派遣社員として働くことを考えた際、最初に行うべきことは派遣会社の選択です。多様な業種を扱う派遣会社もあれば、特定の業種に特化した派遣会社も存在します。そのため、自分のやりたい仕事を実現できる派遣会社を選ぶのが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、派遣会社とは何か、その概要や種類、選び方について詳しく解説します。とくに初めて派遣社員として働く方にとって、自分に合った派遣会社を選ぶための参考になることを目指しています。ぜひご覧ください。

派遣会社とは

派遣会社とは、派遣の求人を中心に扱う企業であり、派遣で働きたい人と派遣社員を求める企業との仲介を主な役割としています。

派遣を依頼する企業は、直接自社で雇用する場合に比べて派遣会社に支払う手数料が発生しますが、その分、自社に適した人材を見つける手間を軽減できます。

また、派遣先を探す人にとっても、派遣会社は客観的な視点から自分に合った仕事を見つけ出し、紹介してくれるため、独自に仕事を探すよりも自分に適した職に就ける可能性が高まります。

派遣会社の種類

派遣会社は大きく4種類に分けられます。自身が派遣会社を選ぶ際には、それぞれの特徴をしっかりと把握しておくことが重要です。

大手派遣会社

大手派遣会社は、テレビやインターネットでよく見かける企業で、求人数が多く、研修制度や福利厚生が充実しているのが特徴です。全国に支店を持つケースが多く、都市部の主要な駅にオフィスを構えているため、登録も気軽に行えます。

ただし、登録者が多いため、自分が希望する仕事に人気が集中しやすいというデメリットもあります。

資本系派遣会社

資本系派遣会社は、大手有名商社やメーカーが出資して設立された派遣会社です。出資元企業のグループ会社への派遣が中心となるため、そのグループ会社で働きたい場合は、大手派遣会社よりも資本系派遣会社の方が採用される可能性が高まります。

また、比較的長期の契約が多く、派遣でありながら腰を据えて働きたい人に向いているでしょう。ただし、大手企業が明確な目的を持って出資しているため、即戦力が求められるケースが多く、他の派遣会社以上に資格やスキルが重視される傾向があります。

独立系派遣会社

独立系派遣会社は、自社の資金で運営される派遣会社です。大手のように全国展開しているわけではなく、資本系のように大手企業が資本を出しているわけでもありません。しかし、自社資本のため、縛りが少なく多様な業種の求人が存在します。歴史のある独立系派遣会社であれば、大手にも劣らない求人数を誇る場合もあります。

ただし、業種や職種をあえて絞っていることもあるため、事前にしっかりと確認しておくことが必要です。

職能特化型派遣会社

職能特化型派遣会社は、販売、営業、事務、エンジニア、医療など特定の分野に特化した派遣会社です。特定分野に対する経験やスキルを活かして働きたい人に向いています。特定分野での高いスキルを持つ即戦力が求められるケースが多いため、うまくマッチすれば高報酬も期待できるでしょう。

ただし、特定の業種に限定されるため、他の派遣会社に比べて求人数が少ないこともあります。また、即戦力が求められるため、未経験の方には向いていない派遣会社といえます。

派遣会社を選ぶ際のポイント

大手派遣会社Adeccoが発表した「派遣会社を選ぶ際にチェックするポイントアンケート」の上位項目を中心に、派遣会社を選ぶ際のポイントを解説します。

参考：Adecco「派遣会社の選び方と自分に合った会社の見極め方を徹底解説」

自分の希望に合う仕事がある

調査でもっとも多かった回答は「自分の希望に合う仕事がある」でした。やりたい仕事が明確な場合、求人数が少なくても、自分の希望に合った仕事があるかどうかを重視する方が多いようです。やりたい仕事がある場合は、資本系派遣会社や職能特化型派遣会社から探すと見つかる可能性が高まります。それでも見つからない場合は、大手や独立系派遣会社で探してみましょう。

求人数が多い

求人数の多さも派遣会社を選ぶ上で重要なポイントです。とくに、派遣社員として働きたいが明確にやりたい仕事がない場合、求人数の多い派遣会社の方が自分に適した仕事を見つけやすくなります。求人数を重視する場合は、大手派遣会社がおすすめです。

また、自分の住む地域に独立系派遣会社があれば、あわせてチェックすることで、より自分に向いた仕事を見つけるチャンスが広がります。

未経験でも働ける仕事が多い

派遣社員として新しいことにチャレンジしたい、将来的に正社員として働くために経験を積みたい場合、未経験でも働ける仕事の求人が多い派遣会社が良いでしょう。資本系派遣会社や職能特化型派遣会社は経験者や高いスキルが求められる仕事が多いため、大手派遣会社や独立系派遣会社で探すことをおすすめします。

フォロー体制が充実している

派遣社員は派遣先の会社ではなく、派遣会社との雇用契約です。そのため、派遣先が決まるまでの間や派遣先で働いている間も、基本的なフォローは派遣会社の担当者が行います。何か困ったことがあった際や契約更新の際に、すぐに連絡が取れ、迅速な対応をしてもらえるかどうかは、快適に働く上で重要なポイントです。フォロー体制の良し悪しについては、口コミや評判をチェックするか、実際に問い合わせてみることをおすすめします。

福利厚生が充実している

福利厚生には2種類あります。まず、健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険など法律で定められているものを法定福利厚生と呼びます。次に、住宅手当や自己啓発、資格取得支援、慶弔・災害に関する制度など、会社独自の福利厚生が法定外福利厚生です。

法定福利厚生は法律で定められているため当然ですが、とくに法定外福利厚生をチェックすることが重要です。一般的に大手派遣会社の方が多様な福利厚生を設けていますが、他の種類の派遣会社を探す場合も、事前にどのような福利厚生があるかを確認しておきましょう。

仕事紹介のスピードが早い

派遣会社を利用するメリットの一つは、自分で働き先を見つけるのにかかる時間や手間を軽減できる点です。そのため、いつまで待っても仕事を紹介してくれない派遣会社では登録する意味がありません。迅速に仕事を紹介してもらうには、自身の経験やスキルも関係しますが、仕事紹介のスピードが遅い派遣会社は避けた方が良いでしょう。

未経験の仕事を希望する場合は、大手や独立系、専門的なスキルがある場合は資本系や職能特化型の中で、できるだけ求人数の多い派遣会社を選ぶことをおすすめします。

自分の住まいの近くに拠点がある

自分の住まいの近くに派遣会社の拠点があるかどうかも選択肢の一つです。派遣先が決まる前に面接で担当者に会う機会もあるため、自宅から遠いと手間がかかり、交通費の負担も大きくなります。

なお、引っ越しの可能性がある場合は全国展開している大手派遣会社がおすすめです。以前の居住地にあった拠点からの情報が引き継がれるため、新たに派遣会社を探す必要がなくなります。

知名度が高い

知名度が高いということは、多くの人が利用している、大手企業の求人が多いなどの可能性があり、信頼して働けることの証明でもあります。もちろん、知名度だけが高く評判があまり良くないケースもありますが、基本的には知名度で選ぶのは間違いではありません。

知名度を見るポイントとしては、インターネット検索で上位に出る派遣会社をチェックし、その際に自分が住む地域名を入れると良いでしょう。大手だけでなく地元の独立系派遣会社も表示されるため、幅広くチェックが可能です。

口コミやランキングサイトでの評価が高い

口コミやランキングサイトでの評価が高いかどうかも派遣会社を選ぶ上で欠かせないポイントです。実際に登録した方の書き込みをチェックして、選択の参考にしましょう。ただし、良い口コミしかない、あるいは悪い評判しかない派遣会社には注意が必要です。極端な評価しかない派遣会社は何かしら問題がある可能性があるため、口コミやランキングサイトの評価は参考程度に留めておくのが良いでしょう。

大手企業との取引がある

大手企業と取引があるということは、信頼性の高い派遣会社の証明となります。その大手企業の中に自分が働きたい企業がある場合は、種類に関わらず第一候補として問い合わせてみることをおすすめします。

また、未経験の仕事を希望する場合も、大手企業との取引がある派遣会社はおすすめです。資本系や職能特化型は別として、大手や独立系であれば、大手企業と取引がある派遣会社は求人数も多い可能性が高く、未経験求人がある確率も高まります。

初めて派遣社員になる際の注意点

大手有名企業で働ける可能性が高く、サポートを受けながら働けるなど、派遣会社には多くのメリットがあります。しかし、とくに初めて派遣社員になる方は、いくつか注意しておくべき点もあります。ここでは、その主な注意点を見ていきましょう。

3年以上は同じ場所で働けない

労働者派遣法（労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律）第40条2項の5の2により、派遣社員は同じ職場で働ける期間の上限が3年と定められています。

参考：労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov法令検索法律

もし3年を超えて同じ派遣先で働く場合は、別の課に移動するか、無期雇用派遣になる必要があります。派遣先の判断が大きいため、契約が3年に近づいてきたら、派遣会社の担当者と相談し、自分の希望を明確にすることが重要です。

基本的に派遣先で部署や課を移動することはない

前項で述べたように、3年の契約期間を超えて同じ派遣先で働く方法の一つは課の移動ですが、これは契約期間終了後の話です。契約期間中に部署や課を移動することは基本的にありません。

そのため、派遣先で他の部署や課で働きたいと思っても、契約外の業務に代わることはできません。もし他にやりたい業務がある場合は、契約期間満了後に派遣会社の担当者に相談し、別の課への移動や別の派遣先を紹介してもらう必要があります。

どうしても1つに絞れない場合は複数の派遣会社に登録する方法もあり

複数の派遣会社に登録することは可能です。そのため、どうしても1つに絞れない場合は、複数の派遣会社に登録するのも一つの方法です。

たとえば、特定のスキルを活かせる職能特化型派遣会社に登録しつつ、求人数の多い大手派遣会社にも登録することができます。また、大手と独立系派遣会社の両方に登録し、より自分に合った仕事を紹介してくれる派遣会社に絞るという方法も問題ありません。

ただし、複数の派遣会社から紹介された仕事をかけ持つ場合は、後々トラブルにならないように、必ず両方の派遣会社に話を通しておくことが重要です。

担当者としっかり面談し、自分に合った派遣会社を選ぼう

派遣会社は、派遣で働きたい人と派遣社員を求める企業をつなぐ役割を果たします。派遣社員にとっては、ライフスタイルに合った流動的な働き方ができるメリットがあり、一方で派遣先企業には、採用コストを抑えながら必要な人材を確保できる利点があります。

なお、一つの派遣会社に登録したからといって、その会社だけの専属になるわけではありません。他の派遣会社と並行して登録することも可能です。もし仕事を紹介してもらえなかったり、担当者の対応が悪かったりした場合は、迅速に別の派遣会社に移ることをおすすめします。

もちろん、複数の派遣会社を探すのは手間がかかり、仕事に就くまでの時間が長くなることも考えられます。できれば最初の派遣会社で良い結果を得たいものです。そのためにも、本記事で紹介する派遣会社選びのポイントを参考にして、自分に合った派遣会社を見つけてください。

また、可能であれば担当者としっかり話をしましょう。周囲の評判や口コミだけに頼ると、後悔することがあります。いくつかの候補に絞り込んだら、最終的には自分の目と耳で確認することがなにより重要です。