(同項第6号),(7)有償支給原材料等の対価の早期決済(同条第2項第1号),(8)割引困難な手形の交付(同項第2号)などの行為を行った場合には,当委員会は,その親事業者に対し,当該行為を取りやめ,下請夢業者が被った不利益の原状回復措置等を講じるよう勧告する旨を定めている。
中小企業に関する施策の対象とする中小企業者の範囲を拡大すること等を内容とする「中小企業基本法等の一部を改正する法律」は,平成11年12月3日に公布された。同法において下請法の一部が改正され,親事業者と下請事業者を画する資本の額等の基準のうち,「1億円」を「3億円」に改めるものとされた(改正下請法の施行日は,平成12年3月3日。)(第1章 第3参照)。https://www.jftc.go.jp/info/nenpou/h11/11kakuron00002-12.html
下請法の対象となる取引は4つに区分されます。多くの取引は、以下4つに当てはめることが可能です。
発注内容に応じ、下請業者が製造や加工を行う取引を指します。元請業者が求める品物の規格や品質に従い、忠実に納品する必要があります。一般的には半製品や部品、付属品などの製造加工等が対象となります。
自社の販売するプライベートブランドを他社に製造依頼するケースなどが製造委託の一例として挙げられます。
物品など の修理に関するすべて、もしくは一部の業務に関して、下請業者に委託することを指します。設備を持った業者に修理を委託する、技術力に長けた企業に委託するなどのシチュエーションが考えられます。
カーディーラーが請け負った自動車修理に関して、外部の修理業者に委託することは、修理委託に該当します。しかし、修理部門がある子会社へ修理委託することに関しては、下請法の適用外となります。
顧客へのサービス全般の提供に関して適用されます。これらのすべて、もしくは一部の業務を下請業者に委託することを指しています。荷物の運送や倉庫の保管業務のほか、さまざまなメンテナンス業務などがこれらに該当します。
また、ITなどの情報処理も当てはまります。
注意したいのが、建設業者が行う建設工事に関しては含まれないという点です。建設工事における下請けに関しては建設業法で定められており、下請法ではなく建設業法が適用されます。この点は注意すべきでしょう。
建設業を営む者が、業として請け負った「建設工事」を、他の建設業を営む者に請け負わせる場合には、下請法の適用は無いとされています。
なお、この「建設工事」を委託する場合には、別の法律である「建設業法」が適用されます。一方、「建設工事」ではないその他の取引(詳しくは後述します。)については、たとえ建設業を営む者が他の建設業を営む者に委託をしたとしても、建設業法の適用はありません。
別途下請法の適用の対象となるかどうか、資本金要件や取引内容などを判断する必要があります。したがって、「建設業だから下請法の適用がない/ある」といった判断はできず、その取引の中身によって変わってくるということになります。
引用元:https://www.saitama-bengoshi.com/oyakudachi/20221226-1/
詳しくはこちら
メディアなどで求められる情報成果物のすべて、または一部の作成に関して、下請業者に委託することを指します。コンピュータのプログラム開発やデザイン、コンテンツ制作などが情報成果物作成委託に該当します。建設工事などで求められる設計や図面、構造計算書等の作成も下請法が適用されます。
元請け(親事業者)と下請の関係は下請法のなかで定義されています。
この定義は、下請法第2条第1項~第8項で明文化されています。下請法が適用される関係性は資本金なども関与するため、下請事業者は親事業者となる企業の資本金などをあらかじめ確認する必要があります。
元請事業者からの発注を受けて、修理や物品製造の委託を行う場合や、政令で定める情報成果物作成や役務提供の委託を行う場合は、資本金に応じて2つに区分されます。
元請事業者の資本金が3億円を超える場合、下請法の適用となる下請事業者の資本金は、個人事業主も含む資本金3億円以下の事業者となります。
元請事業者の資本金が1千万円を超え、3億円以下の場合、個人事業主も含む資本金1千万円以下の下請事業者が適用となります。
政令の定めに該当しない情報成果物作成や役務提供の委託を行う場合にも、資本金に応じて2つに区分されます。
資本金が5千万円を超える事業者が元請となる場合は、個人事業主などを含む資本金5千万円以下の下請事業者が対象となります。
資本金が1千万円を超え5千万円以下の元請事業者の場合は、個人事業主などを含む資本金1千万円以下の事業者が対象となります。
(第2条第1項~第8項)
下請法の対象となる取引は事業者の資本金規模と取引の内容で定義(1)物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
(2)情報成果物作成・役務提供委託を行う場合((1)の情報成果物・役務提供委託を除く。)
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/gaiyo.html
下請業者の権利を守るために、元請けである発注者側にはいくつかの義務が課せられています。
下請取引の公正化及び下請事業者の利益保護のため,親事業者には次の4つの義務が課されています。
義務 概要 書面の交付義務 発注の際は,直ちに3条書面を交付すること。 支払期日を定める義務 下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。 書類の作成・保存義務 下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。 遅延利息の支払義務 支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。 https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/oyagimu.html
委託を行い納品された対価として、発注側は支払いを行う必要があります。納品された品物の検査の有無に関係なく、納品物受領日から起算して60日以内のできるだけ早い期日内で、代金の支払期日を定める必要があります。
もし支払期日の取り決めがなかった場合には、下請業者は納品物の受領日を支払期日と見なすことが可能です。しかし、元請け・下請けそれぞれの企業に資金繰りなどの兼ね合いもあるため、できる限り支払期日を定めておくことが望ましいとされています。
元請側が支払期日までに代金を支払えなかった場合には、遅延利息(遅延損害金)を支払う義務も生じます。国税の延滞料率に準じ、利率は年利14.6%で計算されます。
利息の計算方法は、納品物を受領した日から60日が経過した日を1日目とし、実際に納品物の代金が支払われた日までの日数に応じて計算します。
5.【14.6%】とは?
遅延損害金の約定利率は、実務上、「14.6%」とすること多いですが、「14.6%」が多い根拠・理由ですが、ひとつには、国税通則法に定められた国税の延滞料率が年14.6%であることに準じるといった説明が多いようです 。
また、そもそもの生い立ちとしては、日歩4銭(100円に対して1日あたり4銭(0.04円)=年14.6%)といったことが言われております。
実際、他の法令、たとえば、消費者契約法では、消費者契約(≒事業者と消費者との契約)では、「消費者の金銭支払の遅延損害金は、14.6%を超えることは不可(無効)」とされておりますが、その説明として、「世間で使用されている契約書でかなりのものが年14.6%(又は14.5%)とされており、民事上の契約においては、遅延損害金の限度としてこの基準が一種の慣習として定着し、一般的に許容される限度として受け入れられている」(立法担当者)といった説明がされております。
取引上のトラブルを防ぐために、下請業務を依頼する場合には、書面での内容提示が義務付けられています。
注文書や発注書などが該当するでしょう。
書式に関しては、3条書面と呼ばれる下請法第3条で定められている内容を網羅していることが基本です。
公正取引委員会では汎用型の3条書面の作成例を提示しているので、参考にするとよいでしょう。
ただし、書式を契約書にすると印紙税法上の課税文書に該当する可能性があり、印紙税の納付が必要となるケースもあります。そのため注文書や発注書といった形での書面発行が一般的です。
元請業者は、下請業者に対して給付の内容や下請代金などを記載した書類を作成し、保存する義務があります。
これらは下請法第5条に明記されている内容で、一般的に5条書面と呼ばれる書類です。作成した書類は、2年間の保存義務が課せられます。
内容として、双方の事業者名や委託を行った日、委託の内容やその納期や期間などが含まれています。また、サービスなどの受領場所や支払期日、支払いサイト(手形などの支払期日)なども詳細に記載する必要があります。
先に記した3条書面や5条書面に関して、とくに規定フォーマットはありません。書面の記載事項において、法律で定めた内容をすべて網羅していれば問題ありません。インターネット上では、テンプレートなどを提供しているサイトもあるので応用するとよいでしょう。
また、電子署名も可能ですので、電子印鑑GMOサインを利用した書面送付などを利用すれば、ペーパーレス化や電子保存にも一役買います。
下請法において、発注者側に対する11項目の禁止事項が定められています。
その11項目の禁止事項をわかりやすく記載します。
1.下請業者の責任以外の理由で納品物の受領を拒むこと。
2.下請代金について、支払期日を経過しても支払わないこと。
3.下請業者に非がないにも関わらず、下請代金を減額すること。
4.下請業者に非がないにも関わらず、納品された物品を返品すること。
5.下請業者に支払う対価よりも著しく低い代金を決めること。
6.納品物の向上や品質を保つため以外の理由で、元請業者が指定する物品を強制的に購入させること。また、サービスの提供のために強制して利用させること。
7.元請業者がここまでに掲げた禁止事項を行っていることを下請業者が公取委や中小企業庁などに知らせたことを理由に、取引上不利益な扱いを当該業者に行うこと。
8.元請が役務の提供に必要な品物を下請業者に元請業者自身から購入させた場合、下請業者に非がないにもかかわらず支払額を相殺することや原材料などの一部を支払わせること。
9.下請代金を支払う際に、金融機関による手形割引が難しいと認められる約束手形を交付すること。
10.元請業者の利益のために、金銭やサービスなど下請業者に経済上の利益を提供させること。
11.下請業者に非がないにもかかわらず、下請業者から納品を受けた後に再納品などを命じること。
下請法第4条では、元請けによる買いたたきや理不尽な理由による作業のやり直しなどを禁じています。
また、下請業者が元請から受けた不当行為を監督省庁へ知らせたことを理由とする報復も禁止されています。
このほか、誤発注による返品なども下請法では禁じています。たとえ故意ではなかったとしても、返品行為は禁止行為に当たります。
下請法に違反した元請業者には勧告や指導、罰金といった罰則が科せられます。
罰則について、下請法第10条~第12条に記されています。
罰則が適用されるのは、元請業者の代表者やその代理人、使用人および従業者です。直接取引に関わった社員だけでなく、その会社の代表者などに罰則が科される可能性が出てきます。ケース・バイ・ケースですが、法人全体に対して下請法違反の罰則が科されることもあるため、注意すべき事柄であることは間違いありません。
3条書面の発行を行わなかった場合や5条書面の作成を行わなかった場合、またそれらの書類を保存しなかった場合などは、50万円以下の罰金が科されます。紙媒体での発行保存はもちろんのこと、電磁的記録の作成を怠った場合も同様ですので、注意が必要です。
また下請法9条では、違反が疑われる取引について立入検査を行う可能性があることを示唆しています。虚偽の報告や検査を拒んだ事実が発覚した場合も同様に、50万円以下の罰金が科されます。これは下請業者への立入検査に関しても同様です。
公正取引委員会では、下請法に違反した場合について、買いたたきの減額分や遅延利息の支払いなどの原状回復を求めます。また、再発防止の措置を実施することを盛り込んだ勧告を行います。勧告に至らない事案なら、元請業者に改善を求める指導だけで終了するケースも見られます。
改善や是正を求める行政指導が大半ですが、悪質な場合は、勧告などに踏み切ります。勧告を行った場合は、会社名や違反行為などの公表もあわせて行います。
下請法の勧告に関しては、公正取引委員会の下請法関連のページで件名や概要、違反法条などともに掲載されています。同時に報道発表も行われることも念頭に置きましょう。
公表された勧告の内容は、下請法違反のケースとして蓄積されていきます。自社が違反行為を行っていないか常にチェックするようにしましょう。また、どういった内容で過去に違反と見なされたのか照らし合わせながら、よりよい取引ができるように工夫を重ねて行くのも一案です。
下請法は、下請事業者を守るべき大切な法律です。
また、下請法の遵守は、社名公表などによる企業イメージ低下から、親事業者を守ることにもつながります。
「法律を知らなかった」 では済まされないため、営業取引を行う担当者などを交えて、下請法に関する学びを深めることをおすすめします。
政府は契約の電子化を推進しており、書類の作成や保管などは、電磁的媒体によるペーパーレス化が主流となっています。
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